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影姫の暴走奇譚  作者: 綴何
本編
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第五十二章

 朝になった。出陣だ!

 パンドラの扉のあった場所にいくと、その上空で最強な盾が両手で何かを抑えているのが見えた。それと同時に悪寒が走った。

「なに・・この感じ」 

 聖女隊も怯む・・禍々しい気配が、ぞっとさせる。


「開放―――!!」

 クレト将軍のよく響く声が後方で聞こえると、エイジスは両手を離し、後方にと下がっていった。

ズズズズズズ!!!ハコノナカに閉じ込めたドライアイスを開放したとき、冷気が外に溢れるように、闇の気配が広がった。

「怯むなぁー!」

 アーロズ将軍が馬に乗って駈けてきた。

「敵を倒せ、撃て―――っ!!」

 聖女隊は体中に光を纏い、それを一気に敵にぶつけた。

『はぁあああああああああああああ!!』

 マリアンジェラはことを眺める。

 闇がうごめく、しかし、きいていないようだった。

「効いてないな」

 アーロズは眺めながら呟く

「ハレル君、後方に下がり、クレトのおっさんに撤退指示を言って来い」

「え?ですが隊長」

「作戦は失敗だ、このままじゃ」

 化け物が動いた。

「全滅だ」


 聖女隊は神経を集中させ、力を化け物にぶつけた。


「将軍!私達は諦めません」

「例え勝てなくても、押さえつけることはできますわ!」

「その間に」

 ケリーは叫んだ。

「我々は簡単に諦めたりはせん!!!」

 アーロズは剣を抜き、持ち上げた。

「聖女隊に続けー!!」

 兵士は化け物に向かっていく、動けない化け物を切り刻んでいく。

 オォォオオオオ!!

 化け物が苦しそうな声をあげた。

「いける!」

 後方に居たクレト軍も化け物に襲い掛かる。黒い血が溢れ流れる。

 オォォォッォ!!!

「よし、中々いい調子だ、ショーン」

「はい、クレト将軍、ここに」

「一気に勝負に出たい、魔法軍をつれて来い」

「は!すぐに」

 ショーンは抜いていた剣をしまうと、戦場を走り出した。

「え?マリアンジェラ様・・?」

 アーロズの軍の中で、只一人身体を守るようにうずくまった少女が居た。

「マリアンジェラ様?」

 近寄ると、なにやら化け物を見たまま、虚ろな表情をしていた。

「どうしたのですか?」

 肩を掴むと、マリアンジェラは倒れた

「マリア・・!?」

「・・ショーン・・う、痛い・・痛いの」

 マリアンジェラは身体を押さえ、辛そうに揺れた。

「つっ」

 ショーンはマリアンジェラを抱き上げ、戦場を走り出した。

「私の用のついでで申し訳ありませんが、一旦我陣営にお越しいただきます」


 マリアンジェラには既にショーンの声は聞こえていなかった。

(体中が痛い、なにかに、肉を奪われていくような・・そんな気さえする)

 意識が遠のいていった。 


「マリアンジェラ!?」

 ウィルシアがショーンからマリアンジェラを受け取る。

「戦場で痛いと仰っていましたが、外傷はございません」

「確かにないけど、どうしたんだ・・?」

「おそらく、守護が無くなっていっているんでしょう」


「お前らは」

 インファとシーヴァーがドラゴンの翼を背に生やした状態で現れた

「何か用?」

「お嬢様の顔を見に来たのですよ」

「闇の精霊の福音を受けたお嬢様は、あれと近くに行けば行くほど、お嬢様の中の精霊が喰われるのを嫌がり、逃げ出そうとする、その反動がお嬢様を襲うのでしょう」

 インファはそっとマリの頬を撫でた

「魔法隊、出陣!」

 ウィルシアは竜神族を無視して命令を出した。

「化け物を殺せばいいんだろ!」

「殺せるものならな」

 突如風が起こると、そこにシュシュが現れた。

「え?」

「シュシュが動かないから憑依した、テルーカが言うには何かを動かすには何かが必要となる。それと同じであの化け物が居ないと、この世の生死がリサイクルしないんだと」

「つまり、殺すなってこと?」

「あぁ」

「じゃあ俺らは、黙ってコロされろって言うのか」

「・・」

 シュシュもといテルカ・ユサラは黙った。何もいえないらしい・・。

「ありますよ、やつを殺さず、生かさない方法が」

 インファが微笑んだ。

「え?」


 化け物から遠ざかり、意識が戻ってきたマリアンジェラは目を薄っすらと開けた、景色は見えないけれど、声は分かる。

 インファの声だ・・

「我々が扉となるのです」

 ・・え?


「もう一度封印するには、今まで以上の強固な扉を作る必要があるのです」

「それで、なんで・・」

「あの扉は、我らが祖先なのです」

 ・・・・パンドラの扉・・?

「其方の祖先が我らの祖先で扉を作ったのです、我々がもう一度扉と融合すれば、もう二度と開くことはないでしょう。そうなった暁には」

 インファの声が消えた。

「・・扉を誰の手の届かないところに隠してください」

 そうしなければ、また今と同じようになってしまうだろう。それだけは避けたい。

「・・・・誰が犠牲になるつもりなんだ」

 ウィルシアの声が、重い

「私です」

 インファが即答した。

「魔法使いの血も引いている私なら、扉は恐らく特殊なものになるでしょう」

「そうかもしれないけど、扉になるってことは」

「死ぬってことですね」

 え・・インファが死ぬ・・そんなの

 手を伸ばす。

「お嬢様!」

「だめ、インファ逝かないで・・」

 どうして、死のうとするの・・そんな駄目だよ

「インファも、居なきゃいやだよ」

 頬に温かいものが触れた、インファの匂い、インファの柔らかい手のひらが・・温かい。

 柔らかくて優しくで甘いにおいがして、ダイスキな君の感触。

「私、皆みんな、大嫌いだったんです」

 生まれのせいもあるけれど、混血種だから、だれもが馬鹿にして、忌み嫌った。それが悔しくて、武術や兵法を学び、作法も覚え、誰にも負けないように、生きてきた。

「生きれればよかったんです」

 ただ、生きれば

「でもね」

 なで・・

「アナタが違うってことを教えてくれました」

 生きるだけでは駄目だって

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