第011話「計算通りだよ」
3日後とか言っときながら時間がかかってしまい、申し訳ありません。
次は明日中にあげられるので待っててくれた人がいた場合はどうかお許しを。
「大地さん」
「なんだ? Pちゃん?」
「いえ、このところずっと、聞こう、聞こう、と思ってい事があるんですが、」
「Pちゃんから俺に質問って珍しいな、いったいなんだ?」
「いえ…、あの時から全部考えてこうなるようにしてたんですか?」
「あったり前だろう? 計画通りだよ」
「はぁ、……どう考えても運の要素が大分強かった気がするんですけど、」
「そ、そんなことないよ。全部計算してこうなってるんだよ」
「ほんとですか~?」
「ほんとですよ~?」
「あ! 今疑問形になった! やっぱり偶然の要素が強かったんだ!」
「いや、そんなことはない……ぞ」
じ――――――――、
うぅ、愛らしいひよこであるハズのPちゃんの視線がすごく怖い。
「P様、マスターを攻めるのはおやめください」
「そうはいいますけどねエステラちゃん、あんまり大地さんを甘やかすと、今度は何を考えつくかわかったもんじゃないですよ?」
「ならば、その時は私たちの持てる力のすべてを持って、マスターのその崇高なお考えを実現するための支えとなるまでです」
「うわぁー、エステラちゃん、かわいそうな子。」 ホロリッ
ごく自然にディスられてる俺はかわいそうじゃないんかい。
まったく、一回おしおきとしてPちゃんの夕食に焼き鳥でも出そうかな?
…いや、ダメだこの間ニワトリの丸焼きを一人? で完食してやがったからな、
自分の親ともいえるような存在を完食できるやつに焼き鳥なんて
おやつにしかならん。
「大地様、そろそろお食事の時間ですが、こちらにお運びいたしますか?」
「お、ありがとうセブルティス、じゃあとりあえず食事にしよう」
さて、いま俺こと、要 大地は大事な仲間であるエステラ達と一緒に食事をしているわけだが、なぜのんきにここに居るかと言うと話はあの戦いで俺とエステラ達が光に包まれて消えた瞬間までさかのぼる。
「さあ、走れ走れ! はーっはっはっは…、」
光に包まれ消えた大地とエステラ達は次の瞬間、
先ほどの崩落が嘘のような静けさの空間に出現した。
なぜ大地達がそんな空間にいるのかと言うと、
それは-紅の剣-のメンバーが最奥の間に来る前、
大地が四種類のある物をダンジョン内に設置していたためであった。
一つは転移陣、二か所に設置することでいつでももう片方の転移陣に移動が
可能な代物で、先ほど光に包まれた大地とエステラを運んだのもこれだ。
さらに二つ目は新しいダンジョンの小部屋だった。
先ほど戦ってい最奥の間から隠し通路でつなげた離れのような作りの部屋で
耳を澄ますと離れたところで岩や土が崩れる音が響くのが聞こえてくる。
「ふぅー、なんとか作戦の半分はうまくいったな。」
俺は肩の力を抜きながら、コンソールをいじりつつそういった。
「ますたー、先ほどはお守りできず、本当にすみませんでした」
「だから気にしなくていいって、どうせあの時殺されたとしてもこっちで復活できたしな」
大地の視線の先には先ほど破壊されたのと同じ、いや、本物のダンジョンコアが鎮座していた。
ちなみに女戦士のメルーによって破壊されたのは大地が三つ目に設置したダミーのダンジョンコアである。
「ですが、私たちが大地様を守れなかったのは事実です。どうぞいかような罰でもお与えください」
「んじゃ、放置プレイでよろ」
「大地さん……、」
「そんな目でみないでよPちゃん、」
「まあいいです、それにしてもまさかあそこまですんなりと彼らがダミーコアを本物だと信じるとは思いませんでしたよ」
「そう思い込む様に相手の考える余裕を奪ったからな」
「あの二人に吹き込んだ情報と部屋に設置してた爆薬ですか」
大地の設置した四種類のうちの最後の一つ、それが購入リストからありったけ買った爆薬であった。
本来は地雷のように使用して、相手の足止めに使用しようと考えていたのだが、起爆装置付きではなかったので手動でしか起爆できないことに後になって気づき、結局冒険者たちの素早い立ち回りに大地では対応できず、使われずじまいになるところだったのだ。
しかし、大地はダンジョンが崩落するという(本人は向こうがそれを知っているとは知らないが)情報を植え付けるためにダミーコアを破壊されたのと同時に自分たちに被害がでない範囲の爆薬から順に起爆させ、ダンジョン崩落を演出したのであった。
「ところで大地さん、何やってるんですか?」
「ん? ちょっとあいつらに本当の崩壊だとそれっぽく思わせるための演出」
「それっぽくねぇ」
「ま、見てなよPちゃん。これから仕上げにはいるから」
大地はウィンドウを出現させ、マッピング機能でダンジョン内を進む-紅の剣-のメンバーを確認する。
「やつら、もう少しで外に出るな」
「みたいですね」
「よし、順次爆破開始だ」
「へ? こっちにも爆薬仕掛けてたんですか?」
「まあね」
本当は転移で小部屋に来てから大慌てでコンソールを操作し、設置しては爆破の繰り返しでダンジョン崩落を演出しているのだが、大地はカッコ悪そうだからという理由でそれは口にしない。
そして大地は順番に爆薬の起爆アイコンを押していき、-紅の剣-のメンバーが外に出ると同時に残っていた爆薬のアイコンをすべて同時に起爆させた。
「よし、作戦終了」
「おめでとうございます。マスター!」
「おう、ありがとなエステラ。 なあ、Pちゃん」
「なんですか?」
「千里眼ってさすがに声は聞こえないか?」
「たしかに千里眼で音は拾えませんが、私は読唇術ができるので多少なら読み取れますよ」
「よし! 大丈夫だとは思うんだけど、わかる範囲でいいからあいつらの会話読んでくれ」
「分かりました」
Pちゃんは読み取った会話の内容をほぼそのまま大地に伝え、それを聞いた大地は満足そうにうなづいてガッツポーズを決めた。
「よっしゃ! これでもう大丈夫だ」
「大地さん、まさかこれが狙いだったんですか?」
「そうだよ。いつ来るかわかんない侵入者に怯えるくらいなら、最初から死んだふりして力を蓄えてから勝負したほうが利口だろう?」
「うわー、せこー、」
「せこい言うな」
「DPはどうするんですか?」
「それについても当てはあるよ」
「地脈と動物でちまちまいくなんて言わないで下さいよ」
ギクッ!
大地は自分の考えが見透かされないようにコンソール目を落とす。
「ん、これは、」
大地はマッピングで自分たち以外にダンジョン内で光点がついている事に気が付いた。7つ程固まっている青色の光点、これは味方のゴブリンか?
全部やられたと思ってたけど、生き残ってるのが居たか、よし、あいつらも大事な戦力だ救助にいくか、
「おーい、Pちゃん、セブルティス、エステ…ラ?」
大地は一瞬自分の目が悪くなったのかと思い、数回程こすってから
再度エステラの姿を確認する。うん、錯覚じゃねーな。
「エステラ、お前その姿どうした?」
「え? 私の姿がどうかしましたかマスター?」
大地に言われ、自分の姿を確認するエステラ。そして本人もようやく自分の身体の変化に気づき、驚きをあらわにする。
「え? え? これは…、私、成長したの?」
さきほどまで十歳くらいの少女の姿だったエステラは見た限り十六~七歳程の女子高生くらいまで成長している。
「多分、あの冒険者たちとの戦いによる経験値が一定のラインを超えたのでレベルアップとともに身体の成長をも促したのでしょう。」
「レベルはともかく体の方もそんな急成長するものなのか?」
「種族にもよりますが、エステラちゃんはクリエイトモンスターでもありますし、大地さんの設定した容姿になるようにプログラムが働いてますから、こういうことも起こり得るかと、正直私もこのあたりのメカニズムは専門じゃないので詳しくは分かりません」
「ずいぶんといい加減なシステムだなぁ」
とはいえ、エステラが成長し、強くなったというのなら、それはうれしい誤算だ。
セブルティスと並ぶと美男美女といった感じだな。自分で設定しておいてなんだが、自身の容姿と比べてしまって悲しくなった。
「で、大地さん、さっき私たちを呼んでどうするつもりだったんですか?」
「あぁ、そうだった、ゴブリン達の生き残りがいるみたいだから、ちょっと救助にな」
「ではマスター、お供させていただきます」
「おう、頼むな」
「はい!」
「大地様、では私も、」
「マスター、ゴブリンを助けるのに私たち全員は必要ないかと、セブルティスには崩落したダンジョンの後片付けを行ってもらうのが良いかと、」
「それもそうか、じゃあ、セブルティス、ちょっと先に洞窟内に散らばってる岩とかをひとまとめにしといてくれないか?」
「大地様がそうおっしゃるのであれば…、」
気のせいかセブルティスが悔しそうな顔をしている気がした。
あれ? あいつたしか間違いなく男で設定したよな? どういうこと?
さて、それから一ヶ月、ひとまずダンジョンも入口以外は元通りになり、戦力もアウラウネが20体、ゴブリンが80体、ホブゴブリンが24体、さらにオーガが3体と以前よりもだいぶ強力になった。
加えて、今のダンジョンは入口まわりからして植物で完全に覆っているので、かき分けて草を取り除かないと入口そのものが見えない仕様になっている。これならそうそう侵入もされんだろう。あれ? ダンジョンってなんだっけ?
あと戦力強化としてやってないのはここのところ忙しくて試していなかったあの二つを実行に移す事くらいか。
そう考えてコンソールを開いたら、フレンドからメッセージが来ていた。文面はシンプルに、
助けてくれ!
なにがあったし、
次回予告
大地に届けられた助けてくれ! のメッセージ、
ダンジョンマスター大地に今度はどんな困難が襲ってくるのか!?
次回 どうしてこうなった? お暇なときにでもお読みください。