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呪われ転生じゃ死にきれない  作者: 鳴神 春
25/46

20.5話 私の心が分からない!

1


それはある寒い日のこと。


「はい、どうぞ」


私はお茶の入ったマグカップを悠斗に渡す。


「ああ、ありがとうアリス」


悠斗は私から受け取ったマグカップに口をつけ、あちちと言いながら少し飲む。


「悠斗、あなた呪い解かなくていいの?」


私は唐突に悠斗に聞いてみる。


「・・・あん?」


悠斗は眠いのか、機嫌が悪そうに返事をする。

前に聞いた時も、あんまりいい顔はしなかったわね。

まるで、宿題を急かす母親の気分だわ。


「・・・今思ったんだけど俺の後悔ってなんだろな」


「はあ?」


なにわけわかんないこと言ってるの?

悠斗はたまにこうなる。

変に開き直ったり屁理屈言ったり……。

時々イラッと来る時もある。

思わず呆れ顔をすると、悠斗が反論してきた。


「だってだいぶ前にしたお願いだぞ?もう忘れてるって」


忘れてるって、あなたねぇ........。

自分のことでしょうが………。


「呪いなんでしょ?解かなかったらなんか大変なんじゃない?」


私はため息混じりで話す。

悠斗はそもそも、呪いというものをちゃんと分かっているのかしら。

死に対して全く危機感がないわ。

まあある意味、それが悠斗の強さなのかもしれないけど。

もう少し、自分についてよく考えてほしいものだわ。


2


「そういや俺、昨日2つ呪い解けたんだよね」


次の日の朝にドヤ顔で私に話してくる悠斗。

まるで珍しく宿題をやってきた小学生が、親に褒めてもらいたい顔をしていた。

朝からめんどうね。


「それはよかったわね」


私が褒めるのもなんか違う気がするし、そっけない感じで返事をした。


「それで、呪いはあといくつ残ってるの?」


「えっと、4つだな」


悠斗が指で数えながら言った。

というか、それくらい覚えときなさいよ。


「だいぶ減ったわね。でもそれって悠斗の力も弱まってるってことよね」


前にもこんな話をした。

呪いを解けば今まで死ななかった悠斗は死ぬし、魔法も自由に使えなくなるかもしれない。

私にそう言われた悠斗は少し考えて。


「うーん、まあでも大丈夫でしょ。別にすぐ死ぬ訳じゃないし、むしろ普通に戻れるんだから、プラスじゃない?」


プラスなのはあなたの思考だけよ………。

もしくはとっくにどこかへ飛んでったあなたの頭のネジの穴がプラスなんでしょうね。

頭の中で皮肉を言ってると、悠斗が思い出したかのように私に話しかけてきた。


「そういえばアリス、今日この後付き合ってくれないか?」


「いいけど、どこに行くの?」


「ちょっと遠くに行きたくて。ほら、アリスが昨日言ってた『旅行に行く』だっけ?たしかにやってみたいことの1つだし、この世界を冒険してみたいし」


こういうところもイラッとする。

なにも考えてないようなフリして、実はすごく周りに気を遣ってるところが。

私が昨日言ったことをしっかり覚えてくれて、実行しようとしてくれてる。


「……バカ」


「ん?なんだって?」


「なんでもないわよ、早く行きましょ」


ほんと、鈍いんだから。


3


ギルドに向かう途中、私は悠斗に昨日の呪いのことを聞いていた。


「で、どうやって解いたの?」


「えー、あの、そのー」


「何よ、なんかやましいことでもあるの?」


悠斗の歯切れの悪い返事に、私はイラッとした。


「はぁ、アリスに隠しても仕方ないか。実は………」


ためらいがちに悠斗は昨日のことを話し出した。

両親の今を見てきたこと。

ルミナに昔の話をしたこと。

いなくなった親友が見つかったこと。


「―とまあ、こんな感じなんだけど」


「なるほどね」


ルミナったら、私とお風呂で別れた後にそんなことしてたのね。

あの子ってば意外に大胆。

それなら私も聞いちゃおうと、悠斗に核心を突く質問をした。


「それでルミナとはどこまでいったの?」


「ぶふっ!!」


私の質問に悠斗は盛大に吹き出した。


「だって悠斗の部屋まで行ったんでしょ?どうなのよ、進展はあったの?」


「べ、別に今は何もねーよ」


「へぇー、『今は』ねぇ」


この感じだと悠斗の方も脈アリね。


「なんだよ、もういいだろ」


顔を赤くさせながら悠斗が話を切り上げた。


「ちぇ〜つまんないの、もっと聞かせなさいよ。私そういう話、大好きよ?」


「はぁ、お前ほんといい性格してるよ」


悠斗は苦笑いで言った。

2人のことは、無駄に応援してあげるつもりだ。

悠斗への嫌がらせのために。

でももし2人がそうなった時。

私は素直に2人を祝福できるだろうか。

そう考えると、胸の辺りがチクリと痛む。


「どうしたアリス、急に黙って」


悠斗が黙る私に声をかけた。

変に思われないように努めて笑顔で答えた。


「……なんでもないわ、行きましょう」


自分について考えてないのは私の方だった。


(私ってば、ほんと最低ね)


ギルドに着くまで、この痛みは消えなかった。

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