35話 冒険仲間は許さない!
1
エーデルが手配してくれた馬車に揺られながら、俺たちはルミナの故郷であるグラリアに向かっていた。
「アリス、パッキーいるか」
「ええ、二本ちょうだい」
俺は細長いお菓子を袋から二本取り出し、アリスに渡す。
「ん、おにい、ちょうだい」
「わかってるよ、ルミナも食べるよな?」
「当然食べるよ、ありがと悠くん」
みんなでパッキーを食べながら、ふとルミナに聞いてみた。
「そういやグラリアってどんなところなんだ?」
「えっと、ベルメルクよりは大きくないけど、中心街は賑わってるかな。あと魔法使いが多いんだぁ。学校の必須科目だったし」
「そうなのか。どうりで魔法が上手いわけだ」
感心していると窓の外に街が見えた。
「あ!見えた!あれがグラリアだよ」
ルミナが遠くにあるお城を指差す。
そして馬車は俺たちをそのお城まで連れていった。
馬車から降りて長い階段を上っていき、大きな扉の前で立ち止まる。
「クレイブ王、ルミナ姫をお連れしました」
エーデルが扉を開けて部屋の中に話しかける。
俺たちも後に続いて部屋に入る。
「おおルミナ、無事でよかった」
クレイブ王、ルミナの父親が椅子から立ち上がり、ルミナの元へ駆け寄る。
「お久しぶりです、お父様」
ルミナもお辞儀をして父親を迎える。
こうしてみるとお姫様なんだなって改めて思う。
するとクレイブ王が俺たちに気づき話しかけてきた。
「君たちがルミナの冒険者仲間か。娘をありがとう」
「い、いえ。別に感謝されるようなことは……」
咄嗟に礼を言われたので少し言葉が詰まってしまった。
とここでルミナが話を切り出した。
「お父様、実はお話があります」
「どうしたんだルミナ。言ってみなさい」
ルミナは少し緊張しながら、自分の思いを父親にぶつけた。
「私、これからも冒険者を続けます!」
「ああ構わんぞ、頑張りなさい」
意外にもクレイブ王はすんなりとオーケーした。
ルミナもその温度差に思わずキョトンとしている。
「えっと、いいんですか?」
「娘の人生を親が決めるなんて、おかしな話だろう?好きにするといい。ただし、たまに連絡はするようにな」
「ありがとうございます!お父様!」
クレイブ王はまたこちらを振り返り、笑いながら俺たちに言った。
「今後とも、娘を頼む」
2
「なんだかんだでルミナパパ、話わかるじゃない」
「ん、いがい」
部屋を出てからアリスとイリカが話す。
「あはは、私も驚いたよ。もっと反対されると思ってたから……」
「まあこれで一件落着だな」
そう言った瞬間。
「ルミナ、探したぞ!」
遠くから見知らぬ男が近づいてきた。
「帰ってきてたなら、なぜ兄に言わない。心配したのだぞ」
「ジ、ジールお兄様。すいません」
どうやらルミナの兄らしい。
あんま似てないな。
どっちかって言うと親父さん似かなぁ。
そんなことを考えてると、そのジールがこちらを見た。
「なんだ貴様ら。ああ、ルミナをたぶらかした連中か。貴様らはもう帰っていいぞ」
そう言って手で払う仕草をし、ルミナの肩を掴んだ。
「さあルミナ、お前はこんな奴らと一緒にいないで私と来るのだ」
だがルミナはジールの手を振り払う。
「お兄様、みんなは私の冒険仲間です。今の発言は撤回して下さい」
そう言ってルミナはジールを睨みつける。
ジールは少し驚いていたが、何事もなかったかのように話を続けた。
「こんな弱そうなやつら、このジールベルトに敵うはずがないだろう。こんな雑魚どもにお前を預けておけん。お前は……」
ジールが言いかけた時に、隣でブチ切れていたアリスの魔法で遠くの壁までジールは吹っ飛んで行った。
「あらごめんなさい。ルミナにゴミがついてると思って払おうとしたんだけど……まさか人だったとはね」
アリスがわざとらしい笑顔を作って言う。
ここは説明しなければなるまい。
アリスは怒ると怖いのだ。
なに?知ってる?
「……今なんか言われた気がしたんだけど」
アリスがこちらを振り返る。
「してない!何もしてないし知らない!」
俺は必死に何も知らないふりをする。
こいつの悪口センサーは妖怪アンテナ並だな。
今度からはいないとこで言うようにしよう。
「き、貴様ら……何をしたかわかっているのか……」
ジールが起き上がり、こちらを睨みつける。
「だから謝ったじゃない。しつこい男は嫌われるわよ」
悪びれる様子もなくアリスはそう言った。
だがジールも黙っていない。
「そこまで俺にいたぶられたいならやってやろう。闘技場に来い!」
また面倒な展開になってきた。
3
「……で、なんで俺がやるんだ?」
闘技場に立っていたのはアリス、ではなく俺。
「か弱い乙女に戦わせる気?大丈夫、いざとなったら手助けしてあげるから♡」
「お前、あとでビンタな」
それ以外にもいろんなお仕置きをしてやろうと考えながら、俺は剣を構えた。
「ふん、雑魚の平民が。蹴散らしてくれる」
そういうとジールが向かってくる。
「死んで詫びろ!」
だがその10分後。
そこには俺の魔法で焦げて、ずぶ濡れで、ボロボロになったジールがいた。
「じゃ、俺たち帰るから」
これ以上やるとほんとに死にそうなので、俺は別れの言葉を言って闘技場を出た。
「ち、調子に乗るなよ……平民が……」
ジールの絞り出すような声が去り際に聞こえた。
「お疲れ様悠斗!さすが私の見込んだ通りね!」
城の廊下を歩きながら、アリスが調子のいいことを言う。
「ははは、誰のせいだと思ってるんだぁ?」
「いはいいはい、ほへんらはい、はらひへよ(痛い痛い、ごめんなさい、離してよ)」
アリスの両頬をつまみ上下に動かす。
「でも、お兄様大丈夫かな」
ルミナが少し心配そうな顔をする。
「あんなシスコン兄貴のことなんか気にすることないわ。早く帰りましょう」
つねられた頬をさすりながらアリスが言った。
「もう夜だし、宿にでも行こうか」
さすがにジールの手前、ここに泊まるのはちょっと違う。
俺たちは城を後にしたのだった。
一方その頃。
「……こいつはちょうどいいな」
闘技場で倒れているジールの近くで空間が歪み、フシミが近づく。
「……誰だ、貴様……」
ジールは仰向けのまま男に問いかけた。
フシミは問いかけに答えず、懐から懐中時計を取り出し、それをジールの体に埋め込んだ。
「ぐはっ!き、貴様……何を………………」
ジールが言い切る前に、ジールは時計に吸い込まれていった。
フシミは時計を拾い上げ、闘技場を後にする。
「準備は上々。あとは………」




