5.5話 クイズと泥棒についていけない!
1
ある日。
俺は部屋のベッドで携帯をいじっていた。
転生したばかりの頃は使えなかったのだが、以前ルウに前の世界に干渉しないことを条件に、特別に直してもらった。
見ていたのはクイズのまとめサイト。
決して暇だからと言って見ていたわけではなく、これも発想力の訓練なのだ。
とか自分に言い聞かせないと、どうにかなっちゃいそうなくらい暇だ。
ベッドの上でああでもないこうでもないとうねうねしていると、隣の部屋からイリカが訪ねてきた。
「ん、おにい、あそぼ」
「んー?見ての通りにいちゃんは忙しいんだ。後にしてくれー」
そう言って俺は、イリカに背を向けるようにして寝返りをうった。
するとイリカがベッドに身を乗り出し、
「かぷっ」
「っひゃああああああ!!」
いきなり俺の耳にかぶりついてきた。
「い、いきなり何すんだ!」
「ん、おにい、嘘ついた、から、おしおき?」
「なんで最後疑問形なんだよ。はあ、わかったわかった、相手してやるから」
俺はベッドに座り直し、イリカもベッドの上に座った。
しかしイリカ相手に何をすればいいのやら……と、考えていると携帯の画面が目に入った。
「そうだ!イリカもクイズするか」
「ん、くいず?楽しい?」
「まあ楽しいんじゃないか?やるか?」
「ん、楽しいなら、やる」
「よしきた」
俺は画面の中から、イリカでも解けそうな問題を探した。
「よし、じゃあ第1問!えーっと、馬車がカーブを曲がる時に必ず落とすものは?」
「ん、馬車、落とすもの……?」
しばらく考えてイリカが答えた。
「ん、車輪?」
「そしたら馬車は壊れちゃうだろ」
「ん、じゃ、木屑?」
「それは曲がらなくても落としてるかもな」
しばらく考えても答えが出ないようなので正解を言うことにした。
「正解は速度だ」
「ん」
そう言ってイリカは次の問題に身構えた。
え、次あんの?
もうちょっと悔しがってもいいと思うのだけれど。
まあ次の問題行くか。
「よーし!ニューヨークに行きたいかー!」
「ん、どこ、そこ。楽しい?」
「いや、ごめん。わかんないよな。忘れてくれ」
「ん、おにいは、相変わらず、難しいこと、言う」
思わずクイズでテンション上がっちゃったけど伝わんないよね。やっぱ。
その後何問かクイズを出した後に、突然イリカが言った。
「ん、イリカも、くいず、出してみたい」
「え、ああ出せるのか?」
「ん、やってみる。おにい、のやつ、見てた、から」
そう言ってイリカから問題が出題された。
「ん、第、1問、ででん」
まったく、変なことばっかり覚えて。
誰が教えたのかしら。
って教えたのはさっきの俺でしたね。そうでしたね。
「ん、グレネードドラゴン、が、空飛ぶ時、落とすものは?」
え、何その物騒なドラゴン。
異世界怖い。
でも答えは多分これ。
「えーっと……グレネード?」
「ん、正解」
「でしょうね!てかこれクイズじゃないから!まんま答え言ってるから!」
イリカにはクイズの出題は難しいかったようだ。
するとイリカがベッドから降り、扉へ向かった。
「どうした?」
「ん、飽きた、から、帰る」
「そうかい」
なんとも自由なやつだ。
俺はまた、携帯の画面に視線を落とす。
するとイリカが、部屋を出る前に振り返って俺に言った。
「ん、ありがと、おにい」
バタン。
まあ、あれだ。
また今度遊びを教えてやるか。
なんだかんだ言って、結構楽しかったしな。
頭の中でさっきのイリカの顔を思い出しながら、今日で3度目になる眠りについた。
2
目を覚ました時には昼過ぎになっていた。
起きた原因は、外から聞こえるルミナのはしゃぎ声だった。
窓を開けると、畑の中で両手に野菜を持つルミナの姿が。
ルミナも俺に気づいて声を上げる。
「悠くん!見て見てこの野菜!お婆さんが作ったんだって!」
食べ物のことになると、ルミナはテンションが上がりっぱなしだ。
俺もルミナのテンションに影響されて、下に行くことにした。
何度も言うが決して暇だからというわけでは(以下略)
「悠くん!こっちこっち!」
「わかったから、野菜落とすなよ」
畑には色んな野菜があった。
見覚えのあるものから不思議な形まで。
「取った野菜は今日の夜ご飯になるんだよ」
「お前の原動力はやっぱそこなんだなぁ」
まあ部屋を使わせてもらってる身としては、手伝わないわけにはいかないな。
収穫を手伝おうとしたその時、野菜が勝手に動き出した。
「おい、野菜が動いたぞ!」
「んー?そんなわけないでしょ?悠くん疲れてるんじゃない?」
「いや、ほんとなんだって!」
2つ、3つ、4つと、野菜が次々と動き出す。
「え!何⁉︎どうしちゃったの⁉︎」
ルミナも動く野菜を見たらしく焦っている。
野菜は宙に浮き、そのまま一ヶ所めがけて飛んでいった。
「あっちにはたしか…」
「今は使われてない古城があったはずだよな」
野菜は全部盗られたわけではないがいずれ半分近く盗られた。
「どうする、ル…」
「取り返しに行くよ!!」
ルミナが食い気味に答えた。
そう言ってルミナは宿に戻ったと思ったら、数秒で出発の準備をしてきた。
「ぼさぼさしてないで行くよ悠くん!」
「お、おう……」
ルミナのガチ度に引きつつ、俺もすぐ部屋に戻って準備した。
新しい冒険用の服に袖を通し、腰に中ぐらいの刀を装備した。
下に降りた時にはすでにイリカもいた。
「行くよ、みんな!」
「ん、おー」
「お、おー」
こうしてガチ中のガチのルミナに引っ張られ、緊急クエストが始まった。