36話 一件落着で終われない!
1
親父さんからも正式に許可をもらい、堂々と冒険者家業ができるようになったルミナ。
聞けばお父さんは今回の件はさほど心配しておらず、逆にエーデルが勝手に騒いでいたらしい。
なのでこれで問題は解決。
「せっかくだし、町でも見ていくか」
「そうね、何せこっちにはお姫様がいるのよ?サービスしてもらわなきゃ」
「あはは、恥ずかしいよぉ」
こういう時のアリスはほんとにがつがつしている。
セール大好きな元日本人なだけあるな。
にしても遠慮がなさすぎるけど。
「サービスはともかく、ルミナの故郷なんだから色々案内してもらおうかな」
「うん!それなら任せて!」
そこから俺たちは、ルミナの案内でグラリアの町を歩き回った。
大きな風車に綺麗な川。
名物のコウモリの羽の串揚げは、ビジュアル的にはアレだったけど、食べると意外と美味しかった。
「わ、私はいいわ……」
「遠慮しないでアリスちゃん。ほらほら〜」
串揚げをすすめるルミナを全力で拒否するアリス。
「ん、アリス、おいしい、よ?」
イリカも串をアリスに向ける。
「ゆ、悠斗ぉ、助けてぇ〜」
たまらずアリスが俺に助けを求める。
だがこんな面白い状況に俺が参加しないわけもなく。
「まあまあそう言わず、な?」
「いやぁぁぁ!!!!」
この後アリスの絶叫で警備兵が飛んできて、怒られるのはまた別の話。
※ちなみに串揚げはルミナが美味しくいただきました。
2
「ほんとにもう!悠斗はほんとにもう!」
「悪かったって。さっきから謝ってんだろ」
さっきのいじわるで機嫌を損ねてしまったアリスが俺の文句を言う。
「もう帰ろうか。早く冒険者に戻りたいし」
ルミナがうずうずしながら言った。
アリスの件は反省していない。
「そうだな、あそこが出口だよな?」
そう言って俺は外へ出る扉に向かおうとした。
するとイリカに袖を引っ張られる。
「ん、おにい、あれ、変」
イリカが指差すのは正面の扉、つまり出口だ。
「どういうことだ?」
「ん、よく、わからない、けど、いやな、かんじ」
動物の勘が訴えるのだろうか、俺たちにとっては普通の扉でも、イリカにとっては何か嫌なものを感じるようだ。
「うーん、でもどうすっかなぁ。アリス、確認出来るか?」
「ええ、やってみるわ」
アリスが一歩前に出て杖を構える。
魔法を扉に向けて唱えると、扉がガタッと音を立てた。
「……!みんな逃げてっ!!」
危機を察知したアリスが叫ぶが間に合わなかった。
扉がいきなり開き、俺たちを吸い込もうとした。
「きゃあぁっ!!」
扉の一番近くにいたアリスが悲鳴をあげて扉に吸い込まれた。
「アリス!くっ…………」
俺たちも咄嗟のことで反応が遅れ、全員扉の闇に吸い込まれてしまった。
3
「一体どうなってるんだ……」
一連の流れを見ていたルウが思わず呟く。
「……まさか!」
ルウはライハの姿に戻り、ユエの元へと急いだ。
ルウはこう見えて普段から悠斗の周りに気を配っていた。
その目をかい潜り、悠斗に手出しができるやつはルウの中で1人しか浮かばなかった。
「ユエ!悠斗がっ!」
「わかってる、こっちへ」
ユエはもう手に持つ水晶で悠斗を見ていた。
「なんでユエが悠斗を見てたの?」
「私も、気にしてた、あなたが気にかける子、それより……」
ユエはちらりと水晶を見る。
水晶は真っ暗で何も映っていない。
「……僕、行ってくるよ!」
そう言ってライハは悠斗のいる世界に行こうとした。
だが。
「…………行けない!なんで⁉︎」
「おそらく、前の件を警戒して、神の侵入を遮断しているんだと思う。フシミ、今度は何を………」
「そんな…何とかならないの?」
「これを破るのは、難しそう。だいぶ強力だから、私でも、時間がかかりそう」
ユエが歯痒そうに言った。
「悠斗…………」
ライハは神になってから初めて、自分の無力さを嘆いた。




