24話 ダメになんかなってない!
1
〜before〜
早朝。
まだ太陽が昇って間もない時間。
前の世界から学生として、毎日規則正しい生活を送っていた俺の朝は早い。
朝起きてまず最初にするのは早朝の散歩。
朝の澄み切った空気が俺の体を目覚めさせる。
前の世界からの習慣であったが、こっちの世界に来てからこの散歩が楽しく感じる。
30分ほど近所を歩いて家に帰る。
「おはようアリス」
この時間になると、庭の花に水をあげるためアリスが起きてくる。
彼女のこれもまた、俺の散歩と同じ日課なのだろう。
「あら、おはよう悠斗。散歩でしょ?お帰り」
アリスも挨拶を返す。
奇遇だろうが、2人の転生者はどちらも朝は早起きだ。
家に入って朝食を作る。
今日は昨日から仕込んでいた、フレンチトーストを焼いた。
偶然にもこちらの世界は前の世界と似た食材が多く、俺自身相当助かっている。
「おはよう悠くん」
匂いにつられたのかルミナがキッチンに入ってきた。
「おはようルミナ」
「今日は悠くんが朝ごはん担当だっけ?えっと、なんだっけ、ふれんつ?とーすと?」
「フレンチな」
「ああ、ふれんつフレンチかぁ」
「おい、どこと取り替えてんだ、フレンチトーストだ」
あははと笑うルミナに突っ込みを入れ、トーストをひっくり返す。
たまにわざとやってるんじゃないかと思うくらいのボケをかますもんだから、タチが悪い。
「よしできた。イリカ呼んでくるよ」
意外かも知れないが、イリカは一番起きてくるのが遅い。
朝は弱いが午後からエンジンがかかり始める。
故に夜更かしもしばしばしてるらしい。
まだ13歳のくせに夜更かしなんて、いつかビシッと言わなきゃいけないな。
「ほらイリカ、早く起きろー」
ドアを2、3回ノックして、中のニート少女を起こしにかかる。
「ん、起きたく、ない」
部屋から気力のないイリカのだるそうな声が聞こえた。
俺は部屋の扉を開けて、イリカの布団に摑みかかる。
「いいから起きるんだよ!今日もクエスト行くんだぞ!」
「ん、いや」
「ってぇ!布団剥がされたからって噛みつくな!」
手にくっきり歯型がつくまで噛まれた俺は、なんとかイリカを起こすことに成功する。
みんなが朝食を食べ終えた後はギルドに行って依頼をこなす。
「ちょっ、待って、死ぬ!」
今日の依頼はゴーレム退治。
ゴーレムの拳に押しつぶされそうになり、俺はまた例のごとく死にそうになる。
「ん、おにい、いくよ」
イリカが助走をつけてゴーレムの顔に突進する。
そのおかげで拳が少し浮く。
「くそっ、重いわ!」
俺はその隙を逃さず、魔法で追い討ちをかけながら脱出する。
「これでもくらいなさい!」
アリスの魔法も決まり、ゴーレム退治は成功した。
達成報告をした後は、家に帰って明日のために疲れを癒すため早めに就寝する。
こうして沖谷悠斗の冒険者としての1日は、こうして過ぎていくのだった。
2
〜after〜
朝9時頃。
「ん、おにい、起きて」
俺の部屋の扉をイリカが叩く。
「んあ、もう朝か……」
「ん、アリス、が、怒ってる」
アリスの話を出されるとめんどくさい。
あいつ怒ると怖いし。
「わかった、今いくよ」
そう言ってイリカを帰した後に二度目を決め込んだ。
こうして今日も俺の1日はこうして………。
「勝手に終わらせるなぁ!!」
アリスが扉を開けながら叫んだ。
ほら、怖いだろ?
3
なぜ以前と生活が変わったのか。
理由は俺自身もわかっていた。
「悠斗、いくらお金が入ったからってだらけすぎよ。あくまであなたは冒険者なのよ?」
そう、俺は以前事件を解決したとかのお礼でベルメルク純金貨300枚、日本円にして約3000万円を手にし、ちょっとした金持ちになったのだ。
「わかってるけどさぁ、お金持ちになったおかげで呪いもまた一個解けたんだし、呪いもあと2つ、リーチみたいなもんだよ」
それからと言うもの、この異世界に未練を残さないようにとだらけきった生活をしている。
「これは…何とかしなきゃ……!」
アリスがぐっと拳を握り、何かを決意した。
「悠斗!こっち来て!」
アリスが俺の腕を引っ張って部屋から出す。
そのままルミナたちのいるリビングに連れて行かれる。
「2人とも、悠斗がダメになったわ!何とかしないと!」
「おい、いくらなんでもそれは怒るぞ」
目の前でダメ宣言された俺を無視し、アリスが続ける。
「というわけで、第1回!チキチキ!悠斗を元に戻そう大会〜!」
アリスの掛け声でなんかよく分からん大会が始まった。
もう部屋に帰って寝てもいいかな……。




