第四十八章
ララーちゃんは旦那に寄り添いながら、目を瞑り、先を案じていた。
「どうしましょうアナタ・・」
「国が滅ぶというなら、我らも滅びねばならんのだろう」
シーア卿は冷静に呟いた。
「各国嫌われ者の我らが亡命したところで、仕返しとばかりにやられるだけだ。足掻くのもみっともなし、潔くいこう」
「アナタについていくわ」
そんな二人のやり取りを見ながらステラはそわそわしていた。
(あんな化け物この国どころか本当に世界滅ぼしちゃうって!)
遊びでこんな事に手をつけたが、この国の人も内容のやばさにさすがに笑っていられない様子だった。世界を滅ぼすことも可能なのだろう
ヤツの閉じ込められている場所は悪雲が集まり始めていた。
「ばふ」
「・・?レガード」
窓のほうを見ながら吼えていた。見に行くと、足に手紙をつけた鳥が居た。・・アースグランドから?・・でも今まで花をつけたことはなかった。もしかして
鳥から手紙を鳥、見る。
「マリアンジェラから・・?」
『私は私のほうで頑張る、どうにか助かる道を探すから』
マリアンジェラに伝えた覚えはないが・・誰かが助けをもとめたのか?
『私、帰ってしまったけれど、ステラのことダイスキだから』
短い文章、内容がちっとも分からないけれど・・なんとなく嬉しかった。
「ばっかだなぁ」
帰ってしまったからといって、嫌うやつなんてここにはいない・・。ホント変なところで小心者なんだから・・。
「さ、あたしもがんばろうかな」
とりあえず、この国のひとたちがはやまらないように、呼びかけでもしよう・・。手短にシーア夫婦を宥めに歩き出した。
◇・◇・◇・
「長」
傷を癒しながら横たわっているドラゴンの長を見ながら、二人は声をかけた。
『分かっておる、扉が開き中の者が出でただろう』
「はい」
ドラゴンは目を薄っすらと開けた。
『昔、ワシがまだ未熟者だった頃、上のものに聞かされた話があった』
【アースグランドの祖先、オースティンとウェザーミステルの祖先、キムは神にあらず、アレらはもとよりただの人だった。触れてはならぬものに触れた故に人ならざるもとなり、邪悪なる者を閉じ込めた、我らの祖も封印に携わった】
「祖先はどのように封印したのかご存知ですか?」
『酷い話じゃ・・』
話を聞いた二人はお互いを見合った。
「その話、本当なのですか」
『何度も聞かされたからの、わすれてはおったが、内容は忘れんぞ』
ドラゴンの長は立ち上がった。
『我らは一族を増やすので忙しい、今回のことで材料にされる前に去るぞ』
翼を開くと他のドラゴンも長にならった。
「長」
二人は長を見上げた。
「長きに渡り、私どもを世話し両親代わりとなってくださり、ありがとうございました。ここでお別れです」
『何?』
「私どもは人間達と生きて、少し情がわきました。できれば助けたいと思うのです」
『なんと・・死ぬ気か』
「子孫繁栄、心よりお祈りしております」
二人は長に向かい頭を垂れた。他の仲間が止めるように鳴き声をあげた。
『うぅむ』
長は唸ると頷いた。
『好きにせよ』
羽ばたき空にあがる。
『ワシもな、お前達のこと、本当の子のように思っていたぞ』
群れを連れて、大陸を渡っていく。恐らく竜神がこの地に戻ってくることはもう二度とないだろう。シーヴァーやインファは群れが見えなくなるまで見送った。
「ねぇ、シーヴァー」
インファは隣に居るシーヴァーのよこ腹をつついた。
「お嬢様と何処まで行ったの」
「何をいきなり」
「茶化さないで、お嬢様が悲しむようなこと・・したくないのよ」
インファはシーヴァーを見上げた。
「私だって好きなんだから」
「・・分かっているさ」
二人は見合った。
「お嬢様は助ける、お嬢様の大切なものも」
「その役は、私がやるんだからね」
インファは歩き出した。
シーヴァーも後を追う。
なにかしら、世の中は残酷にできているらしい。二人は覚悟を胸に歩き出した・・。