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呪われ転生じゃ死にきれない  作者: 鳴神 春
40/46

35話 冒険仲間は許さない!

1


エーデルが手配してくれた馬車に揺られながら、俺たちはルミナの故郷であるグラリアに向かっていた。


「アリス、パッキーいるか」


「ええ、二本ちょうだい」


俺は細長いお菓子を袋から二本取り出し、アリスに渡す。


「ん、おにい、ちょうだい」


「わかってるよ、ルミナも食べるよな?」


「当然食べるよ、ありがと悠くん」


みんなでパッキーを食べながら、ふとルミナに聞いてみた。


「そういやグラリアってどんなところなんだ?」


「えっと、ベルメルクよりは大きくないけど、中心街は賑わってるかな。あと魔法使いが多いんだぁ。学校の必須科目だったし」


「そうなのか。どうりで魔法が上手いわけだ」


感心していると窓の外に街が見えた。


「あ!見えた!あれがグラリアだよ」


ルミナが遠くにあるお城を指差す。

そして馬車は俺たちをそのお城まで連れていった。

馬車から降りて長い階段を上っていき、大きな扉の前で立ち止まる。


「クレイブ王、ルミナ姫をお連れしました」


エーデルが扉を開けて部屋の中に話しかける。

俺たちも後に続いて部屋に入る。


「おおルミナ、無事でよかった」


クレイブ王、ルミナの父親が椅子から立ち上がり、ルミナの元へ駆け寄る。


「お久しぶりです、お父様」


ルミナもお辞儀をして父親を迎える。

こうしてみるとお姫様なんだなって改めて思う。

するとクレイブ王が俺たちに気づき話しかけてきた。


「君たちがルミナの冒険者仲間か。娘をありがとう」


「い、いえ。別に感謝されるようなことは……」


咄嗟に礼を言われたので少し言葉が詰まってしまった。

とここでルミナが話を切り出した。


「お父様、実はお話があります」


「どうしたんだルミナ。言ってみなさい」


ルミナは少し緊張しながら、自分の思いを父親にぶつけた。


「私、これからも冒険者を続けます!」


「ああ構わんぞ、頑張りなさい」


意外にもクレイブ王はすんなりとオーケーした。

ルミナもその温度差に思わずキョトンとしている。


「えっと、いいんですか?」


「娘の人生を親が決めるなんて、おかしな話だろう?好きにするといい。ただし、たまに連絡はするようにな」


「ありがとうございます!お父様!」


クレイブ王はまたこちらを振り返り、笑いながら俺たちに言った。


「今後とも、娘を頼む」


2


「なんだかんだでルミナパパ、話わかるじゃない」


「ん、いがい」


部屋を出てからアリスとイリカが話す。


「あはは、私も驚いたよ。もっと反対されると思ってたから……」


「まあこれで一件落着だな」


そう言った瞬間。


「ルミナ、探したぞ!」


遠くから見知らぬ男が近づいてきた。


「帰ってきてたなら、なぜ兄に言わない。心配したのだぞ」


「ジ、ジールお兄様。すいません」


どうやらルミナの兄らしい。

あんま似てないな。

どっちかって言うと親父さん似かなぁ。

そんなことを考えてると、そのジールがこちらを見た。


「なんだ貴様ら。ああ、ルミナをたぶらかした連中か。貴様らはもう帰っていいぞ」


そう言って手で払う仕草をし、ルミナの肩を掴んだ。


「さあルミナ、お前はこんな奴らと一緒にいないで私と来るのだ」


だがルミナはジールの手を振り払う。


「お兄様、みんなは私の冒険仲間です。今の発言は撤回して下さい」


そう言ってルミナはジールを睨みつける。

ジールは少し驚いていたが、何事もなかったかのように話を続けた。


「こんな弱そうなやつら、このジールベルトに敵うはずがないだろう。こんな雑魚どもにお前を預けておけん。お前は……」


ジールが言いかけた時に、隣でブチ切れていたアリスの魔法で遠くの壁までジールは吹っ飛んで行った。


「あらごめんなさい。ルミナにゴミがついてると思って払おうとしたんだけど……まさか人だったとはね」


アリスがわざとらしい笑顔を作って言う。

ここは説明しなければなるまい。

アリスは怒ると怖いのだ。

なに?知ってる?


「……今なんか言われた気がしたんだけど」


アリスがこちらを振り返る。


「してない!何もしてないし知らない!」


俺は必死に何も知らないふりをする。

こいつの悪口センサーは妖怪アンテナ並だな。

今度からはいないとこで言うようにしよう。


「き、貴様ら……何をしたかわかっているのか……」


ジールが起き上がり、こちらを睨みつける。


「だから謝ったじゃない。しつこい男は嫌われるわよ」


悪びれる様子もなくアリスはそう言った。

だがジールも黙っていない。


「そこまで俺にいたぶられたいならやってやろう。闘技場に来い!」


また面倒な展開になってきた。


3


「……で、なんで俺がやるんだ?」


闘技場に立っていたのはアリス、ではなく俺。


「か弱い乙女に戦わせる気?大丈夫、いざとなったら手助けしてあげるから♡」


「お前、あとでビンタな」


それ以外にもいろんなお仕置きをしてやろうと考えながら、俺は剣を構えた。


「ふん、雑魚の平民が。蹴散らしてくれる」


そういうとジールが向かってくる。


「死んで詫びろ!」


だがその10分後。

そこには俺の魔法で焦げて、ずぶ濡れで、ボロボロになったジールがいた。


「じゃ、俺たち帰るから」


これ以上やるとほんとに死にそうなので、俺は別れの言葉を言って闘技場を出た。


「ち、調子に乗るなよ……平民が……」


ジールの絞り出すような声が去り際に聞こえた。


「お疲れ様悠斗!さすが私の見込んだ通りね!」


城の廊下を歩きながら、アリスが調子のいいことを言う。


「ははは、誰のせいだと思ってるんだぁ?」


「いはいいはい、ほへんらはい、はらひへよ(痛い痛い、ごめんなさい、離してよ)」


アリスの両頬をつまみ上下に動かす。


「でも、お兄様大丈夫かな」


ルミナが少し心配そうな顔をする。


「あんなシスコン兄貴のことなんか気にすることないわ。早く帰りましょう」


つねられた頬をさすりながらアリスが言った。


「もう夜だし、宿にでも行こうか」


さすがにジールの手前、ここに泊まるのはちょっと違う。

俺たちは城を後にしたのだった。



一方その頃。


「……こいつはちょうどいいな」


闘技場で倒れているジールの近くで空間が歪み、フシミが近づく。


「……誰だ、貴様……」


ジールは仰向けのまま男に問いかけた。


フシミは問いかけに答えず、懐から懐中時計を取り出し、それをジールの体に埋め込んだ。


「ぐはっ!き、貴様……何を………………」


ジールが言い切る前に、ジールは時計に吸い込まれていった。


フシミは時計を拾い上げ、闘技場を後にする。


「準備は上々。あとは………」

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