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ダンジョン経営勉強中。  作者: イマノキ・スギロウ
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第012話「どうしてこうなった?」

早めにできたのでUPします。

「セブルティス、ちょっといいか?」


「はい、なんでしょう大地様」


「いや、ちょっと急な来客があるから食事の支度をする人数を増やしておいてくれ」


「は? はい、わかりました」


「頼むな」


 セブルティスに食事の支度を頼み、俺は出迎えの準備をするために自室に向かう。


 先日の助けてくれのメッセージ、詳しい状況を確認したところ、どうやら自分の所のダンジョンが攻略されかかり、なんとか生き延びたものの、次の攻撃には耐えきれないという判断で出したものだという事がわかった。


 それに対してPちゃんから出た提案が、「じゃあ、一時的にこっちにお引越しするのはどうですか?」

というぶっ飛んだ提案だった。


「引っ越しってそもそもダンジョンの場所なんて変えられるのか?」


「そのダンジョンのマスター、この場合は大地さんですが、本人の承諾があれば、他人のダンジョンコアをダンジョン内に移設することは可能です。コアをこっちに移して、本人たちはのんびりこっちに来れば一時避難する分には大丈夫かと、もっとも自分の心臓を他人の手の中に入れるようなものなので、普通は本当に信頼できる仲間同士くらいでしかこの方法ってほとんど使われませんけどね」


なにそのチート、


「つっても俺のダンジョンの位置相手は知らないだろうし、俺もこのあたりの地理を知らんから教えようがないんだけど、」


「その心配は無用です。自分のコアがある位置はどんなに離れててもシステムでわかるようになってますから」


 前から思ってたけど、このダンジョンのシステム無駄に多機能だよな。 


「ただ、これはよその人間に自分のダンジョンの位置を教えてしまうのである意味、危険な行為です。大地さん、本当にいいんですか?」


「いいよ、裏切った時はこっちもたっぷりと報復の手段を考えるだけさ、それに…」


「それに?」


「きな粉派に悪い奴はいない」


 Pちゃんが呆れ果てているが気にしない。

 そう、SOSを発してきたのは何を隠そう俺と同じもちはきな粉派こと、水橋(みずはし) 望太郎(もちたろう)さんなのだ。彼とはダンジョン強化のチャットのあともいろいろな事で話をして意気投合し、よき友人となっていた。だからこそ、情報をくれた恩義もあるし、友人として見過ごせないというのもあった。


というわけで、水橋さんと連絡を取り、一時的に俺のダンジョンに避難するという事で話がまとまったので、さっそくコアの移設を行い、今現在は俺のコアと仲良く並んで設置されている。


 水橋さんも今日の夜までには到着するとメッセージで連絡が来たので出迎えの用意をしているところなのだ。


「大地さ~ん、アウラウネちゃん達とゴブリンちゃん達にお客を襲わないように通達してきました」


「おぉ、ありがとう、まだこのあたりに水橋さんの姿は見えないか?」


「ちょっと待ってください、今【千里眼】で見ますから、……あ、居た。それっぽいのがいます」


「じゃ、出迎えるとするか」


 俺はPちゃんとともにダンジョンの入口まで出向き、水橋さんが来るのを待った。

しばらくすると大きなバックパックを背負った少々小太りの俺よりも年上と言った印象の人が歩いてきた。 見た目は黒髪で俺と同じ日本人風の顔立ちだ、おそらくあれだな。


「おーい!」


「おぉ、お前が要か?」


「そういうあなたは水橋さんですね?」


「ああ、にしてもこうして顔を合わせると字で話すのとはまた違った印象だな」


「文章だと俺かしこまるタイプですから」


「なるほど、」


「まぁ、こんなダンジョンの入口で立ち話して誰かに見られてもまずいですし、とりあえず中へ」


「おう、サンキュー」



そうして最奥の間で俺、Pちゃん、エステラ、セブルティス、水橋さんの五人で会談の場を作り、水橋さんの現状を聞いた。


「正直に言って、もうあそこでダンジョンを維持するのはかなり厳しいと思ってたんだ。転生初日から2日に一回のペースで侵入者があったのは話したっけ?」


「えぇ、チャットで愚痴ってましたよね」


「ああ、それどころか最近だとほぼ侵入者が来ない日がないってくらいでな、」


「よく持ちこたえてましたね」


「侵入者が多いってことは自然と入ってくるDPも増えるからな、つまりダンジョンを強化するための費用にはそこまで困らなかったんだ、ただ、モンスターは作った端から倒され、トラップは設置した端から突破され、でもう完全に自転車操業みたいな状態でな、撃退し終わったあとにはほとんどDPが残らないんだよ、おかげでいつコアが潰されるか気が気じゃなかったわ」 


「それはなんというか、ご愁傷様ですね」


「まぁ、もっちーのダンジョンは王都に近い場所だったから仕方ないわね」


 ん? だれだ?


「あ、すまん、紹介するの忘れてた。 おい、Dちゃん自己紹介しとけ」


「えー?めんどくさいからもっちーやっといてよ」


「自分でしろ!」


「もぉー、初めまして、ディーレ・ペレニクス・ププ・ルインです。略してDちゃんって呼んで頂戴」


 水橋さんの所のPちゃん的存在か、見た目は紫色なこと以外はPちゃんとほぼ変わらないな。


「んじゃ、こっちも紹介しときますね、Pちゃん」


「…はーい」


 あれ? なんかPちゃん機嫌が悪い気がする。


「ピーポ・プライアス・ポポ・マリネです。Pちゃんと呼んでください」


「こりゃどうもご丁寧に、俺は水橋 望太郎です。以後宜しく」


「あら、あんたこんなとこに居たのね」


「黙ってろディーレ」


「おお、怖、や~ねぇ結婚も出来ない人は心に余裕がなくて」


「てい、」


「あぶな! なにすんのよ」


 PちゃんはくちばしでDちゃんの頭を的確つつこうとするが、すんでのところで躱された。


「いやぁ、虫が止まってたので取ってあげようかと、」


「思いっきり突き刺す気だったでしょ!」


「ち、気づいたか」


「気づくわよ!」


 どうにもPちゃんとDちゃんは仲が悪いようだ、ま、当人同士の問題なのでひとまずほっといて俺は話の流れを元に戻すことにする。


「で、話を戻しますけど、水橋さんから送られてきた二通目のメッセージに今回の戦いで大きく戦力を消費してしまったから助けてほしいってありましたけど、何があったんです?」


「ああ、いままでずっと俺がダンジョンに来たやつを撃退し続けたことで、近くにあった王国の連中が業を煮やしたらしくてな、王都から大規模な攻略部隊を編制して攻め込んできたんだ。中には騎士団っぽいのまでいてせっかく成長させたメイジスライムやギガントスライム、結晶スライムなんかも根こそぎ倒されちまったんだよ。おまけにあいつら引き際に『次こそが決戦だ!』とかぬかしてたからな、モンスターがほとんど全滅した状態でもう一回は防げないと思ったからフレンド全員にメッセージを飛ばしたんだ」


 そういう経緯だったのか、あり、ちょっとまてよ? 


「てことは今頃、その攻略部隊って水橋さんを探しているんじゃ」


「一応、奴らが陣取ってたメインの入口は使わずに、こっそり作った別の入口から脱出してここまで来たから大丈夫だとは思うんだけどな」


 本当に大丈夫かな?


「それより、要、そっちの後ろに居るのがお前が話していた?」


「あぁ、そうだよ。俺のクリエイトモンスターのエステラとセブルティスだ」


「ふ~む、なかなか良い造形してるなぁ」


「そういう水橋さんも自慢していた子がいたでしょ」


「あぁ、そうだな。ここまでくればもう大丈夫だろう」


 そういうと水橋は自身の持ってきていたバックパックを開き、中からコルクで栓をした液体の入った大きいビンを取り出した。そしてその栓を外すと、いきなりひっくり返し、中身をすべて床にぶちまけた。見ていた者の大半は床がびしょ濡れになると考えたが、その液体は広がらず、ひとつの塊としてぐねぐねと動いたのち、人の形になったかと思うと水橋に寄り添うようにして立ち、きれいな所作でお辞儀をする。

 なんというか、魅力的なボディラインをしたショートヘアの女の子みたいなスライムだ。 


「紹介するよ、俺の大事な相棒、ヒューマンスライムのスレイだ」

 

「へぇ~、レア進化したスライムを生で見るのは初めてです」


 レア進化?


「Pちゃん水橋さんのスライムについて知ってるのか?」


「くわしいスペックについては知りません、ですが、あの水橋さんと一緒に居るスライムは特定の条件を満たさないと、進化できないタイプのモンスターなんです」


 へえ~、そういうのもあるのか。 そういえば以前のチャットでも言ってたような…、


「そういえば、水橋さんはクリエイトモンスターはいないんですか?」


「冒険者がわんさか押し寄せてくる中でじっくりとこだわりのモンスターを作る暇があると思うか?」


「どう考えてもないですね、すいません」


「まあ、急げばできなくもなかったかもだが、即席で妥協したモンスターに1000DPの出費は痛すぎるだろ」


 水橋さんの言葉に俺は大いに賛同する。クリエイトモンスターは召喚した後、容姿等の設定を変更できなくはないが、そのためにはクリエイト時と同額の、つまりまた1000DPが必要になる。以前、エステラの設定ミスのあと、もう間違わないようにいろいろ調べて知った時、つくづく後悔したからだ。



「合計2000DPも払うくらいなら、既存のモンスター育てながら、安定するまで粘った方が俺は良いと思ったんだ」


「確かにそれはそうですね」


 俺もその状態なら同じようにすると思う、やっぱり自分で作るなら納得できる出来栄えにしたいしな。



「だろ? 自分の理想の造形ができるのにそれをしないなんてのは自分に対しての裏切りだからな」


「だよなぁ、…ところで水橋さんはボディラインへのこだわりはあります?」


「決まってんだろ。上に関しては大きいのも小さいのもそれぞれに魅力はあるが、そこから下にかけてなら、流れるような曲線から来るくびれと程よく膨らんだ安産型のラインに勝るものはない!」


「あなたとはいい酒が飲めそうだ」


「おお、要、分かってるじゃねぇか!」


「そっちこそ!」


 俺は水橋さんと、否、友である水橋と熱い握手を交わし、その後の夕食では互いにたっぷりと酒を飲み交わした。





「……ち…さん…」


「…だ…ちさん…」


「だいちさん!」


 う~ん、頭痛い。



「こら~、もっちーもいい加減起きなさい!」


「か、勘弁して~ おぇ、」


「あー吐くなら向こうにしなさい! こっち向けんな!」



 二人して完全に二日酔いだな。



「大地さん、いいから起きてください!」


「そう大きい声出すなよPちゃん、頭に響く」


「それでも起きてください! エステラちゃんがいなくなってしまいました!」


「うちのスレイもよ!」


 ちょっと酒盛りして酔いつぶれていただけなのにどうしてこうなった?

 次回予告


 いなくなったエステラとスレイ、二人の行方は?


 

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