表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/20

Ep:19 『忘却ディストラクション』(17)忘却


「金剛…武闘…?」

 

 シズオはルキの異変に気づくと、すぐさま距離を置いた。

 夜宵も、ルキの変化に異様な雰囲気を感じた。これは、“別物”だと、そう感じ取ったのだ。


「次は、こちらから――ッッです!!」


 ルキは地面を思い切り蹴とばし、攻撃を仕掛ける。

 シズオも神足通(じんそくつう)を発動する。ルキの動きは止まって見えたが、何かがおかしい。ルキは、にやり、と笑い、何かを企んでいる顔だった。


「……まぁ、関係ないな……」


 シズオは、召喚時間がもうすぐ切れてしまう追憶剣(リマインドソード)をルキに向けて大きく振った。

 すると、



 バシィィッッッ!!



 弾かれた。

 それは、ちょっとやそっと威力を弾かれたなんてものじゃない。

 明らかに魔力の効果も、物理的な威力も、全てが弾かれてしまった。


 シズオは、追憶剣の威力をフルに受けてしまい、そのまま後ろに弾き飛ばされた。

 

「…どうですか?…これで、あなたの攻撃も効きませんよ…」


 そうか。これを考えていたのか。

 

「そろそろ追憶剣も召喚し続けれなくなりますよね」

「ッ!!」


 シズオは自分の体力、まるで心臓が握り潰されそうな感覚に襲われた。

 効果限界(タイムオーバー)だ。夜宵も、それを理解した。


(こうなってしまうと、しばらく武器召喚ができない……)

 

 シズオは自分の下唇を噛みしめ、自分の無力さを思い知る。


(所詮はこの程度なのか、俺は!!)

 

 加速して殴ったとしても、あの金剛武闘の効果ではじき返されてしまう。

 追憶剣の魔力も跳ね返された事から、魔法系統の攻撃やそれ以外の妖術なども、おそらく跳ね返されてしまう。


「はぁ……あなたも所詮はその程度なのですね。…大人しく、投降しなさい」

「……いや、断る」


 しばらく考えたのち、ルキの言葉を断った。

 

「――これなら、どうだ?」


 シズオは、縮地でルキの目の前まで移動する。

 そこで、右手を伸ばした。ルキの額に当たるようにして、こう叫ぶ。




「――『忘却(ロスト)』ッッッ!!」




 そこで、眩い光が放出される。

 これは、古代魔法の記憶を消す(異空間に移動させる)能力。


 シズオの推測では、この魔法は武器などを召喚する古代魔法だった。

 もしかしたら、“ただの魔法ではない”この古代魔法を直接的に脳にかけたら、通用するかもしれない。


 消去(移動)させるのは、シズオと夜宵に関するピンポイントな情報。

 そうすれば、ルキとサラはシズオたちの事を忘れる。若干苦しい事ではあるが、今仕方がない。

 すると、


「効きませんけどね?」


 


 バシィィッッッ!!




 最後の頼みだった魔法は、完全に跳ね返された。

 こんなに、いとも簡単に、シズオの最期の策は掻き消されてしまった。

 これが、捕獲隊。これが、伍総連の刺客。


 力の差が視えてしまうのだ。


「…くっそ!!…」


 シズオは、一度後退すると、夜宵と目を合わす。

 夜宵は、首を振り諦めたような顔で、残念そうに、こう呟く。


「負け…だね」


 悔しい。

 ただ溢れんばかりの悔しさが、シズオと夜宵の中を渦巻く。


「あー。お姉ちゃんが張った結界、破れちゃってるね~」


 サラは陽気にそう言う。


「え、そんなハズ…!?」


 夜宵は混乱しながら、後ろを振り向いた。

 そこに立っていたのは、確かに結界を敷いた部屋で保護していたはずのルフィナの姿だった。


「ルフィナ…」


 シズオは、煙の立ち込める王宮を眺め、崩壊した城を眺め、言葉を殺す。


「あの…ルフィナ、すま――」




「これは、貴様らの仕業か」


 ルフィナの男勝りの口調に、明らかに不審者に対する質問。

 まさか、


「ル、ルフィナ?」

「貴様、私の名前を気安く呼ぶな」

「ル、ルフィナちゃん?」

「貴様もか。……王宮がこの有様か。貴様ら、罪は重いぞ」


((――記憶を失くしてる))


 シズオと夜宵は、同時にそう確信する。


 シズオの『忘却』の内容は、「シズオと夜宵に関する内容を消す」というもの。

 それが、跳ね返されたということは、周りの者たちからシズオと夜宵に関する記憶が無くなるのだ。

 つまり、ルフィナにはシズオと夜宵の記憶は存在しない。


 壊された王宮と、無くされた記憶。


「償ってもらうぞ。――大罪人が」


 使わなくなったはずの、ルフィナのその口調は、今になって聞くと、本当に苦しいものだった。




 数々の心をめぐる感情と共に、シズオと夜宵の手には手錠がかけられるのだった。


 

 


最近は、『泥棒猫には愛が似合う』を描き始めて、この小説を書く時間が無くなってきました。一応両立して、書いていきますが、こちらの小説の方が遅れ度合が長いと思います。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ