俺、事件に遭遇する
パチリと意識を取り戻す。
いやはや、邪魔の入らない有意義な瞑想だった。さて時間はどれだけたったのやら。……わからん!!上も下も右も左もゴミしか見えねぇ!!こんなんでわかるか!!
しかし、なんだ。結局オバチャンは追加でゴミだしに来なかったな。……ぶたろうに刺されてなけりゃいいんだが。あれでも恩人だし、無事を祈っておこう。
遠くで、パトカーのサイレン音が鳴っているような気がした……。
……ん?
コツコツと足音が聞こえる。
野郎の足音にしちゃ軽いな。
その方向とは別に……なんか近くで荒っぽい息づかいが聞こえる。そして足音が増えた。どうやら荒っぽい息遣いをしていた奴が駆け出したらしい。
いったい何なん
「優花ーーー!!お前を殺して僕も死ぬーーー!!!」
「い、いやぁぁぁぁ!!だれかーーー!!!助けてーーーー!!!」」
通り魔!?いやさ心中事件か!?
おいおいおいおい、サドルになってこんな事件を見る……いや、真っ暗で見えないから聞いているだけか……ことになるとは。
ふたり分の息遣いと足音がこっちに近づいてくる。もうかなり近
「死ねーーーーーーー!!!」
「っぁああ!!!」
ぼふんと、俺が入ったゴミ袋が押しつぶされ、一部が破けて街灯の明かりが差し込む。
光が差しても外の状況は見えないし、重いとかそういう感覚はないが、このゴミの圧縮具合からして追いかけられていた女性、優花さんが刺されてゴミ置き場に突っ込んだのだろう。
「フヒ、フヒヒヒヒヒヒハハハハハハアアアアアア!!」
男の笑い声がこだまし、パトカーのサイレンの音が近づいてくる。周りの住民が110番通報したのだろう。
助けられるなら助けたいが、手も足も何もない自転車のサドルに、何ができようか。生存を祈るしかできない。なんと非力なのだろう。
「ヒハハハ……ア?な、なんだこの光は!?」
隙間から覗く光が強くなる。それに、ゴミ袋の中も光って……違う!!ゴミ袋の中身が光っ散るんじゃない!!俺が《・・》光っているんだ!!!
「う、うわぁぁああ!!!」
男の叫びで聴覚がふさがり、閃光で視覚が埋め尽くされ……。
コロン
気が付けば、俺と血を流しているブレザー女子高生が森の中に転がっていた。