公園の旦那
公園のベンチに腰かけ、タバコを一服。
小さな子供たちが無邪気に駆け回っている。
鬼ごっこをしているのか、かくれんぼをしているのか。とにかくどの子供を見ても笑顔が輝いている。
冬の寒空の下というのに元気なものだ。俺なんかジャンパーを着ていても、あまりの寒さに震えながらタバコを吸っているというのに、子供達はシャツ一枚でぴんぴんしてやがる。やっぱり子供というものはいいもんだ。見てるこっちにまで活力を分け与えてくれる。おまけに天使の様に可愛い顔をしているもんだから本当に愛おしい。
そう言えば俺にも子供と呼ばれる様な時期があったな。幼少期の頃から俺は一人で遊んでたっけ。外で遊ぶ友達がいないもんだから、家で閉じこもってたんだ。誰からの誘いも来ることがなかったから、ゲームをしたり、アニメを見たりして暇を潰してた。
母親はそんな俺の事をいつも心配してたなあ。俺と違ってとても気が強かったもんだから、この子と遊んでやってと同級生の所に無理矢理連れて行かれたこともあった。同級生達は俺を迎え入れるけど内心は嫌がっていたに違いなかった。なぜなら俺はそこはかとなく無口なもんだから、扱いにくいのだ。小さな子供の時分であってもコミュニケーション能力と言うものは重要なんだ。俺にはその能力が圧倒的に欠如していた。
まああまり過去を振り返ってみても仕方がない。俺の過去は後悔の宝石箱みたいなもので、一度、開けてしまうと嫌な思い出がザクザク掘り出てくるので困ったものだ。
ポールが飛んできた。子供達が勢いよく蹴飛ばしたのがこっちまで転がってきたらしい。俺はタバコの吸い殻を捨てボールを拾ってやると、追いかけてきた少年にこう言われた。
「おじさん、一体こんなところで何してるの?」
痛い所を突かれてしまった。俺はボールを返してこう答えた。
「今日は、仕事も休みだから散歩してるのさ」
「そうなんだ、その割には汚い格好をしてるね」
「そんなことないさ、こう見えても昔は男前と言われてたんだぞ。」
もう一人の少年が待ちくたびれた様子でこっちに走ってきて、俺と話している少年に向かって叫んだ。
「そんな奴と話すんじゃねえよ。そいつはホームレスって言って人間の屑なんだぞ!」
それを聞いた少年は、まるで汚物でも見るかの様な冷ややかな目で俺を一瞥し、ボールを持って向こうへ駆け出していった。
俺はホームレス。子供からも人間の屑と呼ばれ、まるで生きてるのか死んでるのかもわからないその場しのぎの人生を送り続けている。俺の未来にはもう希望がない。せめて子供達が俺の様にならない事を願って暖かく見守るだけが生き甲斐である。