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僕がサドルに転生して異世界に飛ばされて死んだ後の話が始まる

 目の前は真っ暗闇だ。何も見えない。……ん?なんか、揺れている?なんで?


 いや、その前に……僕は死んだはずだ。溶岩に落ちて、ドロドロに溶けたはずだ。あれに落ちて溶けないはずない。どろどろになって霧散したはず……なのに。


「この辺でいいかな、うん」


!!


 人の声だ!もうずっと、遠い昔に聞いてから……もう聞くことはないと思っていた、人の言葉だ!


 ……まって、それもおかしい。あの世界にはもう人はいないはずだ。とても住める環境じゃなかった。


 あ、そうか。これは夢だ。


 あんまり人恋しいからこんな夢を……そんなわけない。


 サドルの体で夢を見たことは一度もなかった。眠ることすら許されなかった。つまり……ああもうわかんない!!




 せめてなにか見えれば!!




 そう思ったその瞬間、視界が開けた。


「え……?」


 そこは建物の中だった。木の壁、木の天井、棚に並んだ沢山の小物。小さな雑貨屋みたいだ。


 僕は悟った。ここは、あの終の世界……名前忘れた……とは違う、まったく別の世界だ。


 視界の片隅に、色素の薄い、金髪三つ編みに、長いピンと尖った耳が特徴的な女性が居る。どこかで見たような顔だ……。


「あれ?今なにか聞こえたような……外からかな?」


 僕はさっき、声を出していた?……僕の体は、どうなっているんだろう?


 視線を下に向けると、茶色いクマの着ぐるみみたいな体が見える。両足はもちろんあったし、両腕もついている。


 ぬいぐるみに生まれ変わった?


 ……そうだ、心眼は輪廻転生しても、引き継がれるってあった。それがあの世界だけに限定されるのか、それとも世界を跨いで有効なのか……よし。


 僕の心眼よ、僕自身を見せてくれ!!




------------------------------


Name:-


種族:手のりぬいぐるみ(クマ)


Lv.1/???


クラス:-


攻撃:- 防御:E 速度:D 体力:- 魔力:- 技術:E 幸運:A 神力:E


スキル:心眼(soul) 念力(Soul)


称号:亡界の女神に愛されたモノ(soul)


MP:∞


------------------------------




 ……ナニコレ?


 ええっと、僕はクマのぬいぐるみになったのかぁ……。


 そっかー……うん、ちょっとまって。種族:手のりぬいぐるみ(クマ)って何?




-----------------------------


手のりぬいぐるみ(クマ)

クリナの手で作られた小さなくまのぬいぐるみ。

材料:布の切れ端、糸、糸くず、綿、小さなボタン


----------------------------



 いや、そういうことを言ってるんじゃないんだけどね……。


 ……あれ、ステータスが……ある?


 ということは、僕はモノから一生命体になった?でもぬいぐるみだよね?どういうことだろう?


 まあ、そこは置いておくとして……神力?……初めて見るよね、これ。そんなに人様のステータス見ていないから何とも言えないけど。今まで見たのって人間二人と鼠男達だけだし、あと石。



---------------------------


神力

読んで字の如し。様々な奇跡を起こすことができる。また、一部を体力や魔力へと変換することもできる。説明不可能な事象が起きた場合だいたいこれのせい。強さは神格に比例する。


--------------------------




 理解が追いつかない。…………いや、心当たりはある。


 たぶん……この称号が、答えだ。




------------------------


亡界の女神に愛されたモノ(soul)

亡き世界ニヴェリアークの女神の寵愛を受けた者の証。譲渡された神の神力を得る(時価)。


-----------------------




 時価って……。


 ……そっか、あれは、幻じゃなかったんだ。


 あの世界で最後のその瞬間に、僕は思い出した。僕の目的を。あの世界の女神様の名前を。


 ……そうだ、どこかで見た顔だと思ったら!!


 三つ編み金髪の女性は、カウンターの奥の椅子に座ってこっくりこっくり船を漕いでいる。


 ……そっくりだ、ラトゥイラ様に。でも、店番はちゃんとしようよ?


 うん、試しに……心眼()てみよう。




----------------------


Name:クリナ


種族:エルム


Lv.7/200


クラス:見習いマーチャント


攻撃:E 防御:E 速度:D 体力:D 魔力:A 技術:C 幸運:C 神力:E


スキル:裁縫 魂付与(超低)光魔法ケア


称号:先祖返り 女神転生 



魂付与(超低)

魂の器足りえる物を作った際、超低確率で魂を付与する。


女神転生

前世がいずれかの世界の女神だった者の証。Lv上限が倍増する。


---------------------




 ああ、やっぱりそうだ……。神力と女神転生……間違いない。彼女は間違いなく──


 カランカランと、ドアが開く。


 ドアから入ってくたのは黒髪の男と、空色のピンと立った獣耳とふわふわの尻尾が特徴の少女だ。


 ラトゥイラ様……じゃなかった、今はクリナさんだ。口元から涎をたらしてだらしなく寝ているのを見て、ちょっと引いてる……うん、みっともない。


「う……あ、いらっしゃいー」


「せめてベルの音で起きろよ……」


 あ、よかった、起きた。


「あー、ナナクサさん……ってことは、ゆーちゃんもいる!?」


「ん、こんにちは」


「ゆーちゃんやっほ!」


「オヤジさんいるかい?」


「ちょっと待ってね。おとうさーん!!」


 どうやら、このふたりは常連みたいだ。……でも、なんだろう、この違和感。


 …………あれ?この男の人、昔会ったことがあるような気がする。


 ずっと昔に…………ダメだ、思い出せない。確かに見覚えはあるんだけれど……。うーーーん……。


 そうだ!心眼()てみればいいんだ!!もしかしたら思い出せるかも知れない!!




----------------------


Name:ナナクサ


種族:神造人間


Lv.-/-


クラス:料理人/教官


攻撃:B 防御:B 速度:B+ 体力:B+ 魔力:A 技術:A 幸運 C 神力 S


スキル:焼きプリン愛好家の加護(soul) ロンゲの加護(soul) 危機察知 病毒完全無効 全言語理解 水泳 神血 知恵の実の英知 飢餓耐性 激痛耐性 自己再生 拷問 料理 シンクロ(ユーディリア)


創造術(等価創造 物質抽出 整形) 


短剣術(秘匿されている)


格闘術(秘匿されている)


火魔法(秘匿されている)


風魔法(秘匿されている)


土魔法(秘匿されている)


氷魔法(秘匿されている)


雷魔法(秘匿されている)


闇魔法(秘匿されている)


N権限(壱式 弐式 零式)


称号:魔王救済者(soul)復讐者 別次元の魔神王に託された者 創造者 変態 神喰いの義父 ロリコン 鬼教官

--------------------




 …………………………え?


 なに……これ……?ちょっとまって……どこから突っ込んでいいのかほんとにわかんない。


 なにがどうなってるの!?


 ちょっと端折って、要所だけ……。




---------------------


神造人間

神によって肉体を直接創造された人間。創造した神の加護を生まれながらに保有する。


焼きプリン愛好家の加護(soul)

焼きプリンへの愛に目覚めた魔王が与えた加護。焼きプリン作成時に運命干渉し、失敗する未来を排除することで確実に成功させる。


ロンゲの加護(soul)

茨の冠を被ったロンゲの神の加護。毛根の自己主張が若干激しくなり、未来永劫ハゲない。


等価創造

望む物質を見合った神力を消費して創造する。


物質抽出

自身の知識にある物質の抽出を行う。


整形

物質の分子を移動させ、形を整える。


神血

高位の神によって作られた血液。生命エネルギーそのものを大量に含む奇跡の霊薬。健康な生物に投与すると頭がおかしくなって死ぬ。


知恵の実の英知

古代人類が生み出した英知の結晶。未知の言語への理解力を加速させる。


自己再生

自身が定めたトリガーワードによって発動。脳以外の部位欠損に対して有効。損傷部を再生する。神力を持たない場合、体力と寿命を代償に支払う。


拷問

人体を知り、精神の脆さを知る者による、非道の技。


N権限

Nに対する干渉権限。Nの情報が不足しているため、詳細不明。


シンクロ(ユーディリア)

同調し、同じ魔法を行使することで、対象の威力・効力を何倍にも高める。本来双子や三つ子が持つスキル。


魔王救済者(soul)

異界の魔王を救った者。魔王に恩を売った者。その功績は魔王によって秘密裏に魂に刻まれた。


別次元の魔神王に託された者

別次元の魔神王が自らの運命を変えるために選定した者。スキルの一部を秘匿し、神力を譲渡者と同等まで引き上げる。


復讐者

自らに害をなした者へ徹底的な報復を行った者。魂に消えぬ恐怖と後悔を刻み込む。


創造者

*************


神喰いの義父

神の天敵を受け止め、愛情を注ぐ者。



--------------------




 わけがわからない。


 そうだ、もうひとりの女の子!あの子はさすがにもっと普通の結果が出るはず……。




----------------------


Name:ユーディリア


種族:カーバンクル・オブシディアン


Lv.-/-


クラス:シャーマン


攻撃:E 防御:C 速度:B 体力:B+ 魔力:A 技術:C 幸運 B 神力 A


スキル:飢餓耐性 病毒完全無効 全言語理解 自己再生 裁縫 洗濯 料理 シンクロ(ナナクサ)


創造術(物質抽出 整形)


天候制御(秘匿されている) 


火魔法(秘匿されている)


水魔法(秘匿されている)


氷魔法(秘匿されている)


光魔法(秘匿されている)


N権限(壱式 弐式)


称号:魔神王の器 黒の宝石獣 禁忌を犯した者 変態 




シンクロ(ナナクサ)

同調し、同じ魔法を行使することで、対象の威力・効力を何倍にも高める。本来双子や三つ子が持つスキル。


天候制御

天気を自在に操る種族固有魔法。個体差有り。


魔神王の器

魔神王と成り得る可能性を持つ者。スキルの一部を秘匿し、神力をその身に溜めることができる。


黒の宝石獣 

成人前に禁忌を犯した宝石獣の証。


禁忌を犯した者

自身と交わり子を為せる種族の肉を食らった者の証。身体成長が鈍化する。


--------------------




 全然普通じゃない……。この子もわりかし、いや、大分危険に見える。魔神王の器って危険な匂いがプンプンするんですけど!?


 もしかしてここはあの世?天国?……いや、それも何かおかしい気がする。


「しかし、いつまでそのアイスキャンディーを作り続けるつもりだ?いや、こっちとしちゃあ、大口の客だし、だいぶ儲けさせてもらっているんだが……」


「んー……店舗リフォームの進捗と開店予定日、開店準備に休暇日数、気温が下がることまで勘定に入れて、販売は9月いっぱいでしょうね。残りおよそ1ヶ月、まあ、生産調整もコミで4000本ってとこですか」


 はっ。いつの間にか熊みたいな大男が増えてる。……この人がクリナさんのお父さん?




----------------------------------


Name:ゴルドー


種族:灰熊


Lv.50/85


クラス:マーチャント/バーサーカー


攻撃:B+ 防御:B 速度:D 体力:A 魔力:E 技術:B 幸運:E


スキル:怒


称号:凶獣


我を忘れて力の全てを開放する。疲れ果てるまで手が付けられなくなる。


凶獣

圧倒的な力を恐れられた証。


--------------------------------




 うん、神力はないみたいだ……。そして見た目相応に筋肉だった。……やっぱり彼らが特別みたいだ。


 笑いあう少女二人に、大真面目な顔で交渉する男二人。彼らは自身が特別だという自覚はないみたいだ。どうもそんな気がする。


 そもそも彼らには鑑定スキルがなかったし、それ系統の進化したと思われるスキルもなかった。そういえば本来ステータスって見られないんだっけ。


 でも、それじゃあなんで一部レジストするような称号が?まるで、いつか誰かが見ることをあらかじめ分かっていて与えられたような……。


 うーん……とりあえず、しばらく様子を見よう。


 3度目の人生だ。いや、クマ生?ぬいぐるみ生?2度目の時みたいに、自分から死にに行くようなことはしない。あれが長く苦しかったのは確かだけれど……それでも、掛け替えのない出会いがあった。


 とりあえず……僕はどうやらお店の商品みたいだし、売られないようにしないと。


 あの二人が帰ったあと、頃合いを見て、クリナさんに接触してみようか。場合によっては逃げ出すことも視野に入れないといけないかもしれない。


 こうして、僕の3度目の人生、いや、ぬいぐるみ生が始まった……。


ここまでお読み頂き有難うございました。


「俺がサドルに転生してから異世界に飛ばされて死ぬまでの話をする」これにて完結です。


この後の彼の物語は、いずれ本編にて……。

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