第025話「対大型生物戦3」
さーて、この先の展開を二通り考えているんだけど、どっちが面白いだろう、少し悩んでから決めようと思います。
「おー、要、お帰り~」
「水橋、準備は?」
「問題ナッシング!」
「よし、ゴブリン隊のみんな、もうひと頑張り頼んだぞ!」
「「「ハイ!分カリマシタ!」」」
「オーガ隊、ムラサメ隊、行けるか?」
「我らの全ては大地様の為に、いかようにもお使いください」
「ワタシタチモガンバリマス」
「だっちー、エステラっち達が帰ってきたわよ」
「分かった、みんな、作戦開始だ!」
迷宮の通路の先からはエステラ達がスノービッグヘアーと戦いながら、少しずつ後退し、大地はもっとも効果的に作戦を発動するタイミングを計っていた。
そして通路からエステラ達が飛び出した瞬間、大地は合図を出す。
「いまだ! 水橋!」
「行け! ビッグアクアスライム!」
水橋の命令で通路の出口の上に隠れていたビッグアクアスライムはスノービッグヘアーが頭を出したと同時に飛びかかり、ドプンッ! という音ともに完全に体内に包み込んだ。そのとたん、スノービッグヘアーは大いに暴れ、なんとかスライムの体内から脱出しようとするが、ビッグアクアスライムもその動きに合わせて動くので抜け出せず、呼吸も出来ずで苦しんでいる。しかもいままでエステラ達を圧倒していた動きは見る影もないほど鈍くなっている。
「思った通りだ、あいつ、体毛が重くなると毛をうまく動かせなくなってる!」
「このまま窒息してくれれば楽に片が付くな」
「それで済むならな、」
これまで数回に渡ってこちらの攻撃を跳ね除けて来た相手を前に大地は一切油断なく、スノービッグヘアーを見据えていた。
すると、幾度となくスライムの体内から脱出しようともがいていたスノービッグヘアーはだんだんと動かなくなり、体を丸めて静かになった。
「お、くたばったか?」
「・・・・。 セブルティス、確認を頼めるか?」
「畏まりました」
大地の命令でビッグアクアスライムにセブルティスが近づこうとすると・・・、ドパアアァァンッ!!
突然ビッグアクアスライムの巨体が弾けて、辺りに大量の液体が飛び散った。
なにが起こったのか皆が視線を向けると、地面に大きなクレーターが出来ており、スノービッグヘアーはそのクレーターの中心で、腕を地面につけていた。
「な、なんてヤローだ、地面を殴った衝撃で俺のビッグアクアを吹っ飛ばしやがった、あんなのが存在していいのか!?」
「…あいつ登場する世界間違えてねーか?」
「現実逃避しないでください大地さん」
「もっちーもよ」
「いや、現実逃避するつもりはないよ、そのために作戦を考えてここまで誘導したんだから」
スノービッグヘアーはビッグアクアスライムを吹き飛ばし、水気を吹き飛ばそうと大きく身ぶるいをした、が、普通であればそれで多少なりとも水分が飛んでいくはずなのにそうはならなかった。そう、水分であれば飛んでいった、しかし、たった今までスノービッグヘアーを包み込んでいたビックアクアスライムの体内のほとんどは水分ではなく、実は油分で構成されていた。
~少し前~
〈水橋、聞きたいことがあるんだけど、〉
「ん、なんだ要?」
〈ビッグアクアスライムの体内のほとんどは水分と変わらないって言ったよな?〉
「ああ、言ったぞ」
〈それって別の液体を入れることは可能か?〉
「できなくはないな、実はアクアスライム系は歩く水桶と言われるくらいで核と被膜以外は液体であれば大抵のモノは体内に溜めておけるんだ。たとえばそれは泥水だったり、ワインだったり、他にも殺した動物たちの血をためている個体もいることからブラッディスライムという異名も…、」
〈なら、火種があればすぐ着火できる油をビッグアクアスライム溜めといてくれ! 消費したDPはあとで必ず返すから!〉
「油? まあ、いいけど、ちゃんと返せよ」
〈恩に着る!〉
というやり取りの結果、ビッグアクアスライムならぬビッグオイルスライムが誕生し、大地達はスノービッグヘアーにまんまと油を被せることに成功し、相手の身体は目論み通り油がべっとりとついていた。
「というわけで、先生! お願いします」
「こんな時だけ先生扱いとか、まったくもー、火炎魔法【ファイヤーショット】!」
大地に頼まれ、しぶしぶアネイルが魔法を放ち、体毛が重くて動きの鈍ってスノービッグヘアーにそれが命中すると、あっという間に火だるまになった。
「グガアアァァァァ!」
「でもあいつ、氷属性の塊だから、あの程度の火炎じゃたいして効果ないわよ」
「火炎だけならな、」
「え? どういう事?」
「こういう事さ、ムラサメ! あいつの周りを【形状変化】の壁でぐるりと囲んでくれ!」
「承知しました」
大地の指示でムラサメが壁を作り出し、スノービッグヘアーは火の中で閉じ込められた。
「火ってのは何かを燃やして発生してるんだ、この場合燃えているのは、油とそれから酸素だ」
「さんそ?」
原子論を知らないアネイルにとって普段吸っている空気に含まれている物質の事など知る由もなく、大地が何を言っているのかが初め、分からなかった。
「そう、そして密閉された空間で酸素が足りなくなれば、息ができなくなり、自然と…、」
大地の説明に合わせるように水晶に映し出されていたスノービッグヘアーは身体の火を消そうと転げまわりながら次第に動きが鈍り、今度こそ動かなくなった。
3分程、様子を見て、バックドラフトが起こらないように隙間を空け、セブルティスが確認して死んでいることが分かると、皆が一斉に歓声を上げた。
「「「「ウオオオォォォォォォォ!!!」」」」
「俺達ノ勝チダアァァァァァァ!」
「遂ニ倒シタゾー!」
パアアァァァン!
歓声を上げ、ゴブリンやオーガ達が喜んでいると一発の銃声が地下空洞に響き渡り、皆がハッとする。
「喜んでいるところすまないが、まだ1体目だ! あと5体、何が何でも倒すぞ! 見ろ!相手は決して倒せない怪物じゃない、その死体が何よりの証拠だ! 次の相手を迎え撃つ準備を始めてくれ!」
「分カリマシタ、アルジ様」
大地の呼びかけに、今はまだ戦いの最中だという事を思い出したモンスター達は自分たちの武器を再度確認し、次の相手に備えていた。
「で、備えるのは良いけどよ、どうやって残りの5体倒すつもりなんだ?」
「・・・・・・どうしよっか?」
実は大地は先ほどバラバラにされてしまったビッグオイルスライムを残り5体にも使おうと考えていた。しかし、スライムの体内から抜け出されることは想定していた大地だったが、まさか木端微塵に吹っ飛ばされるとは思ってもみなかったのである。
「アホか! 今からビッグアクアスライムを再購入したとしても追加の油の分には到底DP足んねーぞ!?」
「俺もここんとこ地下要塞の拡張にDP使ってて、すっからかん」
「あー、終わったんじゃね? 俺ら、」
「もっちー、あきらめ早すぎ、」
「つったってダンジョン歴2年の俺でもこんなの攻略法思いつかねーよ、単純に手持ちの火力が足りない」
「ドラゴンでも居れば、」
「だからDP足んねーだろ!」
「うう、…Pちゃん、何かいい方法ない?」
「Dちゃんも何か提案ねーのか?」
「そうですねぇ、……今の手持ちじゃお手上げですね」
「右に同じくないわよ」
「「ort」」
水橋と二人でひとしきり絶望し終わった後、とにかく1体目をここまで誘導してくれたエステラ達を労おう視線をさまよわせると…、やはり大分疲弊しているのか、エステラもセブルティスも汗をかき、ムラサメに至っては膝をついて疲労感がこちらにまで伝わってきた。
「3人ともご苦労だった、2体目が来るまでに少しでも食事を取って魔力を回復してくれ」
「かたじけない」
「ありがとうございます大地様」
「いいえ、マスター、私はまだまだ…、」
「いいから食え! まだまだ戦いは長引くんだから、それとも口移しで食わせてやろうか!?」
「! は、はい、マスターのご命令とあらばぜひ!」
「じゃ、一回逆らったからまた次回な、さっさと飯食って来い」
「そ、そんな~!」
エステラとのやり取りで少しだけ普段の調子を取り戻した大地はなんとか勝つための目算を付けようと頭をフル回転させ始めた。
現状で考えられる手段は、酸素がなくなって呼吸困難で死ぬのは分かった。だったらそれを利用できないか? DPはないけど、水を満たした部屋を作ってそこに誘導して、ダメだ。DP無しで作る時間もそんな大量の水もない。 魔法で作るか? でもあの巨体5体分を納めるだけの水量を魔法で作るとなるとアネイルでも厳しいだろうし、くそ、マジでもうどうすりゃいいんだ!?
「アルジ様、2体目ガ来マシタ」
「ち、早すぎだっての!」
考えが一向にまとまらないまま、とうとう2体目が迷宮を抜け、地下空洞に到達した。
「要、なにか浮かんだか?」
「水橋は?」
「「・・・・・・・・・。あるわけないよなぁ、」」
「最悪、地下要塞の奥にある隠し通路さえ見つからなければ俺達のコアは生き残れるな」
「けど、その時はせっかくここまで築き上げたモンスター軍団も失い、多分アネイルも[魔紙]の呪い覚悟で見捨てた俺達に復讐しに来るだろ」
「やるしかないか、」
「どうせ全滅するなら、裏切らない方がまだ生存率高いだろ」
「だな、よし、全スライム軍団は要のゴブリン軍団を援護しろ! 一秒でも長くスノービッグヘアーの動きを足止めするんだ!」
「ゴブリン隊総員近接戦闘用意! オーガ隊、ムラサメ隊は先頭に立ってどんどんダメージを与えるんだ!」
勝機の薄い消耗戦、誰の目からみてもそれは明らかだった。しかし、それ以外に残された手はもう大地達には残されていなかった。
一方、地下要塞食堂にて、大地に食事を取ってくるように言われたエステラ達はホブゴブリン達にありったけの肉を焼かせて、それを水でも飲むかのようにどんどん飲み込んでいた。
「早く回復しないと、」
「気持ちは分かるがもう少し落ち着いて食べたらどうですかエステラ殿?」
「某も同感である」
「そんな暇などありません、私たちが抜けた状態で大地様にもしものことがあれば、」
「某のムラサメ隊とオーガ隊もおるのだ、そうやすやすと敗北はせんと思うが、」
「勝つという保証がゼロなのに何を楽観視しているのですか!」
「…確かに、我ら三人でかかっても倒しきれぬ相手、いくら某のムラサメ隊がゴブリン隊やオーガ隊より強いと言ってもそう言われれば勝てる保証はほぼないな」
「ですね、では、私たちも少し食事のペースを上げるとしますか」
「それにしてもエステラはすごいペースで食べておるな、普段の食事量をとうに超えているのではないか?」
「食べても食べてもなかなか魔力が全快にならないのです、とにかく今は詰め込めるだけ詰め込まないと、待っていてくださいマスター! 回復次第、すぐにおそばに参ります!」
3人の食事ペースはそこからさらに早くなり、戦闘態勢で調理担当も半数が抜けている今の調理場はまさに第二の戦場のような様相を見せていた。
次回は、
決定打となりうるものがない中、2体目との戦いが始まってしまった。果たして大地たちは無事生き残れるのか?




