33話 元に戻れない!
1
ルミナに勧められた服の会計を済ませて、店を出る。
やっぱりスカートは落ち着かないが、背に腹はかえられないのでこのまま行くことにした。
「とりあえず昨日行った森に行けばいいんだよな?」
振り返ってアリスに尋ねる。
「ええ、そのはずよ。というより、その格好で男の喋り方は違和感しかないわね……」
アリスは地図を広げて言った。
「だよね、悠くんその服似合いすぎだよー」
ルミナが笑いながら言う。
「あ、あんま見んなよ。は、恥ずかしいだろ……」
たしかに自分でも、鏡を見て似合ってると思ったけども。
そう言うとあいつらを喜ばせてしまうから、あえて言わないけど。
アリスが地図から目線を外して俺を見る。
「ほんと、びっくりするほど似合ってるわねー。いっそ女の子のままでもいいんじゃない?」
「いい訳あるか!」
俺の声が森に響き渡った。
すると東の方から地響きが聞こえた。
「!、近いぞ」
茂みをかき分け、地響きのした方へ向かう。
「いた、あいつらだ!」
そこには昨日倒したスパイダーモンキーたちがたくさん。
そしてその中で一番異彩を放っていたのは。
「これもう猿の域超えてるだろ……」
それはもう巨大なゴリラだった。
「ちょっと、あんなの相手にするの?」
茂みの中でアリスが抗議した。
「あんなのと戦ったら一発で死んじゃうわよ!」
「でもアリスちゃん。ほら、あそこにあるきのみって……」
ルミナが指差す方向には、たしかにスパイダーモンキーたちが集めたきのみの中に、目当てのウヴァの実があった。
「たしかにそうだけど、何もあそこのやつを取らなくてもいいじゃない。別のやつを探しに行きましょう」
「でも貴重なやつなんだろ?だったら今取った方がいいだろ」
「でもどうやって取るのよ。何か考えでもあるの?」
「大丈夫、一応策はある」
2
俺は茂みを使って回り込み、猿たちの裏へ着いた。
今俺の姿は周りからは見えていない。
というのも、ルミナの魔法で俺の姿を光の屈折を利用して、見えなくなっているだけなのだ。
今回は倒すのが目的じゃないし、きのみだけ取れれば十分だ。
そろそろと近づき、あと5メートルまで来た。
「もう少し……」
あと3メートル。
「あと……ちょっと……」
1メートル。
そしてようやく。
「よし、取れた!」
「悠くん危ない!!」
ルミナに呼ばれて振り向くと、スパイダーモンキーたちが飛びかかってきた。
どうやらバレてしまったらしい。
「くっ、ルミナ頼む!」
俺は何とか隙をつき、ルミナに向かってきのみを投げた。
ルミナは危なっかしげにきのみをキャッチした。
「えっ⁉︎渡されても……」
するとスパイダーモンキーたちは、ルミナに向かって移動し始めた。
「き、来たっ!アリスちゃんお願い!」
今度はアリスにきのみが。
「ちょっと、私に回さないでよ!」
当然のごとくスパイダーモンキーたちもアリスの方へ。
「イリカ、お願い!」
そしてきのみはイリカの方に。
「ん、おにい、いくよ」
「おう、どんと来い!」
俺はイリカからのパスを取るために構えた。
「ん」
だがイリカから放たれたパスは、俺の想像を超える速さだった。
「ふぐっ!!」
結果顔面キャッチになってしまった。
「わっ!悠くんしっかりして!」
「まあ結果的にきのみは食べたんだし、帰りましょ」
「ん、かえろ」
みんなが口々に言う中、俺は意識を失った。
3
「そりゃ!」
「ぐはっ!死ぬ!!」
アリスのチョップで目がさめる。
だんだん起こし方、雑になってきたなぁ。
「あれ、いつの間に家に帰ってきたんだ?」
周りを見渡すと俺は自分の部屋のベッドに寝ていた。
「ああ、悠斗が気を失った後テレポーテーションしたの。最近覚えたのよ」
「そりゃ便利なこった」
俺はまだ女子の姿だったが、あの時確実にきのみを食べたし、まあ明日になれば治るだろう。
これで女子の身体ともおさらばだ。
「女の子の格好が名残惜しいんじゃない?」
アリスが心を読んだかのように聞いてきた。
「バカ言え。もうこりごりだよ……」
するとルミナとイリカが扉を開けて部屋に入ってきた。
「おまたせ、ご飯だよ!」
「ん、おにい、おきたの」
イリカが寄ってきて、布団にダイブした。
「ん、これとも、さよなら」
「胸を見て言うな。てか、重いんですけど……」
胸をぷよぷよ触るイリカに言うと、横にいたアリスの目がギラッと光る。
「あら悠斗、ケンカ売ってんのかしら?」
「違う、イリカの方だ。勘違いすんな」
「ふん、イリカはともかく、何で悠斗まで胸があるのよ。私だってもっと大人になれば……」
どうやらアリスは、そこにコンプレックスがあるらしい。
怖いからいじるのはやめておこう。
「さ、さあ、せっかくのご飯だ、みんなで食べよう」
何とか話をそらしてみんなでご飯を食べる方向に持っていく。
「うん、今日はきのみで作ったケーキだよ!」
ルミナが嬉しそうに言う。
「イリカちゃんも手伝ってくれたの」
「ん、きのみ、持ってきた」
イリカが寝っ転がりながら言った。
「へぇ、イリカが持ってきた……」
一瞬の静寂。
イリカを除いた俺たち3人の頭の中に「デジャビュ」という言葉が浮かんだ。
「ん、たべないの?」
「い、いや……あの……」
思わず口ごもってしまう。
「わ、私!今食欲ないから!」
アリスが真っ先に部屋を飛び出す。
「私も!えーと……キッチン!キッチンが気になるからっ!!」
ルミナもよくわからない言い訳をして出ていった。
残るは。
「はぁ、わかってたけどね……」
この後ケーキは悠斗が美味しくいただきました。
※ウヴァの実は入っていませんでした。




