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邪眼物語  作者: 幸明
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第三話 村にて

村に着いた俺は愕然とした。

どの家も小さい小屋というような感じで、現代日本の家屋ではない。

土壁の家や木造の家屋などが混在しているが、その様はまるで中世ヨーロッパの農村に迷い込んだ感じだ。家には窓にはガラスはなく、つっかえ棒をした木窓がついていた。

また、あちこちから鶏の鳴き声と思われる音がする。

数人の村人が外にいるが、ルーフィと同じような格好をしていた。


「どいてくれ!病人なんだ!」


ルーフィが先頭を歩き、俺はそのあとをついていく。

他の村人は、警戒しながらこっちを見ているが、先頭がルーフィなので特に邪魔することはしない。


”うう、申し訳ない・・・。”


今更、妹は大丈夫だといったところでルーフィは信用しないだろう。

それほど、初めて見る人にとっては衝撃的な光景なのだ。


”これも、あいつのせいなんだが・・・。”


今ここにはいない”妙子”を恨みたい気持ちで一杯になる。


ルーフィが一軒の家の前で立ち止まると、そこには黒いローブのような服を着た長身で細身の男が立っていた。


「アーヴィが駆け込んできたから何事かと思って待っていたが、ルーフィその人たちは?」

「森の中で会った。迷子らしい。それより、そこの女の子が鼻血を出して倒れたんだ!」

「ふむ?とりあえず見てみよう。寝台に寝かせなさい。」


今更”ほっといても大丈夫です”とは言えず、黙って指示に従う。

家の中は薄暗く、壁には明り取り用の穴が開いており、これが窓になるのだろう。

奥にある部屋には本棚と机とベッドがあった。

寝台に美奈を寝かせると、細身の男は顔を覗き込みながら熱を測ったり脈をとったりしている。


「ふむ。見たところ鼻血を出した跡はあるがもう止まってるようだし、なにより血色もいいな。ただ寝てるだけのようにもみえるが・・・。」

「いや、すごい鼻血だったんだ。なにかの病気じゃないのか?」


真面目な顔で心配しているルーフィに申し訳なくなり、正直に話すことにする。


「いや、心配かけてすまない。妹のこれは病気といえば病気なんだが、どっちかというと頭の病気というか精神の病気というか・・・。とりあえず、すぐに気が付くはずだから、ほっといてもいい。」

「そうなのか?とてもそうは見えなかったが・・・。」


尚も心配顔のルーフィだったが、それ以上深くは詮索してこなかった。


「うん、こいつはほっといていい。それよりこの村のことを少し聞きたいのだが、いいか?」


美奈を放っておいて、ルーフィに尋ねる。


「うん?村のことか?」

「ああ、まず聞きたいのは、ここはどこなのかということだ。日本にある村のようには見えないのだが・・・。」

「日本?知らんな。ここはアルテの村だ。俺の生まれ育った村だ。」


うすうす気づいていたが、少なくとも日本ではないらしい。だが、日本語を話しているのは?


「じゃ、なぜ日本語を話せるんだ?」

「日本語?なんだ?」


お互い、話が通じているようで通じていない状況に首をかしげる。

それを聞いていた黒髪の男が口を開いた。


「ふむ、話は聞いていたが、お互いよくわかってないようだな。ここは私が代わろう。まず聞きたいのは君たちのことだ。」

「俺たちの?」

「うむ、可能な限り順序立てて詳しくこの村に来た経緯を話してくれ。」


黒髪の男に促され、俺は学校帰りから今までのことを説明することにする。

ルーフィも一緒に聞いているが、よく理解できていないようだ。


「お前の話はよくわからに事が多いな。何言ってるのかよく理解できない。」


ルーフィがそう言うと、細身の男がルーフィにむかって


「ルーフィ、とりあえずいったん家に帰った方がいいんじゃないか?アーヴィは先に帰したぞ。」


と、ルーフィに帰宅を促した。


「あ、やばい。もうこんな時間か。じゃ、とりあえずいったん家にいってくる。」


窓の外に目を向けると夕方になっていたらしい。窓の外からオレンジの光が入り込んでいる。


「じゃ、あとは頼むな。トーラス。」

「ああ、この客人はこちらで預かる。また明日なルーフィ。」

「色々すまなかったな。ありがとうルーフィ。」


俺の礼の言葉にルーフィが頬を染める。


「別に気にすんな。明日にでも顔を出すさ。」


帰ろうとしたルーフィをトーラスが呼び止める。


「あ、まてルーフィ。一応これを飲んでおくんだ。」


トーラスが渡した木のコップには半分ぐらいの青い液体が入っていた。


「俺は病人じゃないぞ。」

「いいから飲んでおけ。薬師のいうことは聞いておいた方がいいぞ。」


トーラスがニヤリとすると、ルーフィはひどく嫌そうな顔になりながらも黙って従った。


「げほ。飲んだぞ。これでいいな!」


コップを乱暴に机の上に置くと、ルーフィは逃げるようにして出て行ってしまった。

その直後美奈が目を覚ます。


「ん・・・。」

「お、気が付いたか?」


美奈を覗き込んで話しかける。


「お兄ちゃん?あれ?さっきすごく素敵な光景が見えたような気がしたのに・・・。」

「そんなことより、気分はどうだ?」

「ん。大丈夫だよ。ここはどこ?」


美奈の質問になんと答えようかと思った瞬間、後ろからトーラスが声をかけてきた。


「ここは私の家だ。どこか体に変なとこはないか?」

「え?だれ?」


美奈が困惑したような表情をしている。


「さっきあったルーフィ、いや、銀色の髪の少年を覚えているか?あの子の案内で村に連れてきてもらったんだ。」

「あ、さっきの光景は夢じゃなかったんだね。」


思い出しているのか、徐々に頬が赤く染まってきた。


「お前、また倒れるつもりか?とりあえず深呼吸でもして落ち着け。」


素直に深呼吸をして辺りを見回す美奈。だが、あまりの状況変化についてこれないようだ。辺りをキョロキョロと見回している。


「ふむ、とりあえずは落ち着いたか?それならさっきの話の続きをしようと思うのだが・・・。」

「ああ、わかった。」


美奈にはここに来るまでのいきさつを簡単に説明したとだけ言い、トーラスに向かって姿勢を整える。


「とりあえず自己紹介をしておこう。私はトーラス。この村で薬師をしている。まあ、医者なんていないから医者も兼ねているがね。」

「おれは小西浩二。こっちは妹の美奈。さっきも話したように学校帰りに穴に落ちて出てきたら近くの森の中だったんだ。」

「ではコーニシ・コージだったか?私の見解を・・・。」

「いや、小西浩二だ。呼びにくかったら浩二でいい。」

「そうか、では浩二。私なりの見解を話しておこうと思うんだが、いいか?」

「ああ、わかった。」


トーラスは徐に口を開いた。




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