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呪われ転生じゃ死にきれない  作者: 鳴神 春
36/46

31話 あるべきものがない!

1


指輪の件がひと段落し、数日経ったある日の朝。

うっすらとカーテンから漏れる光で目が覚める。


「…………」


いつも通りの朝。

なんの変化もない。

だが……。


「………?」


仰向けで寝ていた俺は、ふと呼吸に違和感を感じた。


(あれ、なんか息苦しい……)


どうやら胸のあたりに何か乗ってるらしい。

まだ覚めきってない目を下ろすと、そこにはシャツの中で窮屈そうにしている柔らかそうな双丘が……。


「……って、えええええ!!」


見慣れぬ光景に思わず叫ぶが、その声もいつもの声じゃなかった。


「これってもうおっぱ………てか俺の声、どうなってんだ⁉︎」


聞けば聞くほど女子の声である。


「まさか…………」


感覚でわかっていたが、一応股に手を当て確認する。

だが。


「な、無い…………」


そこには男の証が完全消滅していた。

ベッドから降りて、鏡の前で自分の姿を前や後ろ、横などあらゆる角度から見る。

髪も若干伸びているような気がする。

細い手足とは裏腹に、出るところはしっかり主張している。

どこからどう見ても女の子だ。


「………俺って、結構可愛い?………って言ってる場合か!!」


思わず自分自身に突っ込んでしまった。

すると突然ドアがノックされる。


「悠斗ー、まだ寝てるのー?早く起きないと朝ご飯冷めるわよー」


アリスが待ちきれずに呼びに来たらしい。

まずい。

非常にまずい。


「あー、ごほん。す、すぐに行くから……」


出来るだけ低い声を出すように努めた。


「この声……悠斗、じゃない……?」


だが、あっさりバレてしまった。

わかったはいたけどやっぱり無理があるか。


「ごめん、開けるわね」


そう言ってアリスが急に扉を開けるものだから、他の手を考える間も無くアリスと目が合ってしまう。

ここで改めてこの状況をアリス側から客観的に見てみよう。


・男(俺)の部屋

・鏡の前で立ち尽くす知らない女子

・女子のパジャマは少しはだけている

・男(俺)は不在

……etc


そんな状況である。


「………………」


「………………」


そりゃお互い黙るしかない。

ここはもう観念した方がいい。

恥ずかしいが諦めて事情を話すことにしよう。


「えーっと、アr」


「あの、悠斗はどこ?」


言いかけたところで、アリスに阻まれた。


「え?」


「あれよね、あなたと悠斗は、その…………い、一夜を共に過ごしたとか、そういう関係なのよね?」


もじもじしながらアリスが続ける。


「べ、別に悠斗がどんな人と付き合うかなんて、私は気にしないけど……」


どうやら女の姿の俺を、男の俺の恋人かなんかと勘違いしているらしい。


「あの、悠斗は俺なんだけど……」


「ああ、悠斗にそう言えって言われたのね。かわいそうに。あいつ見つけたらとっちめてやるんだから」


全く話を聞いてくれない。

どうしようかと思っていると再びドアがノックされる。


「アリスちゃん、悠くんまだ起きないの?」


「ん、はやく、たべよ」


帰ってこないアリスを心配して、ルミナとイリカも部屋に来てしまった。


するとアリスは俺を指差し、高らかに宣言した。


「聞いて驚きなさい!悠斗はここにいる女の子と一晩一緒に過ごした後に、どっかに雲隠れしたのよ!」


「えっ…………ええええええええ!!!!」


ルミナの声も負けじと響き渡る。


「え、じゃあ悠くんはこの子と……」


「悠斗はこの部屋にいるはずよ。悠斗、出てきなさい!」


いや、最初から君らの前にいるんだけど。

てかそろそろ誤解を解かないと、俺の悪評が広がってしまう。


「ふふふ……悠斗、そこにいるのはわかってるんだからね……」


誰もいないはずのクローゼットをノックして、アリスが言う。

もはや正気を失っている。


「やめろアリス!そこに悠斗はいない!」


後ろから羽交い締めにしてアリスを止める。

このままだと部屋をめちゃくちゃにされかねない。


「離して!今に悠斗がそこから『バレた?』って言って出てくるんだから!」


「んなわけあるか!ルミナも止めてくれ!」


アリスを止めながら振り返るが、ルミナはルミナで大変だった。


「悠くんが………別の女の子と……」


あまりの情報量の多さに、脳がついていけなくなっていた。


「ああもう、どうすれば……」


その時、後ろからイリカに抱きつかれた。


「ん、おにいの、匂い」


そして俺から離れて、イリカが一言。


「ん、この人、おにい」


「「ええええええええええ!!!!!!」」


だから最初から言ってるだろ。


2


「しっかしまた見事に女の子ね……」


アリスがまじまじと俺を見つめる。


「あんまり見んなよ、恥ずかしい……」


思わず口元を手で隠す。

イリカはぴょんぴょん跳ねながら、俺の下乳をタッチしていた。


「ん、ぽよん、ぽよん」


「やめんかい!」


イリカを掴んでベッドに放り投げる。

イリカは綺麗な弧を描いて、ベッドにうつ伏せで着地した。


「ん、もふもふ」


両手両足をバタバタさせて、ベッドを泳ごうとしていた。


「それより、悠くんはどうしてこうなっちゃったの?」


「俺が一番知りたいよ……」


ルミナの問いに、自嘲気味で答えるしかなかった。

一体何があったのか。

自分が一番焦っているのだ。

するとアリスがポンと手を打ち、話しだした。


「もしかして、昨日のあれじゃない?」


「昨日……?」


俺は未だにピンときてなかった。


「ほら、昨日の依頼で……」


俺は昨日の依頼を思い出してみた。


3


昨日は近くの森でスパイダーモンキーの討伐をしていた。


「ゆ、悠斗〜助けて〜。糸が絡まって……」


アリスがスパイダーモンキーの糸に引っかかり、身動きが取れなくなっていた。


「わかった、すぐ行く!」


残りは数匹だ。

イリカたちに任せても大丈夫だろう。


「今火は使えないから、時間がかかるぞ」


「わかったわ、お願い」


アリスに絡まった糸を素早く巻き取っていく。

多少時間はかかったものの、何とか巻き取ることができた。


「よし、これで大丈夫……」


「悠斗!後ろ!」


後ろを振り返った時はもう遅かった。

イリカたちから逃れた一匹のスパイダーモンキーが、俺に糸を巻きつけていた。


「へぶっ!!」


盛大に顔面から地面に落ちた俺が仰向けになる頃には、もうスパイダーモンキーはイリカに倒されていた。


「ん、おにい、起きて」


「無茶言うな、糸ほどいてくれよ」


イリカに声をかけたのだが、実際に解いてくれたのはルミナだった。


「あいつどこ行ったんだ……」


「きのみ取りに行ったよ。悠くんに食べさせるんだってさ」


ルミナがにこにこしながら言った。


「えぇ……別に今じゃなくても……」


するとイリカが変なきのみを持ってきた。


「ん、おにい、あげる」


「いや、まだ動けないんだけど……」


「ん、大丈夫、食べさせて、あげる」


そう言ってイリカが俺の顔にきのみを押し付ける。

見れば見るほど怪しい。


「ちょっと待って⁉︎てかそれ本当に食べても大丈夫なのか?食べたらゴム人間になったりカナヅチになったりしない?」


しまいには、仲間を集めて大秘宝を探すかもしれない。

だがイリカはそんなことお構いなしだ。


「ん、いいから」


「ちょっと待っ……んぐ⁉︎」


結局その怪しげな実を食べてしまった。


「まずっ!なんか、スイカの食べられないとこみたいな味がする!これダメなやつじゃないか?」


「だ、大丈夫悠くん⁉︎」


ルミナが糸をほどき終わり、背中をさすってくれた。

その後町に戻った俺は、次の日には女の子になっていた。


「…………」


現在、女の俺は昨日ことを思い出し、今回の元凶に向かってツカツカ歩いて行った。

そして両頬をつまんで叫んだ。


「お前のせいじゃねーか!!」


頬をつままれたイリカの顔は、やっぱりよくわかっていない顔だった。

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