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影姫の暴走奇譚  作者: 綴何
番外編
62/71

両親の懺悔

 我々ジェンド家は代々王族に仕えて、仕えて、仕えてきた。

 その歴史は深く、長い。

 敬愛している。

 その始まりは我らご先祖が王様に永遠の誓いを立てたことから始まる。

 

 昔王国内は荒れに荒れ、王は長く生きることなく暗殺死や病死を繰り返し、ウェザーミステルに付け狙われ、国は衰退の道をたどっていた。

 実はすべてウェザーミステルの呪いの魔法のせいだったのだが、当時のだれもがわからる術もなく、ただどうしようもなくうろたえているだけであった。

 そんな中もともとただの一般人だった我がジェンド先祖は反魔方陣の魔法を作り上げた。

 当時も、今も、魔法の使用方法を知ることも行うことも重度の犯罪だったが、先祖は魔法を完成させ人々を救おうと奮闘していた。


 されど誰も信じず、犯罪者としてとらえた。


 ただ村を救いたかっただけなのに。

 涙し死を覚悟した先祖の前に王は現れ、魔法の使用を許可し、見事反魔法を成功させた。王は先祖を褒め讃え、土地と爵位を与えた。

 我らの先祖は感激し、一生王に仕えその身をささげると誓った。

 その感謝の意思は今でも続いている。これまでもいくつもの難題を王と超えてきた、乗り越えてきた壁がある。


 それは誇りだ。

 

 命よりも大事な、誇り。

 我が一族の


 だけど


 わからなくなった。


 マリアンジェラ

 お前が私たちに初めて反抗した、別れとともに。

 二度と会うことはないのだろうか

 いまさらと笑うだろうか


 ミケーレ様も王になり、お前も去り、妻と使用人とだけの屋敷に・・なにか味気ないと感じるんだ。

 そして夢にみるんだ。

 あの時の必死に訴え泣き出しそうな顔をしたお前の顔を。・・今までお前の顔を真面目に見たことがなかったことに、その時気が付いたんだ。

 今では思い出すことすらできないんだ。

 

 なぜだろう。

 辛いのはお前のはずなのに、涙が止まらないんだ。

 大事なものを私たちは手放したようだ。


 「あなた。今日もここにいらしたのですか」


 お前の部屋にある鏡、いつもこれを眺めていたな


 「笑わなくて気持ち悪い・・そう言ってしまったことがありましたわ」

 「私も、女は話すものではないとアノ子の言葉をさえぎってしまった」

 

 お前を見ようとしなかった。

 後ろで妻が泣き出す気配がした。今更だ、そう今更だ・・。


 すまない。


 謝りたい、お前に。

 マリアンジェラ、信じてはもらえないだろうが・・本当にすまなかった。

 お前のこと、見ていなかった。

 お前のこと、考えていなかった。

 お前のこと、忘れていた。


 今更なんだと思うだろう。私たち自身、なんでだろうとわからない。なぜここまでお前を蔑にしてしまったのだろう。我々は家の誇り、国王への敬愛で、自分自身を見失っていたのかもしれない。

 お前はなぜ生まれてきたのだろうな・・。


 すまない。すまない。

 それでも

 生まれてきてくれて、ありがとう。


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