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影姫の暴走奇譚  作者: 綴何
本編
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第五十一章

 化けものを呼び起こして早くも一ヶ月がたった。最強な盾のおかげでよくもまぁ今の今まで無事だったと思う。そして、誰も亡命しないところを見ると、今までの『遊び』を反省してしまう

「あー、もうこれはあれか」

 魔国の王様は面白くない退屈をしたこどものように両手両足を投げ出した。后もそれを真似して投げ出した。

「この世の終わりってヤツかぁ」

「終わらせるキッカケを与えたのは俺らですけどねー」

「おう、ウィルシア・シーア宰相か」

 王様はさぼり癖のある宰相を見た。彼は笑っている。

「なんだよー面白いって皆乗ったくせに、俺だけのせいにしてよ~いいよ、いいよ、俺のせいですよーだ」

 ホッペを膨らませ文句を言う男、これでも王様である。

「いい歳してなにいってんすか、まぁいいけど」

 ウィルは手紙を王様に渡した。

「?」

「ステラから」

「誰だそれ?」

「マリーの友達」

 メモ程度の紙を見ると、そこに小さく文字が書かれていた。

「ほうマリアンジェラからか」

「はい」


『もうすぐ、参ります』


 その一文しかなかったが、希望がこめられているような気がした。

「ってか、マリアンちゃんが来てもしゃーなくね?」

「あとこれもドウゾ」

 アースグランドの国の紋の入った手紙。

『此度の化け物退治、世界規模のようなので、わが国も貴国に協力しよう。しかし、のちのことはまた話し合いまをしよう』

「仲良くする気はないってか」

 でも、と笑った。

「生きる気力がわいたなールー!」

「?」

 分からないでもニコニコと笑う后。援軍が来ると喜んでいるが、果たしてどうするつもりだろうか・・

(マリアンジェラがあのことを知っているとも思わないけどな~)

 なんだかんだいって、お嬢様のマリアンジェラが、戦争について分かっているとも思えなかったが、今は協力を仰ぐしかない・・。余計なことはいえないな


「陛下、アースグランドの国旗が見えます、迎え撃ちますか!?」

「よい、客人としてもてなせ」

「は?!」

 兵士が驚くのも無理はない・・。

「いいから」

 しかし、王様の命令は絶対だ。

 少ししてから盛装姿の女王アマンサと、正装したミケーレが現れた。ウィルは口笛を吹いてミケーレを見た。

(女々しいだけの坊ちゃんかとおもったら、いっがいー)

「今後の話をしようか」

 緊急会議がしかれた。



 ケリーと同じポジションにマリアンジェラも居た。じゃっかん忘れていたが自分も聖女隊であった。槍を持ったまま決められ言われた配置で待機する。

「ケリー・・」

 マリアンジェラはすまなそうな顔をしていた。

「アユリ様から聞いたけど、義兄様と喧嘩したんだって?ごめんね、私のせいで」

「別れたのは確かにお前のせいだが、決めたのはミケーレ様じゃ・・それにどうせ結ばれぬ星のもとに居るから・・いいんだ」

「ケリー」

 マリアンジェラはケリーの顔を見た。

「義兄様と付き合ってたの?」

 知らんかったんかい

「みんなー聞いてくれー」

 アーロズが声をあげた。

「明日、最強の人間が結界を開放する、そうなったらみんなの力で魔力を思いっきりぶつけてくれ」

「将軍!人間じゃなくて最強な盾でしょ?!」

「えー?ハレル君細かいなー」

「将軍が大雑把なだけです」

 明日・・緊張する。・・あれ?

「ねぇケリー」

「なんじゃ」

「魔力もってるの?」

「そうだが?」

 ・・私、ないですが?

「ふむ、武家の娘に生まれたからには、やはりツルギと共に運命を果たしたい」

「ご立派な考えだけどさ、死んじゃったらなーんにも残らないよ」

 アーロズがいつの間にか目の前に居た。ハレル君が一生懸命戻ってくださいー!といっていた。なんか可哀想だな。

「って、言ったって、聖女隊が前線きって敵に向かうんだけどねー」

「アーロズ将軍も、立ち向かわれるのですか?」

「私は勿論、誰もがそう望んでいるから」

 ニッコリと笑う。

「そうでしょうか」

 ケリーは珍しくアーロズに敬語を使うと、別のところに目を向けた。アーロズも其方を向く。目の行く方向には、ハレル君が居た。

「自分、何も知らずに将軍を責めておりましたが、マリアンジェラから話を聞いて、考えを変えました」

 ケリーらしく、真っ直ぐな瞳で将軍を見た。

「将軍、自分は己の無力さの悔しさ、前回の戦争で身に沁みて分かりました。そのとき思ったのです。自分が死を望んでいても、望んでいないものもいるということを・・」

「ミケーレ陛下から教えてもらったの?」

「はい」

 といった後、頬を染めた。馬鹿正直に言ってしまったと思っているのだろう・・分かりやすい

「しかし、我々は軍人、死なねばならぬときもありましょう」

 アーロズは微笑んだ。

「志のために死ぬのは良いが、心で死ぬなってか?」

 ハレル君がやっとのことで追いついた。

「もう将軍、配置についてください!明日の朝、すぐに出立するんですから!」

「了解」

 アーロズはマリとケリーの頭を交互に撫でると、歩き出した。

「はっはっは!コレが終わったら飲みにいこうや」

 片手をあげて戻っていった。

 もうすぐ、夜明けだ・・。

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