僕、ミケーレ
この国、アースグランドの王様の第二妃ネルシオラ様の血と、みんなが嫌う忌々しい魔法使いの国の王様の血をひく僕、ミケーレ。
殺すことも、城にとどめることも、醜聞を広げることを嫌い、平民に下げ流すこともできず、僕は国王が最も信頼している、アナスタジア一族のものになることになった。
夫婦はなぜか狂信的なまでに僕をかわいがってくれた。あぁしろ、こうしろ、とうるさいこともあったけど、僕はなにもいえながった。
マリアンジェラへの遠慮というのもあった。
彼女はいつも無表情に僕を見つめていた。
「それで満足?」
まるでそう問われているような気がして、僕はいつも怖かった。彼女は僕を恨んでいるんじゃないんだろうか、恨んでいるだろう。恨まないわけがない。
大事な家族を奪って、逃げている僕のことを、嫌っているに違いない。
もし、僕が女だったら、違ったかな。
女だったら、僕は王族でも関係なかったかな
女だったら、マリアンジェラともっと親しくなれたかな
女だったら、狂信的に二人はならなかったかな
というか、僕が生まれなかったら……
「えぇい!うっとおしい、しゃっきっとせんかい」
首をつかまれ、投げ飛ばされた。
「ぐふぅ!け、ケリー」
ふん、と腕を組んで見下すさまはまさに男らしい。
「どうせまた弱気になって考えておったんだろう」
「そ、そんなことないよ」
ケリーは僕が弱気になっていると、よく喝をいれてくれている。
「ね、ケリーはさ、マリアンジェラとよく話すんだよね」
「……そうじゃな、まぁ」
また妹か、という顔されちゃった。
「彼女は僕のこと、どう思ってるかな」
「お前……」
「僕って誰かの人生の邪魔ばっかりしてるんだよね」
「自分は、邪魔だとはおもっておらん」
「え?」
顔を上げると、真っ赤な顔になったケリーがいた。
「お前は確かに王族のくせに気弱で、女装したほうが幸せかもしれんが、心の強さは知っておるつもりじゃ……そんなお前のことがっ、じゃなくて、その、自信を持て!」
「うん」
ミケーレは微笑んだ。
「ありがとう、ケリー」
ケリーの手をひいて、抱き寄せる。
「君だけだよ」
「ななななな」
「愛してる」
唇を重ねる。
僕男でよかったと、君といたら思えるんだ。
君が女でよかったと、君といたら思えるんだ。
出会えてよかった。
でもたとえ僕が女で、君が男であっても、同性であったとしても
「愛してあげられるよ」
心も体も、全部
僕は、ミケーレ。
男だよ。