11話・第二階層到達
昨日の更新忘れてました、すみません。
なので今日はこの後もう1話更新します。
あとなんか突然アクセス数増えててビビりました、しかも日刊41位!これも読者の皆さんのおかげです、ありがとうございます。
「よし、今日も行くか」
「はい」
ショッピングセンターへ行った翌日。
俺と琴音はいつものようにダンジョンへ潜る。
ドウジマ店主から色々話を聞いたあとだ。
ドロップアイテムは慎重に確認しよう。
それに、今日は少し深い所へ潜るつもりだ。
レベル10が日本の最高レベル帯のようだが、俺はまだまだ強くなりたいと思っている。
身を守る為……という理由もあるが、一番は単純に、ダンジョン攻略が楽しいのだ。
自分の知らない世界を探索する。
久しく忘れていた気持ちだ。
「以前の別れ道、覚えているか?」
「はい、右へ進んだと記憶しています」
「今日はその道を左に曲がる。強めのモンスターも現れるかもしれないが、今の俺と琴音なら、大丈夫だ」
「精一杯、頑張ります」
そうしてダンジョン内を進んで行く。
道中の雑魚は交互に瞬殺する。
琴音は魔法で、俺は投げナイフで。
琴音の雷魔法は魔力の効率が良く、プラズマショットなら何発撃っても早々MP切れを起こさないとか。
やはり、俺も魔法が欲しい。
モンスターが強ければ、ドロップアイテムも希少で強力な物に変わると仕入れた情報にはある。
深い所へ進む価値はあると言えるだろう。
三十分後。
俺と琴音は階段の前にまで来ていた。
以前は向かわなかった左側の道。
ここがその終点だ。
便宜上、今立っている層を第一階層と呼ぶ。
階段の下は第二階層だ。
「行くぞ」
俺の声を合図に階段を降りる。
この下は何が待ち受けているのか分からない。
注意深く周囲を伺いながら降りて行く。
空気がまた一段と、冷たくなった。
二人分の足音が無機質に響く。
少しだけ不安な気持ちになる。
まるで地獄に落ちているようだ。
ちらりと、琴音を見る。
彼女の表情は相変わらずだ。
それを見てホッとする。
何があっても、不変な存在。
そういうのは時に、心の支えになる。
「……と、ここで終わりか」
「これは……」
階段の先。
そこは小さな部屋だった。
前方にぽつんと扉があるだけ。
恐らく、扉の先が第二階層。
入る前に、ステータスを確認しておく。
琴音にも確認させた。
HPとMPのは適度にチェックしている。
[ササキソウジ]
Lv11
HP 110/125
MP 100/100
体力 17
筋力 21
耐久 17
敏捷 21
魔力 11
技能 【片手剣術】【投擲】【】
SP 9
[テイエンコトネ]
Lv5
HP 60/60
MP 109/120
体力 10
筋力 10
耐久 10
敏捷 10
魔力 14
技能 【治癒魔法】【雷魔法】【】
SP 4
琴音は道中の雑魚退治でレベルが上がっていた。
魔法関係の伸びが顕著である。
やはり個人差は激しいな。
それにSPも一つ増えている。
新しいスキルを覚えさせるのもいいな。
「総司さま、HPが減っています。治癒魔法を」
「この程度なら問題無い、魔力は無駄にするな」
「しかし……」
琴音は納得いかない様子だった。
減ってると言っても僅かに15だけ。
一撃で死ぬようなダメージなら、15の差なんて殆ど誤差のようなものである。
それに治癒魔法の消費MPは少なくない。
そのMPで敵を倒してくれた方が俺は好ましい。
「MPだって無限じゃない。確かに傷を癒す便利なアイテムなんて無いが、それはMPだって同じだ」
「総司さまが、そう仰られるなら……」
渋々といった風に引き下がる琴音。
士気に関わるかもしれないので、フォローしとく。
「……まあ、心配してくれたことには感謝する。結局琴音の治癒魔法を頼りにしてるのは、俺だからな」
「総司さま……はい、ありがとうございます」
少しだけ笑顔が戻った。
言葉の力は侮れない。
俺はそれを、悪い意味で過去に知った。
言葉の暴力。
それは時に、どんな兵器よりも強い。
だけど……こうして人の役に立つ時もある。
難しいな、色々。
「それじゃ、行こう」
「はい、覚悟は出来ています」
互いに武器を前方に構え、扉を押す。
いきなりモンスターが現れる事も想定してだ。
けれど、それは杞憂に終わる。
「……嘘だろ」
「これは……少々、驚きましたね」
二人とも武器を下ろしてしまう。
本来なら許されない愚行だ。
だが、許してほしい。
この光景を見たら、誰だってそうなる。
俺達はダンジョンに潜っていた。
ダンジョンとは地下に根付いた世界である。
当然、地中の中を冒険している事になる筈だ。
なのに––––第二階層は、そんな前提を壊す。
俺と琴音の前に広がる景色。
そこは緑が生い茂る、大自然だった。
「森……でしょうか?」
「見た限りは、そうだな。信じられないが」
高い木々が密集している空間。
植物臭が漂い、小鳥の鳴き声も聞こえてくる。
少なくとも生態系は形成されているらしい。
普通の動物とは思えないが。
ダンジョンの第二階層。
それがまさか、こんな大自然だったなんて。
他のダンジョンも同じなのか?
今は調べようが無いから、考えても無意味か。
とにかく今は進もう、その為に来たんだ。
警戒しながら二人で歩く。
地面は土から芝生のようなモノに変わっていた。
それから歩いて数十分後。
俺達は謎の森を発見する。
全体的に辛い雰囲気の森だ。
巨大な木が所狭しと生えている。
高さも太さも見た事が無い。
そこから伸びる枝葉もイバラのようだ。
引き返すか迷う。
けれど道は一本道だ。
仕方ないので強引に進む。
「枝葉が邪魔だな」
「確かに、歩き難いですね……」
意を決して巨大木の森の中へ入る。
伸びきった枝葉はありのままの自然だ。
枝や葉の先が異様に尖っている。
とても植物とは思えない。
しかし、それが本来の自然の姿なのでは?
俺達が目にする自然は、人の手が加えられている。
害を為す植物は最初から排除されているのだ。
それが無くなった、純粋な森。
……これは想像以上に危険そうだ。
やっぱり他のルートが無いか探す。
森の中を突っ切るのは流石に無謀だ。
今ならまだ森の入り口付近。
直ぐに引き返せば大丈夫。
そう思いながら後ろを振り返った。
––––刹那。
「っ!」
俺は咄嗟に片手剣を振り抜く。
乱暴に放たれた斬撃。
幸いにも狙ったモノは捉えた。
「そ、総司さま!?」
「琴音、伏せろ! ここは既に敵の領域だ!」
「っ、はいっ!」
状況が余り理解出来ていない様子の琴音。
それでも俺の指示には従ってくれた。
琴音が背を低く伏せる。
数秒後、無数の枝が彼女を狙う。
俺はその全てを鍛えた剣術で叩き斬る。
くそ、認識が甘かった。
不甲斐ない自分が恥ずかしい。
よく観察すれば気づけたものを。
俺は頭の中で整理を始める。
第二階層は確かに自然が舞台のダンジョンだろう。
だが、俺はその固定概念に縛られ過ぎていた。
目前の森は確かに自然らしい。
そう、余りにも自然すぎる。
小鳥の声、つんとくる植物臭。
第二階層直後には感じ取ったものだ。
それが、消えた。
この森に入った瞬間、パタリと消え失せたのだ。
故にこの森は自然そのものではない。
自然に擬態したモンスターだったのだ。
俺達はそんな罠に気付かず、嵌ってしまった。
蜘蛛の巣に捕らわれた蝶のように。
「はあっ!」
迫り来る無数の枝。
串刺しにされたら命の保証は無い。
必死で何度も片手剣を振り回す。
だが、それにも限界はあった。
「ぐはっ……!?」
剣技の猛攻を潜り抜けた一本の枝が、やたらと鋭利なその先端を俺の左足に突き立てる。
貫くような痛みが全身を駆け巡った。
思えば、攻撃を受けたのはこれが初めて。
あまりの激痛に倒れそうになるが、もしそうすれば立て続けに枝が飛来して、俺は串刺しにされる。
気を振り絞って、声を張り上げた。
「琴音! 見ての通りこの森は擬態したモンスターだ! 隙を見て脱出するぞっ!」
「はい! ですがその前に……」
体勢を立て直した琴音に告げる。
彼女は杖を構え、魔法を唱えた。
「––––エイド!」
杖の先から淡い緑色の光が放たれる。
すると左足の傷があっという間に塞がった。
痛みも全く感じない。
これが、治癒魔法の力である。
「助かったぞ、琴音」
「いえ、これが琴音の役目ですから」
彼女もプラズマショットで迎撃を開始する。
直線では無く、散弾のように複数放つ。
枝の勢いが僅かに弱まった。
その隙を突き、剣技で一気に枝を薙ぎ払う。
「行くぞ、包囲網を突破する!」
「はい、援護はお任せください」
俺と琴音は、真っ直ぐ元来た道を戻って行く。