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呪われ転生じゃ死にきれない  作者: 鳴神 春
18/46

15話 女心がわからない!

1


女の子は薄着より厚着の方が実は可愛いんじゃないか、そう思うような季節になった。

街は明日からの秋の収穫祭に向けて、広場に舞台を設置したり飾りを作ったりなどわなかなかの賑わいを見せていた。

だが俺は、それどころじゃなかった。

アリスに阻まれはしたものの、この祭りでルミナとこっそり2人きりになる約束をした。

ここまで言われて気づかないほど、俺は鈍感じゃない。

むしろ敏感な方だ。

敏感で過敏で、過剰に反応してしまう。

だから祭りを明日に控えた今日もベッドの上で悶々としていた。


「ふふ、いよいよ明日〜、俺にもリア充イベント〜ふふーん♪」


とまあ、こんな感じで1人で浮かれていた。

彼女いない歴=年齢だった俺に、こんな胸踊る出来事があったのだ。

浮かれないわけがない。


『ずいぶん楽しそうだね』


脳内で声が聞こえる。


(あ、ルウか……)


浮かれてるのが急に恥ずかしくなって冷静になる。


『ははっ、別に浮かれててもいいんじゃない?むしろ君にはうまくいってほしいし』


(へいへい、そりゃどーも)


『しかし君も大変だね』


(ん?ああ、たしかに冒険者稼業は大変だけどな)


『うん、それもそうなんだけど……まあいっか。じゃねー』


それ以上ルウは話してこなかった。

俺も明日のために、寝ることにした。

すまない、世の非リアたちよ。

俺は一足先にリア充への道を行く歩ませてもらう!

固い決意を胸に抱き、俺は眠りへとついた。


2


次の日の朝、祭り当日。

まさに秋晴れと呼ぶにふさわしい空模様だった。

思わず教科書に載せたいくらい。

俺たち4人は祭り会場に来ていた。


「さて、せっかくの祭り楽しむわよ!」


アリスが満面の笑みで言った。


「そういえばこの世界の祭りって何があるんだ?俺、いちご飴食べたい」


前の世界でも、必ず俺はお祭りでいちご飴を買っていた。

ここでもあればいいのだが。


「ふふーん、そりゃあね、ええ、はーい」


「あるかどうか聞いてんだけど」


なんでごまかしたか意味わからん。

するとイリカが俺の袖を引っ張ってきた。


「ん、おにい、アップルパイ、食べたい」


「お祭りにアップルパイ?あんのか?」


俺は耳を疑ったが、イリカが指差す方を見ると、たしかにアップルパイの文字といい匂いが。


「あ、あるのか……アップルパイ」


「結構日本の祭りにないものが多いわよ。あっちにショートケーキとかあるし」


「そりゃ食いづらそうだな」


「でしょ?だけどあそこにテーブルも設置されてるから、そこでみんな食べるのよ」


なんか色々言いたいことがあるがまあ異世界だし、ここで突っ込んだら負けかなって思う今日この頃。

とりあえずみんなバラバラになり、思い思いのものを買った。

残念ながらいちご飴がなかったので、俺はショートケーキを食べることにした。

大きないちごがてっぺんに盛り付けられ、屋台で作られたケーキのくせにめちゃくちゃ美味そうだ。

4人揃ったところでそれぞれ食べ始める。

控えめに言ってすごくうまかった。

クリームもさることながら、中のいちごも生地とマッチしていた。

するとアリスがニヤニヤしながら、いちごを横取りしてしまい、そのまま食べてしまった。


「お前一番いいとこ食うんじゃねぇよ!」


「ごめんごめん、代わりにモンブランちょっとあげるから」


アリスがそう言って、フォークに乗せて差し出したモンブランを食べた。

モンブランを食べ、数秒考えたが……


「でもやっぱりいちご食べたかった!これでチャラにならないから!」


「あー……やっぱり?」


あたり前だ。


3


「ごめんなさい、お詫びに何か買ってきてあげるわ」


「ん、イリカ、も、行って、くる」


2人はそう言って屋台の方に歩いて行った。

残ったのは俺とルミナのみ。


「……えっと、これで2人きり、かな?」


ルミナがおずおずと聞いてくる。


「やめろ、言葉にするとなんか恥ずい」


そんなにもじもじされると、こっちがなんかもうたまらんからやめて下さいお願いします。


「だ、だって……」


「だってじゃありません。ダメなものはダメです」


「むー……」


可愛く頬膨らましてもダメ。


「それはそうと悠くん、アリスちゃんにあーんしてもらって嬉しそうだったね」


「へ⁉︎い、いや、別に嬉しかったわけじゃないから!違うから!」


「んーほんとかなぁ」


さっきのことを問い詰めてくるルミナ。

べ、別に女の子に食べさせてもらって嬉しいわけじゃないんだからねっ!

と、心の中で誰も得をしないツンデレをしているとルミナが頬を染めながら話し出した。


「じ、じゃあ、私も悠くんに…食べさせてあげる」


「え?」


ルミナの突然の提案に俺は思わず固まってしまった。


「な、なんで驚くの?私にあーんしてもらいたくないの?」


「い、いやじゃないです…けど……」


ルミナがケーキをフォークで刺し、そのままこちらに向けてくる。

なんだろう、アリスの時と違ってドキドキする。

心臓の音がうるさかったが、なんとかケーキを食べる。


「…ど、どうだった?」


「やべ、味わかんない」


あんなに甘かったケーキの味が全くしなかった。


「もう、せっかく食べさせてあげたのに、味わかんないってどうなの?」


「ごめんて、じゃあ俺も食べさせてあげるから」


「ふぇ⁉︎」


ルミナが変な声を出した。

こっちも少しからかってやろうと思っただけなのだが。


「え、えっと……じゃあ……」


「はーい2人ともそこまで」


ルミナが悩んでいると、アリスが間から割って入ってきた。


「私たちのいない間に何してたの?」


「べ、別に、何も…」


「ふーん、そう、へー」


冷静を装い返事をしたが、アリスには見透かされてるようだった。

てか俺も冷静装えてないな。


「まあいいわ。それよりそろそろ帰りましょ、寒くなってきたわ」


「ん?ああ、そうだな」


たしかに風が少し冷たく感じる。

俺たちは凍える前に帰ることにした。

結局、俺はルミナと何の進展もなかった。

非リアのみんな、俺はまだもう少し、君たちの仲間のようだ。


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