僕の決意
「...い、おい。...聞いているのか。」
遠くからそんな声が聞こえ段々と焦点が合う。
辺りを見回すと先程と同じ場所だった。
大き過ぎるくらいのベッドの端に腰掛け目の前には腰に手を当てたリリハが立っている。
「ようやくか。」
「なあ...」
「いきなり質問か。このボクを放っていたくせにいいご身分だな。まあ、いい。ボクは寛大な魔女だ。好きに質問すればいい。」
「僕って人間界に飛ばされたんだよな?」
「それは違う。」
やはりそうか。
初めてあったときリリハは言った。
あの世界は僕が創造したものであると。そこにいる人間も。
「あの世界は人間界に酷似したまったくの別物だ。」
「...どうして僕はあの世界を創ったんだ?」
「そんなの魔力の暴走に決まっているだろう。」
「魔力の暴走...?」
「本来なら10歳になってから初めて与えられるはずの魔力を9歳にして授かったのだ。十分に心身が成長してないうちに魔力を授かると魔力を持って間もない頃はその圧に耐えきれない。キミは鏡の向こうに行くことを無意識のうちに拒んだのだろう。だから世界を構築した。向こうに行くためには様々な条件をクリアしなければならないからな。」
「条件?」
「細かく分ければ色々あるが代表的な物は2つ。1つは心身の成熟。そしてもう1つは魔力の質量だ。魔力値が低いとゲートに拒まれ精神を崩壊させられてしまう。」
もし本当に鏡を通っていたらと考え身震いをする。
「...リリ八は言ったよな?世界を滅ぼしに行こうって...」
「ああ。キミは魔王の息子。いずれ魔王の跡を継ぎ、その意思も引き継ぐのは当然だろう?これまでもずっとそうだった。」
「僕は...魔王を継ぐ意思はない。」
ハッキリと自分の意思を口にする。
「ほう、理由は?」
「理由なんて...」
そんなの色々ある。
魔王だなんて良いイメージがない。
民を苦しめ自分のしたいように行動するただの自己中な存在。
優劣をつけるだなんてことは僕はしたくない。
どうして気に入らないから滅ぼすだなんて選択肢しかないんだ。
みんなで協力し高め合う道もあるだろうに。
だがそれを伝えることがなんだかとても難しく感じて上手く言葉に出来ない。
「キミがそうしたいのならそうすればいいさ。」
「は?」
思ってもいなかった言葉に反射的にそう返す。
「ボクは確かに魔王に造られた。だが今ボクが請け負っている指名はキミの護衛兼世話係だ。言っただろう?ボクはキミの下僕だと。だったら創造主よりご主人様に仕えるのが筋ってものだ。」
「僕に協力してくれるのか...?」
「だからそう言っている。」
思ってもいなかったその言葉に涙ぐみそうになる。
「ありがとう、リリハ。」
「礼を言われるようなことをした覚えはないぞ。」
それでも...その言葉が嬉しかったから。
「リリハ。お願いがある。」
「ボクはなんでも従うさ。ご主人様の言うことならな。」
そして僕は自分の決意を口にする。
「この国の...いや、世界を再建することを手伝って欲しい。」