第六章
私らはあれから一週間何事もなく掃除をしたり、花の手入れをしたり、服を用意したりと中々上手く生活できていた。
「ステラ」
「(うぉ、執事!)なんでしょう」
正直いまだこの男は苦手だ、昔からなんだか苦手だった。嫌いってわけじゃない、ただなんとなく苦手だった・・そもそも顔をみたことねぇしな。
「ミケーレ様のところにタオルを持っていってくれないか、私は他にすることがある」
「ワッカリマシター」
ふかふかのタオルを手にして入浴所に入る。
「ミケーレさま、タオルをお持ちしました」
「うわぁああああああ!」
お風呂場のほうでミケーレのずっこける音がした。毎回こけてねぇかコイツ。
「あ、ステラ」
「お?マリじゃん、お前は香水か」
「うん、切れてたの思い出したから」
棚に香水を入れると、そういえば・・とステラはお風呂場のほうを見た。
「おめーの兄貴こけすぎだろう」
「家でもよくあったけど、上がってからは特に酷いかな?」
二人は移動しながら空を見た。
「今日はいい天気だ、こんな日は洗濯物干して、作物に水やって、草むしって、妹らと編みもんして」
「・・忙しいね」
「私らはお貴族とは違うからな、その日その日に働かなきゃなんねー・・」
「・・私もステラと同じ生まれが良かった」
「そうだな」
厨房に入ると他の仲間がきゃいきゃい何か言い合っていた。二人が一息に飲むためのお茶を汲むと女の子達が二人を囲んだ。
「なんだ?」
「ねーステラ・マリー!貴方達シーヴァー様とお知り合いなのでしょう?」
「あー、まぁ少しはな」
「ヤッパリー」
女子達ははしゃぎだす、なんだ?
「じゃあさ、シーヴァー様のお顔を見たことがある?」
「顔?」
そういえば、いつも記憶の中での彼はいろんな色の仮面をつけていた、でもステラはそこまで深い関係でもないので、知らないのも当たり前だ。なんとなく知りたくもないしな
「あたしは無いけど、お前はあるんじゃねーの?」
そういってマリのほうを向くと、マリは考えるしぐさをした。
「・・うーん、あったような、ないような・・あまりにも一緒にいたからアレがもう顔に見えてきて」
「病的だな」
女の子は残念そうに声を上げた。
「インファなら知ってるかも」
「インファ様?」
「私が何ですって?」
「わ!インファ様」
女の子達は急いで身だしなみを整える。
「シーヴァー様のお顔見たことございますか?」
一人の女の子が恐る恐る聞くと、インファはきょとんとした。
「顔?」
「仮面の下ですぅ・・インファ様とシーヴァー様仲がよろしいから見たことあるかなーって?」
「・・さぁ?仮面の下は見たとないわね」
「仮面の下は?」
ただなんとなく引っかかったからステラがそう聞いたら、インファがにっこりと微笑んだ。
うん、黙ろう。
「お嬢様がご存知なのでは?」
「あ、インファ、ココではアナタのほうが上だから、『お嬢様』って敬語使わなくていいよ」
「そんな・・」
インファは口を押さえた。
「・・今更口調を変えろといわれましても、もう癖の領域ですわ」
「そうなんだ?」
「ちょっちょっとまって」
他の侍女がひそひそと言い出した。
「マリーってそんなに身分高かったの?」
「ジェンド・アナスタジア大公の娘ですよ」
「でも、そんなのココでは関係ないから気にしないで」
「・・」
女の子達はウッソーと悲鳴をあげた。
「こら、休憩の時間には早いぞ」
「し、シーヴァー様!」
蜘蛛の子をちらすように逃げていった。インファとステラとマリだけ残った。
「・・」
「・・」
シーヴァーとマリが沈黙したまま見つめあう。
(うああああ、どうするどうする?!てかどうすればいい!?)
(あぁ、なんかステラからも同族の匂いがする!!仲間!?)
ガイヤで盛り上がる二人・・
張り詰めた空気がだんだん酷くなる中・・空気を読まないものが一人。
「ねぇ!ボクの髪留め何処おいたっけ・・うぁ!?」
どさ!・・またコケタ。
いつもはイライラするけど、今回はよくやったと思うよ