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3話・スキル

 

 ダンジョンを出て、地下室の入り口を閉ざす。

 時刻は既に夕方だった。

 四、五時間はダンジョンに潜っていた事になる。


 少し長く居すぎたな、次からは気をつけよう。

 長時間の活動は思考を鈍らせる。

 そして思考の鈍りは戦闘の動きを悪くするのだ。


 ダンジョンの入り口については––––

 まあ、他人に知られる事も無いだろう。

 とりあえず疲れたし、休むか。


 玄関から自宅に入り、そのまま風呂場へ直行。

 シャワーを浴びながら、今後について思案した。

 まずは何よりも情報収集。

 俺と同じようにダンジョンへ潜ってる奴もいる筈。


 ネットでどれだけ集められるか分からないが、俺も情報を提供して上手い具合にすり合わせを行う。

 俺の知らない事実もあるだろうしな。

 勿論、地下室に出来たダンジョンに関しては伏せる。


 知られたら厄介どころの騒ぎじゃ収まらない。

 政府に知られたら直ぐに自衛隊が飛んできて、入り口を封鎖した後この家も立ち入り禁止になりそうだ。

 それに知らない奴がダンジョンに潜ろうともする。

 メリットは何一つとして無い。


 ……と言うのが建前だ。


 実際はあのダンジョンを独占したいだけ。

 俺は別に善人じゃない。

 ダンジョンから得られる利益は、全て俺の物だ。

 その為にもっと、強くならないと。


 汗を流してサッパリした俺は早速パソコンの前へ。

 腹の虫が鳴るが、それどころでは無い。

 けどやっぱり腹が減るので菓子パンを食べる。

 案の定、ネットはお祭り騒ぎ状態だ。


 そして情報交換も行われている。

 俺は今日出会ったモンスター、ドロップアイテム、スキルについて書くと、色々な質問が飛んできた。

 多いのは武器に関してだ。


 詳しくは話せないので適当に濁して説明する。

 やはり武器は重要な存在らしい。

 ダンジョンの性質上、外の武器では効果が薄く、どうしてもダンジョン産の武器が必要になる。

 既に売買も行われてるようで、個人同士が武器を売ったり買ったりなんて事も。


 まだ一日も経ってないのに、凄いな。

 いや、だからこそか。

 まだ政府は事態の収拾に追いつけていない。

 封鎖されていないダンジョンも多々あるので、今の内に出来る限りの事をしようとしている。


 それにスタートダッシュは大事だからな。


 その後は動画を幾つか見る。

 主に人間とモンスターの戦いだ。

 参考になれば幸いである。

 しかし、結論から言って余り参考にはならなかった。


 動画の殆どが魔法を使ってモンスターと戦っている。

 武器を用いた戦闘は殆ど無い。

 武器操作系のスキルは対応する武器が無いと、まともに戦う事なんて不可能だからな。

 そりゃ魔法系スキル保有者が台頭するか。


 一部界隈では、武器操作系を外れ扱いしている。

 遺憾だが仕方ない。

 その日は複雑な思いで就寝した。



 ◆



 翌朝。

 俺は久し振りに気持ちの良い朝を迎える。

 また、ダンジョンに潜れる。

 そう思うと、今日が楽しみで仕方ない。

 こんなワクワクいつぶりだろう。


 と、その前に。

 今一度ステータスを確認しておく。

 新しいスキルも獲得したい。



 [ササキソウジ]

 Lv6

 HP 105/105

 MP 60/60

 体力 11

 筋力 12

 耐久 11

 敏捷 12

 魔力 10

 技能 【片手剣術】【】【】

 SP 5



 あれ、おかしいな?


 各能力の伸びがバラバラだ。

 魔力に関しては一切上がってない。

 MPは少し上昇してるけど。

 一律に伸びるシステムでは無いようだ。


 一番高いのは、筋力と敏捷。

 次いで体力と耐久。

 HPは少し上がっていた。


 まあこんなものかと納得する。

 ステータスの成長には個人差があるのかも。

 あとで調べておこう。


 さて……本題のスキルについてだ。

 俺のSPは5。

 一つは新しいスキルを取っておきたい。

 一番欲しいのは魔法系スキルだ。

 遠距離攻撃の手段が欲しい。


 SPの項目をタッチする。

 すると、現在取得可能なスキルの一覧が表示された。

 上から下まで眺める。

 余り数は多くない。

 このスキルも個人差があるようだ。


「……無い」


 思わず口に出してしまう。

 そう、俺には魔法系スキルが一つも無かった。

 なんてこった。

 現段階では、まだ魔法が使えない、のか?

 仕方ない、諦めよう。


 片手剣術でもキチンと戦えている。

 他のスキルを探そう。

 ––––三十分後。

 良さそうなモノをピックアップした。


 ・投擲

 物を投げるのに補正が掛かる。


 ・気配察知

 モンスターの気配を感じ取れる。


 ・隠密

 存在感を消し、他人の意識から外れる。


 ・鷹の目

 目が良くなる。


 ・離脱

 戦闘中でも即座に敵から距離を置ける。


 ・体術

 体を使った攻撃、防御、回避に補正が掛かる。


 俺が有用だと思ったスキル群だ。

 全部欲しいが、スキルスロットもSPも足りない。

 スキルスロットは今の所三つだ。

 今後増えるのか、それとも三つで固定なのか。

 詳細は分からないが、無駄なスキルは取れない。


 投擲は物を投げるのに補正が掛かる。

 攻撃の手数が増えるのは喜ばしい。

 接近戦オンリーだと、バリエーションに欠ける。


 気配察知はモンスターの気配を感じ取るスキル。

 ダンジョン内は危険だ。

 そのリスクを減らせるのは、魅力的である。

 何らかの事情でモンスターと戦いたく無い時に、偶然の遭遇を避けられるのは良いな。


 隠密は気配察知の逆のようなスキルだ。

 気配を消せるので、奇襲が成功しやすい。

 命懸けの戦いで卑怯も何も無いからな。

 本来なら倒せないモンスターにも勝機が生まれる。


 鷹の目は目が良くなるスキル。

 気配察知でも言ったが、戦う相手を一方的に知るのはかなりのアドバンテージである。

 目視に限るが、効果範囲は気配察知よりも広い。


 離脱は名の通り、戦闘から離脱するスキル。

 負けが濃厚になった時、逃走するのに便利だ。

 逃げる為の準備をするのは臆病者ではない。


 逃げずに死ぬ奴が、単に馬鹿なだけである。

 それにもし、他の人と協力して戦う時、コンビネーションの一つとしても活用出来そうだと俺は思う。


 体術は剣を失った時の保険になる。

 俺が骸骨相手にもやったように、武器破壊を狙う相手が今後現れるかもしれない、その時の対策だ。


 ざっと見てこんな感じ。

 どれを取得しようかなあ。


 ––––よし、決めた。


 色々検討した結果、投擲を取ることに。

 遠距離攻撃の手段はやはり欲しい。

 ダンジョン内にはよく石も転がっているし。

 即戦力として使えるスキルだ。


 えーと、投擲の消費SPは……1か。

 選択して決定。

 スキルスロットに【投擲】と表示される。

 無事に取得出来たようだ。


 あと一つ空きがあるけど、残しておく。

 いざって時に取りたいスキルがあるかもしれない。

 SPも有限だしな。


 そうだ、ダンジョンに挑む前にスキルを試そう。

 よく考えたら当たり前の事だ。

 昨日の俺は興奮の余り考えが浅かった。

 反省しよう、死んでからじゃ遅い。


 庭に出て適当な小石を広う。

 的は……何でもいいか。

 物置小屋を漁る。

 木の板のような物を見つけた。

 それを庭の端に置き、離れる。


 狙いは木の板の真ん中。

 投げ方のフォームも感覚で分かる。

 これがスキルの凄い点だ。

 どう動けば良いのか、頭の中にイメージが湧く。

 あとはそのイメージをなぞればいい。


 気づけば小石を放った後だった。

 小石は真っ直ぐ進む。

 そして見事、木の板の真ん中に命中した。

 が、それだけに終わらず、なんと木の板を貫通してそのままコンクリートの壁に激突する。


 小石は砕け散ってしまった。

 投擲スキルの影響か、命中精度は勿論、投げ方による威力もかなり向上している、これは人を殺せるな。

 なんて考えながらもう何発か投げる。


 どれも木の板に命中していく。

 連続で投げても問題無いようだ。

 試し打ちはこんなもんでいいだろう。


 右肩を回しながら言う。

 今なら甲子園のピッチャーにも勝てそうだ。

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