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影姫の暴走奇譚  作者: 綴何
番外編
60/71

僕、ミケーレ

 

 この国、アースグランドの王様の第二妃ネルシオラ様の血と、みんなが嫌う忌々しい魔法使いの国の王様の血をひく僕、ミケーレ。

 殺すことも、城にとどめることも、醜聞を広げることを嫌い、平民に下げ流すこともできず、僕は国王が最も信頼している、アナスタジア一族のものになることになった。

 夫婦はなぜか狂信的なまでに僕をかわいがってくれた。あぁしろ、こうしろ、とうるさいこともあったけど、僕はなにもいえながった。

 マリアンジェラへの遠慮というのもあった。

 彼女はいつも無表情に僕を見つめていた。

 「それで満足?」

 まるでそう問われているような気がして、僕はいつも怖かった。彼女は僕を恨んでいるんじゃないんだろうか、恨んでいるだろう。恨まないわけがない。

 大事な家族を奪って、逃げている僕のことを、嫌っているに違いない。

 もし、僕が女だったら、違ったかな。


 女だったら、僕は王族でも関係なかったかな

 女だったら、マリアンジェラともっと親しくなれたかな

 女だったら、狂信的に二人はならなかったかな

 

 というか、僕が生まれなかったら……


 「えぇい!うっとおしい、しゃっきっとせんかい」

 首をつかまれ、投げ飛ばされた。

 「ぐふぅ!け、ケリー」

 ふん、と腕を組んで見下すさまはまさに男らしい。

 「どうせまた弱気になって考えておったんだろう」

 「そ、そんなことないよ」

 ケリーは僕が弱気になっていると、よく喝をいれてくれている。

 「ね、ケリーはさ、マリアンジェラとよく話すんだよね」

 「……そうじゃな、まぁ」

 また妹か、という顔されちゃった。

 「彼女は僕のこと、どう思ってるかな」

 「お前……」

 「僕って誰かの人生の邪魔ばっかりしてるんだよね」

 「自分は、邪魔だとはおもっておらん」

 「え?」

 顔を上げると、真っ赤な顔になったケリーがいた。

 「お前は確かに王族のくせに気弱で、女装したほうが幸せかもしれんが、心の強さは知っておるつもりじゃ……そんなお前のことがっ、じゃなくて、その、自信を持て!」

 「うん」

 ミケーレは微笑んだ。

 「ありがとう、ケリー」

 ケリーの手をひいて、抱き寄せる。

 「君だけだよ」

 「ななななな」

 「愛してる」

 唇を重ねる。

 僕男でよかったと、君といたら思えるんだ。

 君が女でよかったと、君といたら思えるんだ。

 出会えてよかった。

 でもたとえ僕が女で、君が男であっても、同性であったとしても

 「愛してあげられるよ」

 心も体も、全部


 僕は、ミケーレ。


 男だよ。

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