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Synthetic School  作者: 南雲 楼
三章 魔法、浸透
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16

「なんでこんなところでお前と会わないといけないんだよ……」


「マジ最悪……」


 敵意剥き出しで睨みつけてくる二人。面倒な生徒と会ってしまった。


「あー、えーっと、裕子と心愛だっけ? 久しぶりー」


 暴力事件の後の事情聴取で知ったことだが、茶髪の方が三好裕子、くすんだ金髪の方が宮治心愛というらしい。


「は!? お前に呼び捨てにされたくないんだけど!」


 できるだけ親しげに話しかけたというのにこの調子か。このまま話続けていては胃痛を起こしそうだ。二人は健康サンダルをぺたぺたと鳴らしながら、距離を詰める。

 服装と合わせて田舎のヤンキーかぶれといった印象だ。心愛に至っては平時同様に濃い化粧をしている。風呂に入った後のはずなのだが。


 怒りを滲ませた四つの瞳が体を射る。何故自分達に非があったのに、睨みつけてくるのだろう。

 最初に名月に喧嘩を売ったのはお前ら二人じゃないか。そう言ってやりたいところだったが、コンビニ内で戦いになるのは困る。



「お前らのせいで――」


 裕子は苦々しげに呟いた。久炉を睨む目に怒りや憎悪が募っていく。


「お前らのせいで、勝は謹慎食らったんだけど」


「ああ、らしいね」


 あの後、勝は二週間の謹慎を言い渡された。


 この学校での謹慎は校内ではなく、付属の更生施設で行われる。謹慎期間はそこで一人で課題をこなす。校外には出られないため、退学になることはない。

 さらに全寮制という他の生徒と関わらざるを得ない生活のシステムから隔絶させての処罰が必要となるためだ。


 しかし、謹慎の原因が生徒会側にあると言われることは心外だ。元々はこの二人が名月に喧嘩を売ったことが騒動の始まりではないか。責任逃れにもほどがある。


 できる限り穏便に済ませたかったが、こちらが悪いと主張する二人には憤りを覚える。完全に生徒会を悪者にしたいらしい。



 服に火でもつけてやろうか。そう考えが過った時、不意に背後から肩を掴まれた。


「あんたらさ、見苦しくないの?」


 頭の後ろから聞こえた花火の声。呆れと侮蔑をふんだんに含んでいる声だ。外見とは裏腹にかなり穏やかな人柄の彼女が珍しい。


「自分で喧嘩売っといて負けていつまでも因縁つけてってさ。相当恥ずかしいことだと思うよ」


 裕子は悔しげに歯を鳴らす。心愛は少し反骨精神に傷がついたのか、くすんだ金髪を指先に巻きつけながら、隣の友人と花火にちらちらと視線を向けるだけだ。


「そうそう。わかったら生徒会に関わるなって。またトラブったら惨めな思いすることになるよ? 今度は暴力事件の方の主犯の菊川君だけじゃなくて全員謹慎かもな」


 勝だけが謹慎となったのは、証拠があった事件が名月に対する暴力事件だけだったからだ。その前日の女子二人が名月に絡んだ件は久炉と名月の証言しかなく、物証が出せないため、二人の処罰には至らなかった。


 暴力事件の時の勝の取り巻きは魔法を用いた戦闘しかしていないため、お咎めなし。何らかの方法で学校側がそれを判別した。

 方法は生徒には教えてもらえなかったが、監視カメラでも設置されていたのだろう。



 自分たちが発端となった事件で仲間だけが処分を受けたことが気に入らなかったのか、裕子は急に目の色を変えて、久炉の肩を強く押した。鈍い痛みが走る。それほどに力がこもっていた。


「ってえな、何だよ」


「今、アタシら面白い計画立ててんだよ」


 漫画ならば口元にニヤリという擬音が描かれそうな笑み。何を企てている? そう聞こうとしたが、裕子は踵を返した。


「楽しみにしてな。お前ら生徒会はそこで終わりだからなー。覚悟しとけ」


 キャハハと耳障りな笑い声を上げて裕子は去っていく。心愛もそれを追う。扉の鈴の音。何も買わずに二人はコンビニを出て行った。



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