表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
プリンセス・プリンセス  作者: 心太
11/29

第ジュウ話

明けましておめでとう御座います。

2017年が、皆々様にとって素晴らしい年になりますように。


一部〜空の見えない街〜

「……凄い」


目の前の光景を見て呟いた言葉は、直後の大きな音でかき消される。

たまに飛んでくる小石などは対物理障壁に任せて、フレシはその光景に魅入っていた。


「はあああああっ!!」


気合いの込もった声をあげるインフィは、自動人形ゴーレムの見えざる武器が破壊して飛び散る岩石を足場にーー『くるくると回りながら』空を駆けていた。

見るからに重そうな戦鎚ウォーハンマーを両脇に挟み、時には柄の端を掴んで、遠心力に逆らわず独楽のように回り移動している。

回避と攻撃も組み込まれているのか、まるで一連の流れのように自動人形ゴーレムの攻撃を避け、振り下ろされた見えざる武器の場所に当たりをつけて戦鎚ウォーハンマーを振り下ろす。

がいぃぃぃんっ!! と金属同士のぶつかった音がして、多量の火花が飛び散った。

何も見えない空間に振り下ろされた戦鎚ウォーハンマーだが、さしたる変化は起こらない。インフィは眉根を寄せながら「〝風〟!」と呪文を呟くと戦鎚ウォーハンマーの槌頭が吹き飛び、柄の部分だけを槍のように振り回しながらその場を離れる。

そして再び「〝石〟!」と呪文を呟き、槌頭を形成すると徐々に身体全体で回しはじめ、最後に独楽のように回りながら再び突撃を仕掛けていた。

そのような特異な戦法を、フレシは見た事がなかった。

戦鎚ウォーハンマーは小人族の使用する武器として有名であるが、通常はもっと柄が短く槌頭も大きい。

ハインツェニーヴ家にも小人族の騎士は居たが、インフィとは比べものにならない程身体は大きく、筋肉達磨のような者だった。

戦い方も、片手に持った盾で攻撃を防ぎながら近づき戦鎚ウォーハンマーで渾身の一撃を叩き込むというものである。

インフィのように小柄な女の子が、くるくると回りながら扱う戦法など邪道ともいえるだろう。

しかしてフレシは、その戦い方に魅入りーーいや、見惚れてしまった。


(綺麗な動き……まるで、踊っているみたい)


下手をすれば滑稽にもみえるインフィの戦い方だが、回りながらも目線はしっかりと自動人形ゴーレムを見据え、右手、左手、時には地面に叩きつけその衝撃で浮き上がるなど、戦鎚ウォーハンマーを手足の延長のように扱っている。

ぴんと伸ばされた背筋に、時折バランスを取るため蹴り上げる足。

戦鎚ウォーハンマーを握っていない手は優雅に揺蕩たゆたい、本当に、戦鎚ウォーハンマーを相手に踊っているようであった。

と、何度か攻勢を仕掛けたインフィだったがこれだと埒があかないと思ったのか、今までよりも深く自動人形ゴーレムへと踏み込んだ。

見えざる武器を振り下ろした直後を見計らい、その下へと大きく一歩を出した瞬間ーーがきぃぃぃん!! とぶつかり合う音が響き、思わずフレシは息を呑んだ。

しかしてインフィはぶつかり止まってしまった回転を、力を振り絞るように歯を噛み締めながら再開させる。

ががががっ!! と擦れ合う見えざる武器と戦鎚ウォーハンマー。インフィは見えざる武器の表面を滑るように自動人形ゴーレムの巨大な腕の下まで行くと、戦鎚ウォーハンマーを地面へと叩きつける。

それを軸に空中で前転、足が地面に着く前に巨人手袋タイタングローブで無理やり戦鎚ウォーハンマーを引っ張りあげると、遠心力で戦鎚ウォーハンマーごとインフィの身体が前に引っ張られる。

走るよりももっと早い、矢のように自動人形ゴーレムに突っ込むインフィだが、弐爺は溜息を吐きながら小さな杖を振るう。

すると自動人形ゴーレムの腕から巨石と呼べるほどの石が剥がれ落ち、目下もっかのインフィ目掛けて降り注いだ。


「ーーっ!!」


惚けたように見ていたフレシは、はっと意識を取り戻し古語で呪文を呟いた。


「〝加速アクセラレーション〟」


瞬間、フレシは遠心力で飛ぶインフィよりも早く、落ちてくる石よりもなお早く、巨大な腕の下にたどり着いた。


「えっ、フーちゃーー」

「いいからあなたは方向転換せずにそのまま突っ込みなさい!!」


前方に伸ばしている戦鎚ウォーハンマーを手繰り寄せようとするインフィを声で制すと、残り数秒でぶつかるであろう巨石を見て、フレシが目を細める。


「〝火炎フレイム〟、〝火焔ブレイズ〟」


フレシの身体が強く輝き、かざした杖の前に真っ赤な炎と真っ青な炎が現れる。

宝石ではない炎の塊を、フレシは苦悶の表情で解き放った。

空気を焦がしながら飛んだ二つの炎は、巨石の前で混ざり合い一際大きく燃え上がった。

そしてフレシは、吐き出すように呪文を叫んだ。


「ーー〝大火炎カンフィルグリーション〟!!」


瞬間、耳をつんざく爆発音と共に巨石は爆煙に包み込まれた。

フレシの生み出した魔術により巨石は砕かれ、大小様々に変わって降り注ぐ。

それを杖から火球を発生させて爆散させたり、宝石魔術ではない風の魔術を使い軌道を変えたりして、インフィやフレシ自身に当たらないようにする。


「ーーっ」


目眩を起こしてぐらつく身体を何とか支え、自動人形ゴーレムの足元まで無事にたどり着いたインフィを見て息を吐いた。


(やっぱり……重複じゅうふく魔術は身体の負担が大きい。くわえて宝石化せずに使ったからユグの変換効率も悪くて、いつも以下の威力だし。けど、無事に届けたわ)


永続的な身体強化の魔術とは違い、一時的に身体強化するだけの『加速アクセラレーション』。

ファイア』よりもう一段威力の高い『火炎フレイム』と、火力を上げる燃料として用いる『火焔ブレイズ』を混ぜ合わせ発動させる、中級下位の重複魔術、『大火炎カンフィルグリーション』。

結局被害は与えられなかったが、異なる属性の魔術を混ぜ合わせ発動させる、中級中位の複合ふくごう魔術、『竜巻ストーム』。

他にも細々と下級魔術を発動させているフレシは、段々とユグを魔力に変換する速度や量が落ちるのを感じていた。

理論上では、大気中のユグが無くならない限り魔力への変換は無限に行え、魔術は使い放題とされている。

しかしてそれは使い手の事を考えなければであり、ユグの変換は体内に元からある魔力を減らし、魔力欠乏症を起こしてしまう。

最悪死ぬ事もある魔力欠乏症に注意しながら、フレシが一日に使用出来る魔力量を考えるとーー


「あと下級魔術を、一発が限界かしら」


インフィがどのような思惑で自動人形ゴーレムの足元まで行ったのか分からないが、出来る事なら起死回生の一発を叩き込んでくれる事を祈るフレシであったーー


▲▲▲▲▲


〜誰得用語解説〜


「カンフィルグリーション・conflagration」

英語で大火災という意味。語源はラテン語で、意味は「炎上する」。

※本来は大火災なのですが、それだとどうかなと思いまして大火炎に変えております。お間違えのなきよう。

また「火焔ブレイズ」も当て字ですので、ご理解のほどお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ