表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Synthetic School  作者: 南雲 楼
二章 生徒会、募集
35/160

21

 男子生徒の怒号。ひいい、と情けない声を上げる司。久炉はため息をついた。当たりか。魔法実習棟の影から校舎裏を覗き込む。


 男子生徒四人、女子生徒二人、それと名月。銀にも薄茶色にも見える髪で制服のズボンを腰ではいた男子生徒が、名月の胸倉をつかんで壁に押し付けていた。一番派手な外見からして、彼が頭か。女子二人は昨日の飼育小屋の件で名月に追い払われた二人だ。


 昨日の報復だろう。そんなにやり返したかったら男に頼らないで自分でやれよ、卑怯者が。久炉は内心で毒づいた。


「と、とりあえず、衣琉さんを呼んだ方がいいかな……」


「あー衣琉は……どっちでもよくないか? むしろ魔法で喧嘩にでもなったら、あいつ何もできないぞ。状況は伝えておくべきだと思うけど」


 ひそひそと声を潜めて話す。司は携帯を取り出すと文字を打ち始めた。

 衣琉に戦闘能力があるならば確実に呼ぶべきだ。名月を含めても三対六と数では圧倒的に不利であるため、戦力にカウントできるならば必要となる。

 だが、衣琉の魔法は彼女自身が亜空間移動をするだけで、全く戦闘能力はない。下手に呼ぶと衣琉が危険に晒されることになる。



「メ、メール、送ったけど……」


 司は不安げに目を泳がせる。再び状況を確認すべく、校舎の影から現場を覗き込んだ。


「だから、二人に謝れって言ってんだろ!」


「ずっと嫌って言ってるんですけど……何で動物のことも考えられない低俗な人間に謝らないといけないんですかあ……」


「ふざっけんな!」


 名月の嫌悪を含んだ言葉に逆上しているのか、男子生徒の顔は先ほど見た時より赤くなっている。名月も相手を逆撫でしてどうする。これは……一概にあの集団が悪いとは言えないのかもしれない。名月はさすがに言いすぎだ。


 見た限りでは誰かが魔法を持ち出していることはなさそうだ。名月も壁に押し付けられてはいるが、どこか怪我をしているようには見えない。

 肝が据わっているのか強がっているのかは久炉には判断できないが、男子生徒と正直あまり聞きたくない言葉の応酬が行われている。



「さて、どうしたもんかね。今のところ喧嘩にはなってないみたいだけど」


「え、あれ、喧嘩じゃない?」


「あー、喧嘩ってか戦闘だな、うん。戦った様子もないし、下手に割り込むと余計に話がこじれそうでな。お互いが謝ってくれれば多分一件落着するんだろうけど、そうもいかないっぽいし」


 ため息をつく。あの人数で謝罪を要求されても謝らず、さらに煽っているあたり名月はかなり頑固な部類に入るようだ。相手の集団もだ。お互いが引き下がる気配はない。話が纏まることはないだろう。

 だが、下手に仲裁に入っても、それを引き金に戦闘になってしまったら生徒会側は圧倒的に不利だ。


 とりあえず、と久炉は司の携帯を引ったくり、カメラを起動した。ムービーモードを選択。見つからないよう、レンズだけを現場に向けた。事態が悪化した時の証拠になる。それに、もし救援を呼ぶことになったら、戦いに向かないが、体力はあるだろうこの男子に携帯を持たせて走らせればいい。


 どうしたものか、久炉はマスクの淵を撫でた。ざらりとした不織布の感触が指に伝わった時、どこかで聞いたことのある音が聞こえた。バキッ、という何かに衝撃を与えた音――人を殴る音だった。


 慌てて校舎の影から顔を出すと、予想通りの光景が目に映った。鼻の辺りを拭う名月。拳を握りしめた男子生徒。面白くなってきたと言いたげな笑みを浮かべる取り巻き。ついに、男子生徒は怒りが爆発したらしい。


 彼は生徒会の介入を許す理由を作った。むしろ介入しなければならない理由となる。魔法戦闘以外で暴行を行うことは校則違反となり、生徒指導が発生する。生徒会としても彼を押さえなければならない。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ