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Synthetic School  作者: 南雲 楼
一章 魔法学園、非日常
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6

「あー、なるほど。魔法って最近見つかったモンなんすか」


「最近……んー二十年前くらいかな。正確には分からないけど。歴史的には最近の部類に入るんじゃないかな。それでようやく実態が掴めてきたから試験的に魔法教育を行う学園が建設され始めたの。まあ、魔法の歴史は授業で習うことだからそっちで聞いてね」


 歴史は専門外だし、と柴田は笑みを含んだ調子で話す。


 にこやかな表情で話していた養護教諭は急に表情を引き締めると、久炉と視線を合わせた。

 反射的に視線を逸らす。目だけを動かしてちらりと柴田を窺うと、彼女の目線は花火と交わされていた。



「勘違いしないでほしいのは、悪意があってポイント制を導入したり、生徒を学園に三年間閉じ込めたりしているわけではないということ。……生徒にとっては学校側の意思なんてお構いなしだと思うけどね。私が生徒だったら反発すると思うし」


 大仰なため息。学校側にもいろいろと悩みはあるのだろう。単純に学校のシステムだけ聞けば生徒の反感を買うのも無理はない。

 事実、久炉も花火も昨夜学校の制度や環境についてボロクソと言っても言い過ぎでない意見交換をしていた。

 それでも、こういった教員の意見を聞くと少し罪悪感が湧く気がする。


 花火と視線を合わせる。彼女の思考は分からないが、何かしらの感情を抱いているのだろう。表情からして、柴田の話に納得できていない。ような気がする。

 正直、昨日が初対面であって詳しい表情の変化がまだ分からない。



「さて、もうすぐ会議あるから出てってくれる?」


 柴田は壁にかかった時計を確認すると、椅子から立ち上がった。そして、あ、と何かを思いついたように口を開いた。


「あんたら二人、魔法の練習した方がいいね。練習しても大丈夫な教室使えるように掛け合ってあげる」


「そんなことできるんすか?」


「できなくはないと思ってるから言ってる。自分の魔法の見極めは大事なことだから」


 腕輪をつけることで魔法を使えるようになる、その使えるようになる魔法の中には自分だけの魔法である“固有魔法”と呼ばれるものがある。

 これが腕輪をつけてしばらくすると自動的に習得できる魔法だ。


「……じゃあ、お願いします」


「うん。今日は疲れたと思うから、明日になったら練習場所の鍵取りに来て。職員寮にいるから」


 それだけ言うと、柴田はしっしと手を振って二人を追い出した。何というか、さっぱりした先生だ。嫌いではない。



「久炉、私達も行こうか。私も疲れたから寝たい」


「俺の方が疲れたけどな……」


 中学時代、帰宅部として慣らした身体だ。筋肉痛が起こることは目に見えている。筋肉痛どころか、爆風に吹き飛ばされた時の打ち身もある。今晩は眠れるだろうか。


「ねえ、あの女子のこと、後で詳しく聞いた方がいいかな?」


「あー……まだ入学式翌日で教員も新入生の顔と名前一致してないとかで詳しいこと聞けなかったしなー。また明日、柴田先生に鍵借りに行く時に聞いてみればよくね?」


 肯定する花火の言葉を聞きながら思う。あの女子生徒はアレで引き下がるのか? 彼女はポイント制を楽しんでいるようだった。また戦いを挑まれてもおかしくない。


 魔法の腕も確かなようだ。習得して一日も経っていないにも関わらず、的確に爆発で足元を狙ってきた。そういう魔法なのかもしれない。だが、そうだったとしてもかなりの魔法を操るスキルを持つとみていいだろう。


 それに比べて――と発動した自分の魔法を思い出す。派手な爆発。魔法を練習したとして、きちんと制御できるようになるだろうか。小さな不安を抱えつつ、寮へと足を進めた。



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