勘違い
「ほらほら、みんな席に着きなさい。山野さん、怖い話をするのは結構だが、チャイムが鳴ったら座るようにして下さいね?」
先生は50歳のベテラン教師で生徒にもよく好かれていました。
山野というのは、彩音ちゃんの苗字になりますな。
「はぁ〜い! ごめんなさい。」
そしてこの日の夜のことです。
彩音ちゃんの話を信じ込んでいた…というより、『さっちゃん』に来て欲しくなかったクラスのみんなは、枕元にバナナの絵を置いて寝ました。
皮が半分むけているバナナ…何個もつながっているバナナと、それぞれ違います。
なんとも可愛らしい絵ですね〜…おっと、これは失礼しました。
しかし、これで油断してはいけません。
バナナを書いて寝なかった子が1人いました。
誰だと思います…? そう、彩音ちゃんです。
『作り話だから…』とか、『信じてないから…』とか思っていたのでょう。
その時の彩音ちゃんの気持ちは誰もわかりません。
ただ、彩音ちゃんはなにか勘違いをしています。
『さっちゃん』は、本当にいるんです…。
彩音ちゃんは、ふと目が覚めました。
時計を見ると、まだ夜中の2時。
…そのとき、どこからともなく歌声が聞こえてきました。
小さな女の子の透き通るような歌声…。