第005話「初陣」
ここから先の展開が思いつかない・・・。
「で、おめーはだれだ?」
どうも、みんな元気かな? 要 大地です。
現在私はごついおっさん二人に詰問されています。
Pちゃんはとっくに逃げました。
エステラは俺の背後に隠して目立たないように指示を出したので
両手を口に当ててなんともカw、…ゴホンッ、一部のひとが興奮しそうな
ポーズで微動だにしていない。
「えっと、近くの村のもんです」
「この近くっつったらテニア村しかねぇが、てめーみてーなのは見たことがないぞ」
「いえ、テニア村じゃなくて別のとこでして、」
「ほぉー、どこの村だ? 言ってみろ?」
やばい、この周辺の村の名前なんて全然しらん。
どうする? ゴブリンを呼んでエステラと一緒に戦ってもらうか?
でもここで冒険者を倒したら後々面倒なことになるかもしれないし、
えぇい、どうにでもなれ!
「ドコカノ村です」
「聞いた事もねぇーぞ、おめぇふざけてんのか?」
「まぁまぁ、そんなことは後回しでいいだろう? ワプル。
それより、兄ちゃん、ここでレッドホーンラビットを見なかったか?」
「あ、それなら…、」
「見たのか! おい、教えろ! どこに居た!」
「おい、落ち着け、ワプル」
「えーっと、その、」
顎ヒゲを生やした粗暴そうな方の男が俺に詰め寄り、胸倉をつかんで
がくがくと揺さぶる。そのせいで答えようにも口がうまく動かせない。
「そ、それが、も、もう、し、死んじゃってて、」
「はぁ? てめーしらばっくれるんなら一発くらい痛い目にあってもらうぞ!」
「やめろワプル!」
俺が答える気がないとでも思ったのか、
顎ヒゲ冒険者が仲間の制止を振り切って腕を振り上げた。
あ、まずい殴られる。つーかしらばっくれる気なんてないんだけどな。
自分へと迫る冒険者の拳を怯えながら両腕でガードして衝撃に備える。
・・・・・・・・・・・・・・・・。
いつまで待っても殴られる衝撃が来ない。 あれ? 助かった?
ガードの下から様子を見ると顎ヒゲ冒険者の腕が小さい手に掴まれて
変な方向に曲がっていた。
「あ、ぎ、お、おれの腕が、腕があぁぁぁぁぁ、」
「なんだ? 女の子が…、 いや、羽がある、モンスターか!?」
「貴様ら、ますたーになにする気だった!」
どうやら顎ヒゲ冒険者の腕を折ったのはエステラのようだった。
あちゃー、誤魔化せるのなら多少殴られるのも我慢しようかと思ってたんだが、
こうなったら仕方ない。覚悟を決めよう。
「エステラ、こいつら二人を倒せ。殺しても良い」
「はーい! 了解です。ますたー!」
「こいつ、もしかしてダンジョンマスターか!?」
「あんたたちの間じゃそう呼ばれてるらしいね」
顎ヒゲが手を放した隙に、俺は冒険者二人と距離をとり、すかさずエステラが
その間に割って入った。
冒険者二人はこちらを敵と認識すると即座に腰の剣を抜き、臨戦態勢に入る。
対するエステラもゴブリンの時とは打って変わり、腰を落として、いつでも相手に
攻撃が仕掛けられる体勢でじりじりと距離を詰める。
「ふーっ、ふーっ、このガキが、よくも俺の腕を、死ね!」
「まて、ワプル!」
先に動いたのは顎ヒゲの方だった。
片手とはいえ、やはり熟練なのか、素早い動きで剣を振るう。
しかしエステラも負けてはいない。冒険者よりも早い動きで剣撃をかいくぐり、
相手の懐に入ったかと思うとピッと血の尾を引いた手刀が一閃。
次の瞬間、顎ヒゲの首筋から鮮血がほとばしり、
そのまま膝から崩れ落ちて動かなくなった。
「ワプル! …くそ、」
仲間がやられたのに冷静だな、さすが冒険者。
もう一人の冒険者はショートソードとバックラーを構えたオーソドックスな
スタイルの剣士だった。
エステラは顎ヒゲを仕留めた流れでそのままもう一人も倒そうとするが、
ガキィィィン
エステラの手刀と相手のショートソードが激突し、
金属同士をぶつけたような音が響いた。
あれ? エステラの手ってさっき外に出た時、手をつないだ感触は
やわらかかったような気がするんだけど、どうなってんだ?
二人は十数回にわたり、お互いに攻撃をかわし、防ぎ、反撃に転じようとする。
そうして相手の冒険者が体勢を崩した一瞬の隙をつき、
先ほどと同じようにエステラが首筋一撃を加えようとする、しかし、
「ち、スキル【アイアンガード】!」
エステラの手刀が相手の首に当たる瞬間、
ガギギギっと金属同士をこすり合わせるような音がした。
防御力を上げるスキルか?
「固いですね」
「ちくしょう、お前の手一体何でできてんだ!?
アイアンガードを使ったのに痛みがあったぞ!」
そのあと何度か攻撃を防がれたエステラだが、
手刀による連打によって次第に相手の冒険者が手数のスピードついて
これなくなり、少しずつエステラの優勢になっていった。
そしてとうとう疲労により動きの鈍った冒険者はエステラにショートソードを
はね飛ばされた。
「しまっ、」
「終わりです」
「くそ! スキル【アイアンガード】!」
劣勢に追い込まれた冒険者はスキルを発動してなんとかエステラから距離を
取ろうとする。
「無駄です。そのスキル、使うと動きが鈍くなるんですよね」
そうなの? 戦闘に関して素人の大地ではそういうのは全然わからん。
エステラはそう言って手のひらに光を出現させ、
そのまま冒険者との距離を一気に詰め、相手の顔を掴んで魔法を発動する。
「ま、まて、助け、」
「【マジックボム】」
ボンッ!
顔を掴まれた状態で魔法がさく裂し、冒険者の頭は爆発に包まれ、
目や口から煙を上げながら倒れこみ、戦闘は終了した。
「エステラ、ご苦労様、よくやった」
「はぁっ、はぁっ、はい!
お褒めいただきありがとうございます! ますたー」
大分息が上がっているな。初の実戦だし仕方ないかもな。
まぁ、焦っても仕方がない。
これから徐々に戦闘経験を積んで強くなればいい。
「大地さ~ん 生きてますか~?」
「おいこら、Pちゃん、てめー1人だけ逃げやがって、」
「仕方ないじゃないですか、わたし見ての通り戦闘能力ないですし」
「だからって置き去りはねーだろ」
「まぁまぁ、生きてるんだからいいじゃないですか」
「そりゃあそうだけどさぁ、」
「それよりエステラちゃんのご飯の方が先ですよ。あれだけ戦ったんですから」
言われてみればそうだ。
口ゲンカの前に食事にするか。
こうして初めての侵入者迎撃は特に被害もなく終了した。
とはいえ、今後のためにも更なる強化が必要だな。
「そういえば今回の侵入者はDPになってんのか?」
「ダンジョン内に一歩でも入ればその瞬間から本人の垂れ流してる
魔力の収集が始まってますから、当然入ってるはずですよ。
ダンジョン内で死ねばその時点での相手の身体に残ってる魔力はすべて
収集されます。」
どれ、確認のためにコンソールを開く、すると、
侵入者総魔力収集量 320DP
対象1 20DP
対象2 80DP
対象3 220DP
なるほど、侵入した順に獲得したDPが表示されるのか、この少ないのはレッドホーンラビットかな? で、あの顎ひげが80DPでちょっと強かった方が220DPか、強さの指標としてはもう少しデータがほしいとこだなぁ
ぐうぅぅぅぅぅぅぅぅぅ。
あ、いかんエステラがお腹を空かせている、すぐ食事にしないと。
これからのダンジョン運営を考えつつ俺はウィンドウを購入リストに切り替えた。
エステラ視点
楽に勝てると思っていた。ますたーが私の能力を見るために行った
戦いのときもゴブリンなんて10体いても私にかすりもしないのだから
人間が相手でも楽勝だと思っていた。
そして、そこに来て今回の侵入者はたったの二人。
2秒で片付けて、ますたーに優秀な私の姿を見てもらうはずだった。
だが、結果は…。
あの顎ヒゲの人間は思っていた通り、怪我をしていたとはいえ動きものろく、
隙だらけだったのに、次に相手をしたもう一人の人間は強かった。
決して力とか魔力で私が劣っていたわけでもないのに、
攻撃を受け流されたり、こちらの苦手なタイミングで仕掛けてきたりと
なかなか勝負を決めきれなかった。
あれが私の中の知識にある人間の戦闘技術というものなのだろうか?
いままでは力いっぱい身体を動かせば、かならずますたーのご期待に
答えられると思っていた。だが、違う。このままではいずれ、
ますたーのご命令を全うできない時が来るかもしれない。
いや、へたをすればますたーを危険にさらしてしまう可能性も…、
強くならなくては。
いかなる時でもますたーのご期待に応えられるように。
ますたーのご命令を遂行できるように。
戦いの後、
ますたーが用意してくれたオムライス?という料理はすごくおいしかった。
一緒に食べたパンプキンプリンというのはさらにおいしかった。
たとえこの命に代えてでも必ずますたーを守ろうと改めて心に誓った。
次回予告
自身の実力不足を痛感したエステラ。
ダンジョンの防備とDP家計簿に頭を悩ませるダンジョンマスター大地。
さらなる戦力アップを目指す二人の行く先は一体?
次回 強化月間! お暇なときにでもお読みください。