一日ぶりの再会
僕はかなり悠長に物事を考えていたらしい。
実際かなり侮っていた。この学校の授業を。
前に立つこの学校の指導員は黒板に板書しながら僕には理解不能な専門用語を使って授業を進めている。
こんな中途半端な時期に入ったのが悪かった。
いや、それも言い訳か...
もっとこの学校について事前に調べて予習なりなんなりしてくればよかったんだ。
でもそんな後悔は今しても仕方がないんだけども。
理解できない授業というものはどの世界であっても眠気を誘うもののようで。
しっかり聞かないとと内心思っていてもその睡魔は徐々に忍び寄っていた。
そしてコクンと意識が飛びそうになったとき
ガラッと教室の扉が開く音で意識がハッキリと覚醒した。
そしてふと扉を開けた人物に目を向ける。
「あの子...」
ふわふわした髪。白い肌。眠そうにとろんとした眼。
昨日会った不思議な名無しの少女だ。
また会うことになるだろうとは思っていたがまさかこんなすぐ会うことになるとは...
少女は授業の進行を止めていることを理解しているのかいないのか眠そうな顔のまま近くにあった空いている席にストンと座って鞄から教材を取り出す。
「学生番号『β5041』。遅刻ですよ。」
学生番号?なんで名前じゃなくてそんな回りくどい呼び方?
指導員はそう言ってすぐに授業を再開する。
もしかしたらこの指導員は名前じゃなくて学生番号で呼ぶ人なのだろうか。
生徒の数も多いし1人1人の名前を覚えるのも大変だろうし......
「それではこの問題を...ミス、ブリュレ。」
「はい」っと返事をして指名された女子生徒が答える。
そこで疑問を感じた。
どうして他の生徒は名前で呼ぶのにあの子は番号で呼ばれるんだ?
もう1度階段状になっている教室の下のほうの席に座ってペンを動かす名無しの少女を見る。
他の生徒も何人か指名されていったが番号で呼ばれた生徒は1人もいなかった。
だとしたらなぜ......
「ーーーキ。ーーー八ーーーツキ。」
「おい、ご主人。」
隣から肩を揺すられハッとした。
考え事をしていたせいで少しボーッとしていたらしい。
「ユーハ・ムツキ!」
「は、はいっ!!」
鋭い声で名前を呼ばれ反射的に勢いよく立ち上がる。
自分が指名されたことにすら気づいていなかったらしい。
「慣れないのは分かりますが集中力を乱さないように。」
そんな叱責を受け僕は「はい...」と小さく答えた。