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影姫の暴走奇譚  作者: 綴何
本編
51/71

第五十章


「駄目だ」

 ウィルシアは王宮の書庫を漁り、過去の文献を探し回ったが『パンドラ』の扉についての文献は何一つとしてなかった。

「これはますます、ご先祖様でも紹介するしかないか・・?」

 できっこないことを言って、自嘲する。

「はぁ・・せめて化け物の正体をつかめればな」

「教えてやろうか?」

「ユサラ!?」

 振り返るとそこにはフワフワと浮いている、シュシュだった。

(あ・・そうだった、ユサラは、死んだんだった・・)

「ぶっぶー」

 シュシュは怪しい光を秘めた瞳で笑った。

「ボクはテルカ・ユサラでもあるし、テルーカ・エニシンだぁよ~」

「?!」

 シュシュは地面に降りると頭を叩いた。

「ちょっと!テルーカ勝手に喋んないでよ!え~いーじゃぁーん、死んじゃったンだぁからぁー」

 一人で二人の声色になった。この声は確かにテルーカ

「どうゆうこと?」

 てゆーか気持悪いんですけど?

「僕の能力は他人の脳を見る力、テルーカは脳の情報を操る力、そして・・」

 瞳の色が変わった。

「俺の力は、同属に憑依できる、自分につけることも可能だ・・あのときテルーカが飲まれる前に魂を回収し、自分が自爆する寸前に、シュシュに乗り移った」

「あれ?シュシュの存在知ってたの?」

「テルーカ・エニシンの脳の情報を~、テルカ・ユサラにコピーして、ボクは乗り移られたのさ」

 すんごく迷惑そうにシュシュは言った。

「またあえて嬉しいけど」

 ウィルは複雑な顔をした。

「見た目は変わんないの?」

「あくまで『憑依』だからねぇー」

「ふーん、まぁいいっか・・で?正体は分かったの?」

「まぁー、間近どころか・・食われたかぁらねぇ~まぁテルーカの見立てによるとアレは、『分解者』だね」

「分解者?」

「何事にもはじまりというものがあるんだよぉー?この世界や我らが祖を造った基礎・・『創造主』がいるわけさぁ、それをあえてモノに例えるなら『大きな林檎の木』」

 林檎の木は無条件にできるだけいっぱい実を結んだ。新しいのができれば古いものは落ちる。落ちれば地にぶつかる、腐る・・朽ちる・・『分解者』は腐敗したものが積もりに積もり、木に害を与えないように落ちた林檎を喰らう。

 落とす、喰らう、落とす、喰らう、落とす、喰らう・・その繰り返し・・その輪廻が崩れたとき、『分解者』が『創造主』を喰らい、壊れ始めた・・。

「一つ質問していい」

 ウィルが話をさえぎった。

「ん?」

「どうやって分かったの?」

「喰われたら分かるよ」

「遠慮しとくよ」

 片手で断るとシュシュは鼻で笑った。

「でもなんで輪廻が壊れたのかわかんないんだろぉー?やっくたっだずー・・いて」

「身体も操ろうと思えば操れるんだ?」

「まぁ、『憑依』だからな」

 しかも喋る人がコロコロ変わるから、いま誰と喋ってるのか分からない・・

「あ、でも扉の中に引っ張られるときに、ちょっと扉に違和感を感じたんだぁ」

「違和感・・?」

「うん、多分あれは―――・・・・」



◇・◇・◇・


「父上、今よろしいでしょうか」

「・・アマンサか、どうした」

 謁見の間、王は仕事をしながら入ってきた娘を見た。母親に似て気の強い表情、娘が誰一人として自分に似なかったことや、息子が生まれなかったことは王としては非常に心残りではあるが、今更もう一人という体力はない・・。

 そんなことを言えば『男になる』などと言い出すので、どうもいえない。

「お父様にお聞きしたいことがありまして」

「言ってみろ」

 アマンサが王の血を継ごうと頑張っていることは知っているので、できる限り、願いを聞こうと常々考えていたが、アマンサはめったに願い事を言わない。なので、珍しいこともあるものだと娘を見た。 

「私に王位を下さるのですよね」

「あぁ、お前ほど王に相応しいものは居ない」

「お父様、私は王に本当に相応しいですか・・?私じゃ荷が重うございませんか」

「そんなことはない!お前に適任だ」

「では、お父様、私を王にさせてください、あさってにでも」

「何?早くないか?」

「私はもう26ですよ・・駄目なのですか」

 アマンサはなみだを流した。

「な、泣くほどではなかろう・・!はぁ、分かった分かった、もうすぐ魔国も滅びるし・・よかろう・・余ももうとしだしな」 

 まさか泣かれるとは思っていなかった。

「王、よろしいのですか?」

 臣下が控えめに言った。

「よい、アマンサは聡明だし・・統治力にも長けている・・問題なかろう」

「早急な気もいたします」

「私じゃ、いけないと申すか」

「え!?い、いいえ?!とんでもない」

「えぇい!もうよい、下がれ」

 王様は臣下を下げらせた。

「では、アマンサ後を任せるぞ」

「承知」

 頭を垂れると歩いていった。

 廊下を行くと、拍手をするミケーレがいた。ニッコリと微笑むとアマンサの頬にキスをする。

「お上手」

「ミケーレは悪魔ね・・羊の皮を被った悪魔だわ」

「・・狼じゃなくて?」

 ニッコリと微笑むとアマンサも微笑み返した。

 王位を手に入れるのもそう遠くはない・・。

ミケーレ腹黒!w

ちゃくちゃくとことが進んでいく。さて、マリアンジェラや他のみんなの運命はいかに!?


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