34話 家出少女は帰らない!
1
無事に男子に戻ってから数日経ったある日、俺はルミナと買い出しに出ていた。
「ふぅ、結構買ったな」
「だねー、これでしばらくは大丈夫かも」
「まあ、これのほとんどがお前の腹の中に入るんだけどな」
買ったものの中身は、ルミナが食べたがってたものが4割程を占めている。
まあ今はお金には困っていないし、別にいいのだが。
「ううぅ…だ、だから少しでも安く買ってるでしょ?」
「一応自覚はあるんだな……」
なんてたわいもない会話をしていると、ふと3人の警備兵を見かけた。
そういや今日はやけに見るな。
何かあったのだろうか。
警備兵たちの会話に耳を傾けてみた。
「いたか?」
「いえ、どこにも……」
「この街で見たという情報があるんだ。必ず探せ!」
そう言って警備兵が走り去ると、警備兵の手元から紙が落ちていった。
なるほどお尋ね者ってわけか。
紙を拾い上げ、目を通す。
「どんなやつを探してるんだ……」
だがそこには見知った顔が。
「…………おい、これって」
その紙にはルミナの顔が。
「これ、どういうことだよ!」
隣にいた本人に問いただすと、ルミナは少し気まずそうな顔をした。
「あー、もう隠しきれないみたいだね……」
ルミナは目を泳がせて、ぽりぽりと顔をかく。
「ここじゃあれだし、とりあえず帰ろっか」
2
「で、これは一体どういうことだ?」
家に帰ってからアリスたちに一連の流れを伝え、3人でルミナに質問する。
「えっと、まず私の正体から話そうかな」
そう言ってルミナは改まって続けた。
「私は、ここから東にあるグラリアって国のお姫様なの」
「「「ええええええっ!!!!」」」
このカミングアウトは俺も予想できなかった。
普段の様子からは全く想像できない。
「お姫様って……まじか」
「ん、すごい」
「ほんと、信じられないわ……」
「えへへ、まあ小さい国なんだけどね」
俺たちが驚くと、ルミナは照れ笑いを浮かべた。
「だから親が勝手に決めるお見合いとかも多くて……まあ全部断ってきたんだけどね。もううんざりしちゃって、家出してきたの」
「ん?じゃあ今ルミナって……」
「そう。絶賛家出中」
てことは俺たち、家出少女を匿ってるってことにならない?
そうだとしたらとんでもないことだ。
「ちょっと!そういうことは早く言ってよ!」
アリスが興奮して机を叩きながら言った。
そうだ、言ってやってくれ。
「言ってくれれば、ルミナの実家にお金たかりに行ったのに!」
「いやそうじゃないだろ!」
ほんとにこいつはいい性格してる。
「あ、もしかして俺と会った時に、空腹で倒れてたのって……」
「あー、なんの計画もなく飛び出したから、何にも持ってなくて……あの時はお世話になりました」
そう言って、ルミナがぺこりと頭を下げる。
しかしどうしたものか……。
このままルミナを匿い続けるのにも、限界がありそうだな。
と考えていたその時。
ドンドン扉を叩く音と家出姫を呼ぶ声が聞こえた。
「お嬢様!ここにいるのですか!」
3
「エーデル⁉︎どうしてここが?」
エーデルと呼ばれた老女は、ずれた眼鏡を直し、淡々と話し始める。
「街でお嬢様が冒険者をやってるとのお話を聞きまして、ここに参りました」
エーデルはそう言うと俺たちに向き直り、話を続ける。
「私はエーデルワイスと申します。今までお嬢様をお守りくださりありがとうございました。さあお嬢様、早く帰りましょう」
形式的にお礼を言うとエーデルはルミナを連れて出て行こうとした。
「やめなさいエーデル、私は帰らないわ」
「何をおっしゃっているのですかお嬢様。お父様も大変心配なさっておいでですよ」
「それでも私は帰らない。これからも冒険者として生きていくわ!」
ルミナの言葉に困ったとばかりにため息をつくエーデル。
だが困るのは俺たちも同じだ。
「ルミナは渡さないわ。異論反論抗議質問は一切認めない。用がないなら帰ってちょうだい」
「アリスちゃん……」
アリスがエーデルにビシッと言い放つ。
「ん、ルミナは、ひつよう」
「まあ、せっかく今までやってきたんだ。ここでお別れなんてさせないわな」
「イリカちゃん、悠くん……」
俺たちの言葉にルミナが目を潤ませた。
するとエーデルは深々とため息をついて渋々言った。
「……わかりました。ですがせめてお父様にはお話した方がよいかと」
「わかったわ……みんなも来てくれる?」
「当然だろ!」
「ん、いく」
「当たり前でしょ!」
こうして俺たちは、ルミナの故郷であるグラリアに向かうのだった。




