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~タイムリープ~

~タイムリープ~


PPPPPP


 目覚ましだ。枕元にある目覚まし時計を止める。すぐに携帯を見る。表示は9月8日。


「夏樹?今日学校休むの?行くの?」


 母親からだ。


「今日学校休むよ」


「わかった。私はもうちょっとしたら出かけるから後よろしくね」


 僕を撃った相手が峯島さんだと思わなかった。どうすれば回避できるのか。いや、祝園さんは何を知って、峯島さんを追放したのだろう。


 わからない。


 とりあえず、方向性は間違っていないはずだ。どこかで峯島さんについて、そして、その対策を考えないといけない。


 対策と言ってもできることは限られている。あんな釘が飛んでくる銃が日本にあるのかと思って調べたら、普通にあった。


 ガス銃と呼ばれる連射式のものだ。確かにイベントでステージを立てたりするし、そういうイベントの準備で見たことはある。


 これってどこにあるものなのだろう。あの事務所にあるのだろうか。だが、僕がどうにかできる話しでもない。


 それにどうやって僕たちがあの場所に来たのを知ったのだろう。モニターで監視されているのだろうか


 わからないことは多い。でも、すべてがわかる必要もないのかもしれない。大事なのは誰も死なないルートを捜さないといけない。とりあえず、まずは商店街に行って、ホテルで書き込みだ。


 商店街についたので電話をするため自転車を止めて、カエル急便に電話をする。そしてホテルの通用口から入る。


 誰にもすれ違わない。書き込みを終わらせて、自転車に乗る時に祝園さんと坂下さんにラインをする。

変化をつけるのはもっと先だ。


「いいけど。学校は?サボりなら一緒にお昼食べようよ。いいとこ連れて行くよ」


 祝園さんからのラインがきちんとくれば大丈夫だ。


 14時近くで○○駅の中央改札に来たら「絡むな危険」のTシャツを着た祝園さんが立っていた。横には力なくうなだれている峯島さんがいる。この峯島さんがこの後どういう行動を取るのかだ。


「早かったね」


 時計を見ると13時54分。14時前に着く電車だったからこの時間に改札口にたどりつく。これも何度も経験している。


「ああ、急いだからな」


 振り返ると僕の後ろに坂下さんが立っている。これも想定通り。そして横にはミステリアスな女性。飛鳥さんもいる。


「どうも」


 僕は飛鳥さんにお辞儀をする。何がきっかけで変わるかわからない。できるだけトレースを続ける。


「その女の人誰?彼女?」


 祝園さんが飛鳥さんに話しかける。これも今まで通り。祝園さんの意識は僕じゃなく飛鳥さんになっている。これで安心できた。


「ちょっと色々あって強制的に預けられた。まあ、何か考えるか。そっちのは誰だ?」


 坂下さんは峯島さんを指差した。


「ああ、気にしないで。あ、峯島さん。戻っていいよ。多分片付けとか必要でしょう。ボクって優しいからさ」


「待ってください」


 僕はまずここで峯島さんを呼び止める。


「峯島さんはこの後どうするんですか?よかったら16時から僕ジャグリングするので見に来てください」


 とりあえず、峯島さんがずっとこの○○駅にいればいい。そう思っていた。けれど、祝園さんが言う。


「峯島さんはね、これから家に戻るんだよ。今日で退職しちゃったからね。自己都合の退職。ボクって本当に優しいよね。わかるよね。峯島さん」


 峯島さんはうなだれている。


「峯島さんの家ってどちらなんですか?」


「確か八千代にある新興住宅だよね。でもまあ、そこも今日で引っ越すことになるだろうし。まあ、新たな旅立ちってことでいいんじゃない?それよりさ、ボクのね行きつけがあるから今日は皆を連れて行こうと思っていたんだ。ボクのお気に入りの子がいるんだよね」


 峯島さんの行動は変えられなかった。そして、峯島さんは八千代に行く。僕たちよりも早くだ。僕たちはメイド喫茶に向かい、峯島さんは立ち去った。でも、僕は気が付いた。峯島さんの目は焦点もあっていない状態。怖いと思った。


 メイド喫茶が入っているさびれた雑居ビルに着く。


「カッティングシートだな。木でつくるとこう言うのは高いからな。木目に見せたシールだ。だが、これくらいでの質も十分素人には木に見える。テレビなんかだと映らない所はこういう感じだからな」


 どっしり座りながら坂下さんが話す。この話しも前に聞いている。まず、切り出しのタイミングだ。仕方がない。車での移動の時に話しをしよう。僕はそう決めた。


「みきちゃん。こっち来てよ。彼が噂の天才少年ジャグラーの外塚くん。なんかさ、ちょっとそれっぽいことやってみてよ。後、僕にオムライスね。ちゃんと愛情たっぷりケチャップお願いね」


 祝園さんがそう言ってくる。僕はシュガースティックでジャグリングをする。


 不機嫌なみきちゃんに祝園さんがこう話す。


「そうそう、この外塚くんはあの有名な風名高校なんだよ。しかもずっと成績トップなんだ。何やってもうまくやるんだよ。まるでね、これから起こることがわかっているかのような行動なんだよ。あ、そうだ。これどうだろう。ボクがね、未来予知をして、みきちゃんがボクをサポートしてテレビに出るの。坂りん。これならいいんじゃない?」


 みきちゃんは首を横に振って去って行った。


「そうだな。まあ、未来予知が本当に出来るのならそういうのも面白いかもしれない。けれど、よほどの事件を未然に解決しないとテレビでは取り上げないな。それに、役が違う。この飛鳥を預言者にして、祝園がサポート役だ。お前が信者のように周りを固めて、耳打ちされて話す。それの方が画になるな。でも、事件があって、誰よりも早く解決ができるのならばだがな」


「何か最近事件があるんですか?」


 まずは、ここで坂下さんが去るのを止めないといけない。


「ああ、なんか今月爆弾騒ぎが合っただろ。ほら、お前も絡んでたアレだ。あの時と同じようなタレコミがあったんだよ。犯行声明もな。だが、爆弾はまだ見つかっていない」


 僕は割り込んでここで話す。


「爆弾らしいものを僕が見たと言ったらどうします?このネタを使えないですかね?場所は3か所ですが連れて行きた居場所はここです」


 僕はそう言って、携帯のマップで青野さんの家を指差す。その瞬間坂下さんの表情が変わった。


「おい、祝園。こいつにさっきの件話したのか?」


 さっきの件?何だろう。僕はきょとんとしている。祝園さんが話す。


「まさか。外塚くんにはきれいな話ししかしたことないよ。ってか、僕が信用できないわけ?」


 知らない展開。この二人は僕の知らない何を知っているのだ。坂下さんが言う。


「1日の時といい、俺は外塚には何かあると思っている。お前、本当に未来が見えるんじゃないのか?それとも見てきたのか?」


 ものすごい剣幕だ。本当のことを言って信じてもらえるのだろうか。いや、信じてもらえるのなら1日の時に信じてもらったはず。


 あの時、言っても信じてもらえなかった。泣きながら話したら祝園さんに笑われたんだ。「泣いて世界が変わるなんてことはないんだよね」と。だが、話したい。信じてもらいたい。言ってダメだったらまた、タイムリープすればいい。そう思った。


「信じてもらえないかもしれません。僕には確かに能力があります」


 時間をかけて僕はタイムリープの話しをした。前は笑われた。だが、坂下さんも祝園さんも黙っている。


「あの、この空気?何?」


 飛鳥さんが空気を読まずに話す。坂下さんがゆっくりと話す。


「信じろと言われて信じられることではない。だが、外塚の言うことは確かに信ぴょう性がある。まあ、交差点の事故については偶然だろうが、今回の爆弾事件については納得がいく」


「そうだね。ボクとしてはその能力をつかってみきちゃんと付き合いたいけれどね。でも、死ぬのはイヤだからさ。だから騙されたと思って演じてあげるよ。違ったらボクは坂りんと違って優しくないからただ働きじゃ許さないけどね」


 祝園さんの笑顔が怖いと思った。


「なら、簡単だ。まずその青野の家に行くぞ。祝園は車を出せ。俺はそうだな。ちょっと電話をしてくる。外塚。お前はこれを買ってこい。中央広場横のロータリーで待ち合わせだ。そうだ。外塚。飛鳥を連れて行け。荷物持ちにいいだろう」


 信じてくれた。こんなことは今までなかったことだ。僕は言われたものを買いに行く。といっても、飛鳥さんが着る占い師セットだ。


 それにプラスして、バンダナにワックスと鏡にマジックにガムテープ。後は金属バットだ。一体なんでこんなものが居るのだろう。飛鳥さんと不思議に思いながら買い込んだ。


 ロータリーに着くと前回と違う車だった。前は普通の乗用車だったのが今回はワゴンだ。車に詳しくない僕だけれどなんで車種が変わったのかわからなかった。


 そして、なぜか祝園さんの服装が黒のスーツに白のワイシャツ、黒いネクタイに変わっていて、ひげもそっているし、髪型もちゃんとしている。


 ただ、かなり大きめのサングラスをしている。これで体形がスリムだと追いかけてくる人みたいなのにと思った。


「祝園さんってそういうかっこの方がいいと思いますよ」


 つい、声に出てしまった。祝園さんが言う。


「ボクね。こういう服装が嫌いなんだよね。でもさ、今回はエンターティナーとしてだから我慢するよ。あ、外塚くんは助手席ね。後、飛鳥さん。君は今日から名前が変わる。君の名は『かんなぎ あすか』だよ。


 まあ、僕はかんなぎ様と呼ぶからね。君は預言者となってそれっぽいことを言うのだ。安心して。指示はインカムで飛ぶから。


 でも、リテイクはない。一発本番だからね。だからさっさと着替えて。後ろはスモークが付いているから見えないし、カーテンもあるからさ。着替え終わったら坂りんにヘアセットしてもらって」


 そう言ってワゴンに乗り込んだ。薄手のバンダナを折り曲げて目を隠すようにしばる。


 うっすらと周りが見えるくらいだそうだ。そして、ベールで顔全体を隠す。その理由はインカムが見えないようにするためだ。話す内容はすべて坂下さんが指示をする。カメラはどうやら僕が撮るらしい。


「お前の役目は重要だからな。失敗するなよ」


 そう言われた。移動の間に教わった。


 このニュータウン建設にはかなりの利権が絡んでいる。その一つが地元から働きかえたアニメの制作。


 土地の転売には一部暴力団関係が絡んでいたそうだが、徐々に排除をしていっていたが、このアニメでの利益の一部が暴力団に流れ込んだと言う。


 そのパイプ役をしていたのが峯島さんなのだ。そして、この暴力団に所属しているのが須藤和也の父親だという。


 そして、元々ニュータウン建設時にこの辺りの土地を持っていた人は複数いるが、面積が一番多かったのが柚木家だそうだ。柚木家には色んな人間が出入りしている。坂下さんはこの案件を調べていたそうだ。そして、もう一人キーになるのが青野家だという。


 青野家がジャストコを誘致してきたのだ。住宅だけでは土地の価値は上がらない。この誘致についてもきな臭い噂があるという。ただ、確証はなにもない。噂があるだけだ。


 だが、この前ジャストコの創業者であり、大株主の娘が、僕の妹が行っている中学校に通っているそうだ。


 そして1日に爆破予告事件があった。結果的に爆発は起きなかったが、今回の企業誘致で正式に処理できないお金を身代金として奪おうとしたものがいるのではと坂下さんは考えているそうだ。


 裏金みたいなものは帳簿に乗せることができないそうだ。だから個人でばれないように所有していることもある。


 1日の爆弾犯の狙いはその裏金だったのではと考えているそうだ。ただ、事件はうまく行かなかったので、次の矛先が青野家と柚木家に移ったのではと坂下さんは言う。


「そんなことで爆弾をしかけるの?」


 僕はそう思った。坂下さんが吐き捨てるように言う。


「この再開発で動いているのは億単位の金だ。その恩恵を受けている人間が限られている。まあ、この祝園も受けているがこいつは金の使い方もわかっているし、金で人がかわることもない。


 だが、世の中はそうじゃない。ふいに手にした金でおかしくなるやつも多い。そして、手にできなかったものは妬みもする。


 どうにかして金を引っ張り出したいとも思う。峯島はうまく処理ができなかったみたいだがな。だが、これから俺らはあいつらに殺される可能性があるのだろう」


「はい」


「だとしたら、今回の事は事件じゃなくエンターテイメントとして終わらせる。こんな案件。普通に警察に持って行ってもまともに処理するとも思えないしな。警察もこの件は追いかけている。


 下手なことはできない。ただ、胡散臭い占い師が出てきて解決をする。それで十分だ。そして、それはテレビには乗せない」


 僕はその言葉で頭がはてなになった。


「テレビに乗せないのならどうして撮影するのですか?」


「わかっていないな。ネットだ。だから素人のお前が撮るのがいいんだよ。胡散臭い占い師、素人の映像。


 チープだからこそ誰も信じない。けれどな。爆破事件は解決できる。この動画が元になって犯人逮捕にもつながる。


 だからアカウントも今作った。動画再生に広告をつける。さあ、面白い動画にしてくれよな」


 僕は手渡されたカメラを見て思った。だから渡されたのがスマホなのかと。


「わかりました。面白い画を撮ります」


 祝園さんは車を止めた。


「これからライブだからな。後、外塚。お前もインカムもつけろ。俺が指示する。俺は車から出ないから」


 坂下さんはそう言って金属バットを手に持って鏡を固定しはじめた。


「俺はここに籠って様子を見る。襲ってくるんだろう。峯島が。ちなみに、このワゴンはすごいぞ。祝園がつくった違法車両だ。このガラスは防弾ガラスだし、タイヤも特注品。車体の厚さも変更されている。こんな車を普通に持っている奴なんていないからな。じゃあ、行って来い。まずは普通に青野家を訪問しろ。その前に祝園。お前が仕切るんだからな」


 坂下さんはすごく楽しそうだと思った。


「わからないだろう。テレビなんて規制だらけなんだ。ネットは何でもアリだからな。そして、このライブは注目されるように仕掛けもしている。ツイッターやSNSでどんどん宣伝する。お前らの演技がへぼいのはわかっている。いいからやってこい」


 僕たちは車から追い出された。目の前に青野家がある。僕はカメラの録画ボタンを押した。



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