第四十四章
「なーんであたしが手伝わなきゃいけないんだよ・・」
ステラは文句を言いながらテルーカの研究室の片づけを手伝っていた。ほとんどが高熱の炎で溶かされ、もとの原型も保っていないが・・。テルーカ本人はパンドラの扉に異常がないか見回っていた。
王様命令で何人かの兵も居た。
「てか、重い!なにこの金属の箱!何はいってんの!?」
「あ、お手伝いします」
ショーンがステラに駆け寄り、荷物を持つ。見た目異常に重く、二人では全くビクともせず無理であった。
「だーもう、おっもっいー!おい、坊ちゃん手伝ってくださいよ!」
マリアンジェラに振られてから元気のないウィルは空返事をして部屋の隅っこでしくしくいじけていた。
「・・くっらぁー」
「確かに、マリアンジェラさんが帰ってしまわれたのは、我々としても寂しい限りです」
「そうだけど・・あの子が決めた道じゃないねぇ」
「えぇ」
ショーンは寂しげに笑うと荷物を見た。
「仕方ありません。クレト将軍に手伝ってもらいましょう。呼んできます」
高熱に溶けなかったガラスではあるが、音声マイクは高温で壊れてしまっているので、ショーンは階段で下までおりていった。
「ねー、ちょいと坊ちゃん」
ステラがウィルシアの頭を撫でた。
「男が何時までもいじけないでサー働いてよ」
「・・・」
ぶちっ
「きーてんの・・!」
「し!」
ウィルシアに口を押さえられた。
「?!」
「・・・・やっぱり、何か聞こえる」
「ステラさん。クレト将軍お連れしました。この箱何処に運びますか?」
「クレト」
ウィルシアは立ち上がった。
「パンドラの扉から全員退避させろ!」
「あ?」
「早く」
ドックン・・ドックン・・ドックン・・ドックンドックン、ドックンドックンドックンドックン
「だーかーら、シュシュのせいでぇこうなったわけぇー」
「そもそもお前が余計なことをするから、俺までココの片付けしなきゃいけなくなったんだろうが」
「テルカ・ユサラ将軍には悪いなぁーっておもってるよぉ?だって魔法技術開発部門専任なんかよりまぁったく違うぐらいえんらいもんねぇぇー」
「素敵な皮肉をありがとう。お礼に拳をやろうか」
ドックン・・ドックンドクンドクン、ドクンドクンドクンドクン・ドクンドクン、ドクンドクンドクンドクンドクン
「・・なんの音だ?」
「鼓動の音?」
「鼓動?」
テルカ・ユサラとテルーカ・エニシン、二人は同時に同じ方向に見た。
ドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクン・・・・。
鼓動を発しているのは、『パンドラの扉』であった。
「なんかヤバイ?」
テールカは魔法で逃げようとしたその矢先、パンドラの『扉』が消え、マンホールに穴が開いた。そこから真っ黒なドグロを巻いた手のようなものがテルーカを掴むと、真っ暗な穴の中に飲み込んだ。
「テルーカ!!」
ぎゃぁあああぁあぁ!!!悲鳴が上がる、兵士達が逃げ出した。黒い腕が伸び、次々と兵士を飲み込んでいく。その様はまるで『食事』のようであった。
あまりの急な事態に、テルカは動けないで居た。
「な、んだ・・アレ」
ステラはガラス越しにパンドラの扉を見ていた。下に居た人たちはドンドン闇に飲まれていく。震えのせいで動けない・・蛇に睨まれた蛙のように・・。
「畜生!俺の部下を返しやがれ」
剣を持ってクレトは走り出したがショーンが抱きついて止めた。
「止めてください!将軍!死んでしまいます」
「離せ!」
「クレト!」
ウィルが首を横にフッタ。
「ここも危ない」
「ふざけんな!あそこにはユサラも居るんだぞ!」
「諦めるんだ!」
「将軍!」
「ねぇ!パンドラの扉にヒビはいったけど!?」
ズズズズ・・地響きが壁などに亀裂を走らせる。
「撤退しよう、クレト」
「・・くそ!おいオメーラ撤退だ!!」
魔法で移動する間際に光る者をみた。
「ユサラ!」
自爆魔法・・発動。
最期にユサラはウィルたちに手を上げていた。
「ちっくっしょぉぉおおおおおおおお!!」
クレトの咆哮が響き渡った。




