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影姫の暴走奇譚  作者: 綴何
本編
43/71

第四十二章



「嘘・・どうして?シーヴァーがここに・・っ?!」

 抱きしめられた身体を離そうとして、手首を掴まれた。

 おどろくほど激しく強く身体を抱きしめられると、顎をつかまれ上に向けられた唇に、シーヴァーの唇が触れた。冷たい感触が熱いものに変わった・・舌が交わる。

「ん・・」

 何度も、何度も・・涙が自然と溢れた。

「『好き』だ・・」

 小さくそう囁く。

 今までずっと、聞きたかった言葉・・あぁ・・やっぱり、私は嫌いになんかなれないんだ。だって、今こんなにもシーヴァーを求めている。

 しばらく抱き合っていたが、シーヴァーは手を払うと、炎が一気に掃われた。

「あら、お嬢様!」

 インファも居たらしく、服のところどころがこげていた。

「はぁ、暑い・・早く移動しましょう」

 インファは流れた汗を拭うとシーヴァーにそういった。半分は人間の血をひいているため、焼死することはないが、熱いものは暑いらしい。

「長老は私に任せてください。お嬢様はシーヴァーと安全なところに」

「あのドラゴン長老様なの?」

「えぇ、気配を感じておかしいと思い、此方に忍び込んだのですが・・このありさまで驚きました」

「お嬢様、帰りましょう」

 シーヴァーはマリアンジェラをお姫様抱っこすると、背中にドラゴンの翼を生やし飛びだった。

「おぉ・・」

 すごい。


「はい、ちょっと待ってねー悪魔紛いの執事君。パクリになるよ」

「悪魔ではなく執事です。狂れ坊や」

「言うね」

 二人の間にバチバチバチッと火花が散った。

「ウィルシア」

「俺の奥様盗らないでくれる?」

「私のお嬢様が大変お世話になりましたね」

 会話があってない・・。メラ!長老の炎など匹敵にならないほどの炎があがる。

「……(汗」

 バァァァン!

「きゃああ!?」

 魔法のバトルが始まった。炎が魔法を蹴散らすが魔法は容赦なく獲物を狙う。まったくの互角・・ウィルシアって強かったんだって、感心している場合ではなかった。

 また落ちそうなんですけど!?

「アンタマリアンジェラふったじゃんか、返せ!」

「離れて分かる想いというものがあるのですよ」

「うっわぁー未練たらしい男だなー男なら一度決めたことをやりとうしなさいよ。俺は有言実行でマリアンジェラ姫を返して貰う」

「もともと私のものですからご生憎。貴方はもう用済みです」

 人を抱いたまま喧嘩しないでほしい。

 自分のために争ってほしいなんていう人は、本当馬鹿だと思う・・。

「止めて!」

 マリは声を荒げた。

 二人の攻撃がやんだ。

「ごめんなさい、ウィルシア・・私は・・彼と帰る」

 シーヴァの服を強く掴んだ。

「貴方のことも好きだけど・・私、シーヴァのほうが・・好きなの」

 涙が頬を伝う。ウィルが酷く傷ついた顔をした。ごめんなさい・・あんなによくしてくれたのに。

「ふられたかぁ・・じゃぁ仕方ないよね・・」

「ウィル」

「っていう俺じゃないよね」

 魔法の矢がシーヴァーをかすめた。お面が下に落ちる。

「卑怯で姑息ですね」

「なんとでも」

「未練たらしいのは其方じゃないですか」

「お互い様だろ」

 シーヴァーの紅黒い瞳が炯炯と輝いていた。

「ステラはどうするのさ、ララーちゃんは?ショーンにだってお別れいってないだろう?レカードは君が来てから少しずつ歩くようになったんだ。君が居たから王様は戦争に魔物をつかったりしなかったんだ」

 ウィルは泣きそうな顔で叫んだ。

「君が来てから俺も変わったんだ!君が必要なんだ」

「ごめん、シア・・ありがとう」

 シーヴァーはマリを抱いたまま去った。


「・・・・っ」

 燃え盛る炎も後から来た軍によって消え去り煙を上げていた。

「なんでだよ!!」

 怒り任せに魔法を放つ、どぉぉぉん!パンドラの扉に当たったがどうでもいい。

 マリはもう居ない・・帰ってしまった。

 最初は興味本位だった。でも、だんだんと惹かれて・・本気で好きになってた。シーヴァーと聞くたびに嫉妬した。イラついて、アースグランドをなんども滅ぼそうと思った。でも、君が、マリアンジェラが泣くから・・

「・・・・マリアンは勝手だよ・・俺、エイジスになんていえばいいんだよ」

 涙を流したのは久振りだった・・。

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