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影姫の暴走奇譚  作者: 綴何
本編
9/71

第八章

「そこの子」

「はい?」

 いつものように厨房から食事を運び出そうとしたとき、後ろから誰かに呼び止められた。

 表現するならまるで柊の木・・真っ白で細長い。服の色が私達とは違い、紺ではなく青なので、どうやら彼女は侍女長様らしい。

「なんでしょう」

「貴女ミケーレ様の身辺の子でしょう、一つ頼まれてくれないかしら」

「はい」

「この書類、テセヴル将軍に渡してくださらないかしら。あの方は姫身辺にあまり来られないから会えないのよ」

「分かりました」

 茶色の封筒を手に取った丁度そのとき、後ろからひょっこりとインファが現れた。

「あら、アユリじゃない?アーロズ女大将軍は元気?」

「・・アーロズは戦場以外牢屋から出ることを許されていません、お忘れですか?」

 ・・牢屋?

「それから、インファ殿・・私に軽々しく声をかけないでください、貴女と知り合いだと思われたら心外ですから」

 はっきり言うとそのまま後ろを見せて歩いていった。明らかな拒絶

「・・インファあの人になにかしたの?」

「してないわ、あの人の姉・・アーロズっていう方がいるんですが、その人のこと大嫌いみたいで、私と似てるところがあるみたいです」

 インファのような女将軍?

「何で、牢屋に?」

「あの二人のお父上は、もとは巨人族でその豪快さと破壊力をアローズは受け継いで、先の戦いのとき、魔法使いの罠に幾戦もの兵士が命を落としていき、その時女性だけの軍『聖女隊』が救援に向かったのです」

 聖女隊は普通の兵士とは異なり、魔法使いと同じような不思議な力をもつ戦いのエキスパート集団、と聞いたことがある。魔法使いも聖女隊が苦手らしい

「そのタイミングであの人は力を溜める余裕ができ、魔法使い共が一気に集まったそのときに己の持つ力を爆発させた。・・そして、彼女以外の敵も、味方も・・全滅した」

「え!?」

 その戦は結果痛みわけで終わり、でも数少ない聖女隊や立派な大将軍達を殺した罪によって、戦争のとき以外は牢屋で終身を終えることになった。

「あ、そうだ、この書類テセヴル将軍に渡さないと、でもその前に私食事運ばなきゃいけないから持ってて」

「かしこまりました」

 部屋に戻り、ミケーレの目の前で食事を並べていく。・・とシーヴァーがインファの手に持っているものに目を留めた。

「インファ」

「あ?」

「それは?」

「恐らく内密の指令」

「誰からだ」

「アユリから、テセヴルさんへ」

「・・アユリ殿の母君はアマンサ様の乳母だったな、信用がある・・となると」

「なかなか、重要なもの・・かしら?」

 ミケーレが終えた食事を片づけしていると、インファとシーヴァーが書類の中身を勝手に見ていることに気がついた。

「ちょっと!何勝手に開けているの!?私のせいになるじゃない」

「まぁまぁお嬢様、無表情よりも怒った顔のほうが可愛いですよ?」

「誤魔化さない!」

「どうかしました?」

 扉の向こうからテセヴルが現れた。インファがいい笑顔でお届け物ですと封の開いた封筒を渡した。

「え・・開いてる?」

「目の錯覚ですわ第二将軍」

 いえいえ、錯覚じゃないですから。しかし将軍気にせず中身を見る、重要機密らしいのにこんなオープンでいいのか

「!」

「どうかしたのかな」

 ミケーレが首をかしげた。

「・・新たな『聖女隊』の創立を命ぜられました」

「聖女隊の?」

 普通の少女ではなれないと聞いたが・・?

「『能力』をもつ少女を探し出せと・・」

「それって重要機密じゃないんですか?」

「いえ、各部署にいる将軍クラスには伝わっていると思います・・近々調べを王宮内でも行うそうです」

 調べたら分かるんだー・・って能力もちって分かったら強制的に『聖女隊』になるの?

「能力ってどうやって判断するんですか?」

「魔法使いが魔法を使うとき、身体を包み込むような靄があるそうです、ソレが見えたら能力持ちだそうで・・男性より女性のほうが見える方が多いそうです」

 こんこん、ステラが入ってきた。

「マリーだけにこんなの届いた」

 黄色の手触りのいい紙で『徴集書』と書かれていた。

「なんだこれ」

「・・なんで、私はチェックする前に徴集決定なんですか・・」

 将軍はサァって両手を挙げた。

 ・・なんで? 

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