27話 こんな人知らない!
1
「見つけたぞ!沖谷悠斗!!」
そう言って声の主は俺たちの方につかつか歩いてきた。
年齢は俺と同じか少し下くらいだろうか。
汚れた灰色のフードを被り、腕には傷が数箇所あった。
そして俺たちの前で立ち止まり、ぶつぶつ話し始めた。
「ようやく……ようやく会えたわけだ………」
「あの、ちょっと待っててくださる?」
アリスが少年に断りを入れて、少し距離を置いたところにみんなを集める。
(誰なのあいつ、なんか悠斗のこと知ってるみたいだけど)
(いや、俺知らないし。あんな危なっかしい奴、俺の知り合いにいないから)
(で、でもあの人、悠くんの名前呼んでたし………)
(ん、叫んでた)
(呼ばれただけで知り合いとは言わない。あっちが一方的に知ってるだけだ)
(とにかく、あっちが悠斗を指名してるんだから悠斗がなんとかしてきてよ。ちゃんと元いた場所に返してきなさい)
(捨て犬かなんかかあいつは!んな無茶苦茶な………)
「おい、相談は終わったか?」
少年が痺れを切らして俺たちに声をかけてきた。
「あー……えっとー…………」
俺が言い淀んで後ろを見ると、アリスが目線で「何とかしなさい」と訴えてきた。
はぁ、やだなぁこの役。
「…とりあえず、どちら様でしょうか?」
観念して俺は声をかける。
「俺の名前は、不知火 純だ」
「ん?しらぬい?それって……」
どう考えても日本人の名前だ。
てことはまさか……。
「気づいたか。俺もお前と同じ日本人だ」
2
「お、お前も日本人だったのか……」
まさか俺以外にも転生してきた日本人がいたなんて。
その事実に俺は驚きを隠せなかった。
だがよく考えてほしい。
容姿は変わっているが、同じ転生者であるアリスが俺の後ろにいるじゃないか。
そう思うと、なんか驚かなくなってきた。
「そっかぁ、日本人かぁ」
「……おい、さっきまで驚いてたのに、なんだか急に冷めたな」
俺の露骨な態度がバレてしまい、不知火はなんだか微妙な顔になった。
「それで、その不知火純は俺に何の用だ?」
俺がそう尋ねると、不知火は高らかに宣言した。
「俺は、お前を倒しにきたんだ!」
「えーめんどくさいー」
「即答するな!」
ほんと、なんでこう面倒なことに巻き込まれるんだ。
「なんで俺なんだよ。もっと他にいるだろ」
「俺の目的が、俺以外の転生者を倒すことだからだ」
「いや、俺以外の転生者ならこっちに………」
そう言ってアリスを紹介しようとすると、アリスがいきなり腕をつねってきた。
やめろってことか……。
こいつ、関わりたくないからって…………。
「でも、なんでまた転生者を倒すのが目的なんだ?」
アリスに根負けした俺が話を続ける。
「ふん、知れたこと」
そう言って不知火が振り返りながら言った。
「この世界の【唯一の転生者】って響きが、かっこいいからだ!」
「ええ、そんな理由⁉︎」
真面目な顔して何言ってんだこいつ。
「そのために俺は、遠い町から噂を聞きつけお前を倒しに来た!」
そんなこと俺は知らない。
どこから来ようと俺の対応は変わらない。
「だが途中で何度も死にかけるわ、身分証がないだけで門番に吹っ飛ばされるわで、どれだけ大変だったか……」
それこそ本当に知らない。
なんでこいつが身分証を持ってないのが、俺のせいにされるんだ。
ん?そういえば、俺もあの正門通ったけど、別に身分証なんて出してないぞ?
こそっとルミナに聞いてみる。
「なぁ、俺の時は身分証見せなかったんだけど?」
「悠くんの時は、おじいさんのおかげで出さなくてよかったんだよ」
「そうだったのか。おじいさんすげーな」
俺があのおじいさんとルミナを助けてなければ、俺も門番に吹っ飛ばされてたわけだ。
おじいさん様々でした。
3
「ということで、お前は倒させてもらう。恨むならお前をこの世界に転生させた神を恨むんだな!」
そう言って不知火は俺に斬りかかってきた。
俺はすかさず剣で対抗し、隙を見て魔法を放ち、距離をとった。
「ふっ、次は当てる」
「なるほど、口だけじゃないってことか」
不知火の剣を受け止めたのは良かったが、手の痺れがまだ取れない。
相当重い一撃なのだろう。
「死ね!!」
不知火は再び斬りかかろうとした。
だが。
「待ちなさい!」
アリスの魔法が不知火の行く手を遮る。
「邪魔をするな!」
「あなたこそやめなさい!大体、仲間がやられそうなのに、指をくわえて見てるだけなわけないでしょ!」
不知火が吠えるがアリスも負けじと返す。
「それに、あなたに悠斗は殺せないわ」
「何、どういうことだ!」
不知火の質問に答える代わりに、アリスとルミナの魔法がとぶ。
不知火が魔法を避けた先に、イリカが盾で突進する。
盾の上部に当たり、打ち上げられた不知火を俺が魔法で火柱を作り、閉じ込めた。
「なるほど、魔法が使えるのはその指輪のおかげか」
火柱から脱出した不知火が、燃えたフードを捨て、俺の魔法のからくりを見破った。
「しかもただの指輪ではないな。どれ、ちょっと見せてもらおうか」
不知火が俺に近づき、右手の指輪に触れようとする。
「あいにくだけど、これは俺の指から外れないんだよ」
俺は魔法で牽制しながら言った。
だが不知火は一瞬で間合いを詰め、俺の右手に触れた。
「問題ない。奪ってしまえばいいのだから」
不知火が不敵な笑みを浮かべそう言うと、俺から離れて拳を突き出した。
「はあっ!」
不知火が声を出した瞬間、なんだか不思議な気持ちになった。
まるで何かが抜け落ちたような。
だがその原因は右手を見てすぐにわかった。
「っ!指輪が……ない!!」




