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~知り合うために~

~知り合うために~


 PPPPPP


 目覚ましだ。枕元にある目覚まし時計を止める。すぐに携帯を見る。表示は9月8日。朝7時。


 朝からはやることが決まっている。B商店街へ行ってまず、あのトラックを止める。次に青野さんと仲良くなる。そう、ジャグリングをして声をかけるのが、一番可能性が高い。そうなると、広場の申請許可がいる。保証人には祝園さんにお願いするしかない。


「夏樹?今日学校休むの?行くの?」


 母親からだ。もう、そんな時間か。まとまらない。でも、学校に行っている時間はない。


「今日学校休むよ」


「わかった。私はもうちょっとしたら出かけるから後よろしくね」


 そう言って母親は出て行った。そして良太にラインを入れる。


「今日学校休むからよろしく」


 良太からは「わかったよ」と花火のスタンプが来る。想定通りだ。自転車でB商店街に行って誰にも、監視カメラにも映らずに戻ってくる。


 ただ、時間が足りない。祝園さんの行動パターンを考える。まず、何もなければ朝○○駅にいる。ネットで調べるとメイド喫茶は11時から開店だった。


 多分、管理会社の峯島さんに用事があったはずだ。だとしたら、それ以降に時間をもらえばいい。11時より前に祝園さんにラインを送ればいいはずだ。早いと行動パターンが変わってしまう。多分、夕方に○○駅で僕と坂下さんと会うから朝から○○駅周辺に用事を固めたのだと思う。


 僕が断るのが早いと自転車に乗っている僕が祝園さんに発見されてしまう。多分、別の用事のため出かけたのだろう。


 11時だと早いのか遅いのかがわからない。とりあえず、試してみる価値はあると思う。けれど、実際11時はB商店街のホテルでネットに書き込みをしている時間だ。


 ネットの書き込みが終わったらすぐに戻ってくる。でも、祝園さんは僕が家にいると思っているからお昼を一緒に食べようと言ってくるだろう。


 多分、あのメイド喫茶のオムライスを食べるはずだ。過去大体1時間くらいかけて家からB商店街まで自転車で行っている。ロードバイクで行けばもう少しだけ短縮できるだろう。どれくらいなのかわからないがこれも実験してみよう。


 後は、すぐにジャグリングの用意ができるようにアタッシュケースを用意しておく。誰も家にいないんだ。玄関口に置いてから自転車に乗ろう。後は着替えだ。


 どうしてかわからないけれど、メイド喫茶のみきちゃんは僕が私服だと怒りモードになる。余計なヘイトは稼ぎたくない。制服に着替えよう。


 そうとなると時間が全然足りない。PCでカエル急便に電話する時に使う音声の作成と録音をする。そして、ロードバイクように服を着替えて出かける。やはり、ママチャリより早い。結局B商店街には半分の30分くらいで到着した。


 カエル急便への電話は早められるけれど、ホテルへの突入はあの時間以外成功していない。コンビニだと僕がカメラに映ってしまう可能性があるので、周りの探索を行うことを決めた。


 しばらく走っていると祝園園芸という看板がかかったビルがあった。祝園さんはひょっとしたらあの時このビルに来ていたのではと思った。何かの拍子で祝園さんがこっちに来るかもしれない。僕はそっとビルから離れた。


 ようやく指定の時間が近づいたので、自転車を止めて、ホテルの通用口から入る。誰にもすれ違わない。時間も限られている。さっと書き込みをしてホテルを出る。ここまでは、問題ない。自転車に乗る時に祝園さんと坂下さんにラインをする。


「今日ですが時間早めたいです。15時から対応可能ですか?後、16時から中央広場でジャグリングが出来たらと思っています。保証人になってもらえませんか?」


 坂下さんが僕のラインを見るのは15時近く。その時間を指定しておいた。これだと、今までと同じで家でお昼を食べることができる。


 自転車に乗ろうとしたら祝園さんから速攻で返事が来た。


「いいけど。学校は?サボりなら一緒にお昼食べようよ。いいとこ連れて行くよ」


 やはり予想通りだ。


「14時くらいならなんとかなるかもしれません」


 そうラインを送る。しばらく返事がない。ロードバイクに乗って自転車を走らせる。携帯は上腕部分にあるポケットにいれている。走っている途中に振動を感じたけれど、とりあえず信号で止まったら見ようと決めた。


 ただ、そういう時に限って信号は青で、気が付いたら家についていた。携帯を見ると祝園さんからラインが返ってきていた。


「じゃあ、14時で。ちゃんと坂りんも呼んでいるから安心してね。あ、そうそう。面倒だろうから申請書結構埋めておいてあげたよ」


 多分、祝園さんが申請書を書いたとは思えない。峯島さんに書かせたのだろう。けれど、時間は有限だ。少しでもショートカットできるのなら助かる。後は14時に○○駅で祝園さんと会う。そして、16時に青野さんと出会うのだ。僕は急いで○○駅へと向かった。



 電車に乗りながら考える。坂下さんは祝園さんが呼んだ時間に○○駅に来る。何もなければ13時45分に○○駅に飛鳥さんと共に来る。


 祝園さんは僕が連絡をする、僕と出会うことで行動が変わる。だから気を付けないといけないのはやっぱり祝園さんだ。


 タイムリープを何回かしているが、祝園さんが実はラスボスなんじゃないかと思う時がある。


 今回も何かして何かが起きるのではと思っている。いつもそういう覚悟が祝園さんと会う時には必要なんだ。


 ○○駅の中央改札に来たら「絡むな危険」のTシャツを着た祝園さんが立っていた。横には力なくうなだれている峯島さんがいる。


「早かったね」


 時計を見ると13時54分。14時前に着く電車だったからこの時間に改札口にたどり着ける。


「ああ、急いだからな」


 振り返ると僕の後ろに坂下さんが立っていた。この人電車でも移動するんだ。いつも車で移動しているイメージがあった。そして横にはミステリアスな女性。飛鳥さんもいる。


「どうも」


 とりあえずお辞儀をする。


「その女の人誰?彼女?」


 祝園さんが飛鳥さんに話しかける。


「ちょっと色々あって強制的に預けられた。まあ、何か考えるか。そっちのは誰だ?」


 坂下さんは峯島さんを指差した。


「ああ、気にしないで。あ、峯島さん。戻っていいよ。多分片付けとか必要でしょう。ボクって優しいからさ」


 そう言って祝園さんは峯島さんの肩を強くたたく。基本的に祝園さんは笑顔なんだけれど、たまに目が笑っていない時がある。今がそれだ。


「はい・・・・」


 目が虚ろなまま峯島さんは事務所があるほうに向かって歩いて行った。


「なんだ?体調でも悪いのか?いいのか。一人で行かせて?」


「大丈夫なんじゃない?それより、行きつけがあるから連れて行くね。ボクのお気に入りの子がいるんだよね」


 祝園さんは子供っぽいところがある。けれど、この人は素なのか演技なのかがまったくわからない。



 メイド喫茶。さびれた雑居ビルの上にいきなり現れる木の扉。


「カッティングシートだな。木でつくるとこう言うのは高いからな。木目に見せたシールだ。だが、これくらいでの質も十分素人には木に見える。テレビなんかだと映らない所はこういう感じだからな」


 どっしり座りながら坂下さんが話す。木でできていたわけじゃなかったのか。


「みきちゃん。こっち来てよ。彼が噂の天才少年ジャグラーの外塚くん。なんかさ、ちょっとそれっぽいことやってみてよ。後、僕にオムライスね。ちゃんと愛情たっぷりケチャップお願いね」


 祝園さんがそう言ってくる。僕はシュガースティックでジャグリングをする。何回このメイド喫茶でジャグリングをしただろう。


「流石だね。なんでも身近なもので出来てしまう。でもみきちゃん。外塚くんはねみきちゃんとあんまり年齢変わらないんだよ」


 そのセリフでものすごく睨まれた。


「いいですね。学校にも行かずさぼれる身分なんて」


 時計を見ると確かにまだ14時過ぎ。何もなければ学校にいるはずだ。


「今日は用事があって午後は授業ないんだよ」


 そういって見た。だが、あまりみきちゃんの反応はよくない。


「そうそう、この外塚くんはあの有名な風名高校なんだよ。しかもずっと成績トップなんだ。何やってもうまくやるんだよ。まるでね、これから起こることがわかっているかのような行動なんだよ。あ、そうだ。これどうだろう。ボクがね、未来予知をして、みきちゃんがボクをサポートしてテレビに出るの。坂りん。これならいいんじゃない?」


 みきちゃんは首を横に振って去って行った。でも、もう僕を睨んでいなかった。坂下さんが言う。


「そうだな。まあ、未来予知が本当に出来るのならそういうのも面白いかもしれない。けれど、よほどの事件をうまく未然に解決しないとテレビでは取り上げないな。


 それに、役が違う。この飛鳥を預言者にして、祝園がサポート役だ。お前が信者のように周りを固めて、耳打ちされて話す。それの方が画になるな。でも、事件があって、誰よりも早く解決ができるのならばだがな」


「何か最近事件があるんですか?」


 僕は聞いた。坂下さんはメディアの人だ。僕らが知らないことをいっぱい知っている。


「ああ、なんか今月はじめに爆弾騒ぎが合っただろ。ほら、お前も絡んでたアレだ。


 あの時と同じようなタレコミがあったんだよ。犯行声明もな。だが、爆弾はまだ見つかっていない。どこか違う所にあるのではないかってなってる。


 この爆弾を誰よりも先に発見できたらニュースになるな。しかもそれをライブでやる。それが出来たらこいつらを取りあげられるだろうな。


 まあ、そんな面白いことが起きればの話だ。まあ、そういうわけで俺は忙しいんだ。だから、ちょっと局に戻るから。飛鳥のことよろしくな」


 そう言って坂下さんは出て行った。僕の行動で未来が変わるのは当たり前だ。けれど、多くの人に迷惑をかけてしまっている。ほかに手段があったのか考えてしまった。


「どうしたの?外塚くん。暗い顔しちゃって。みきちゃん。ラブラブ注入してあげてよ」


 祝園さんが僕の顔を覗き込むように下から見てくる。この人は要注意だ。おどけているように見えるけれど目はいつだって笑っていない。大人が怖いということを教えてくれた人の一人なのだから。


「いえ、ちょっと考えていたんですよ」


「あ、僕たちのデビューについて?うれしいね。真剣に悩んでくれるなんて。でもね、多分なんとかなると思うんだ。外塚くんはそういう能力持っているでしょ。まあ、今日はこれくらいで解散かな。僕はもう少しみきちゃんと話しているからさ。この飛鳥さん連れて出て行ってよ」


 祝園さんはそう言いながらメロンソーダをブクブクさせている。口は笑っているけれど目は真剣だ。理由はわからないけれど、この表情は多分一人になりたいのだ。


「そうですね。では、僕たちはこれで」


 空気が読めていない飛鳥さんはまだ座っていたので、肩を叩いた。本当は一人でいたいけれど、得体のしれない感じになっている祝園さんは絶対そっとしておいた方がいい。Tシャツにある「絡むな危険」の通りだ。


 会計を払おうとしたら坂下さんがすでに払い済みだった。いつのまにか支払うのがかっこいい大人だと思っている。


 時計を見る。15時前だ。今から用意をすればちょうどいいかもしれない。飛香さんが言う。


「私、どうすれば、いい?」


「自由にすればいいんじゃないですか?僕はこれから広場でジャグリングをしますから」


「見学、しても、いい?」


 一瞬悩んだ。多分、この返答はどちらを選んでも見学をするのではと思った。


「それも自由でいいと思いますよ。誰かの許可がいることじゃないですから。飛鳥さんの行動は飛鳥さんが決めればいいんですよ」


 飛鳥さんの表情が変わった。目を大きく開いて僕をみている。吐き捨てるように飛鳥さんが言う。


「自由にして何かを得られる人はいいですね」


 一瞬びっくりした。普通に話されたからだ。飛鳥さんのことはよくわからない。


 けれど、僕だって自由に何かをしてきたわけじゃない。ただ、僕の苦労は誰にも伝わらないだけだ。


 でも、人の苦労ってそういうものじゃないのかな。僕はそう思いながらジャグリングの準備を進めた。青野さんが来るまでに。



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