キャリアナの暴走
「ちょっと!テルーカ勝手に人の体使うな!え~いーじゃぁーん、死んじゃったンだぁからぁー」
一人で二人の声色になった。この声はテルーカとシュシュだった。
「っていうかいつまで人の中にいるつもり!?」
シュシュの能力は他人の脳を見る力。
テルーカは脳の情報を操る力。
それぞれ厄介な能力ではあるが、一番厄介なのは元ウェザーミステルの将軍の能力『同属に憑依』
パンドラの事件以来テルーカが飲まれる前に魂を回収し、自分が自爆する寸前に、シュシュに乗り移ったあのままだった。
「あれ?シュシュ嫌なの?」
「当り前さ!!」
すんごく迷惑そうにシュシュは言った。
「憑依の能力いつ解けるわけ!?さっさと死ねよ死にぞこないども」
「うわぁーひんどい言い方ぁー僕傷ついちゃったぁ」
「そうとはとらえられない言い方だけどな」
「お前も消えろよ!テルカ元将軍!」
「元つけるな、現在進行形だ」
「俺の体だよ!」
はたから見ればひとり芝居。
一人で三人分の会話をしているシュシュを遠くから眺める仲間たち。
中小国の一つ、アスランダ国の若き幹部たち。
「残念だけど、シュシュは会議にはもう参加させれないわね」
「といっても、最初っから役に立った情報めったに言わなかったけどな」
その継承者の一人、キャリアナは地図を片手に唸っていた。
(皆殺しにしちゃえばいいのに皆殺しにしちゃえばいいのに。戦争終結で油断しまくってゆるゆるのゴムひもの中に爆竹つっこんじゃえばいいのに)
キャリアナの姉、ルイツはアキレスと一緒に今後の話をしていた。
「このままではふつうに我々の国は国としての歴史を完全に失うでしょう」
「あぁ、疲弊しきっている兵士を倒すことは簡単だ。だが」
「分かっているわ。その兵士を倒す軍力すら私たちはないということ」
二人はため息をついた。
シュシュはこんなにもわけのわからない三人芝居している。
「シュシュキモイ!役にも立たないし!迷惑ばっかするし」
「してねぇし、ちびすけは黙ってろ」
キャリアナはじだんだ踏んだ。
「こうなったら私の超魔法ぶちかますんだから!」
「キャリアナ!!」
彼女はよくわからない模様をかたどったネックレスを取り出し、何かの古代魔法を叫んだ。
「どや!!」
光がネックレスから発せられ、出てきたものはダチョウのような、ヤギのような、ライオンのような・・動物。
「あ、ちぇっぴー」
テルーカがそういった。
「今のは普通に転送魔法だったな」
「きゃあああああああああ!屋敷が!!」
キャリアナはちぇっぴーをしばらく見つめた後
「シュシュがまたバカやったー!」
責任転嫁。
「てめ、ちびすけ!!あーぁ、ちぇっぴーおなかすいてるから止まんないよこりゃ。というかなぜこいつなんだ?お前らかってにしゃべんなぁ!!」
数時間後。
「ちぇっぴーいないと思ったら」
「どうしたあれ」
ウィルシアはステラと一緒に遠くからその様子を眺めていた。
「ほとんど壊されてるじゃないか」