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影姫の暴走奇譚  作者: 綴何
本編
40/71

第三十九章


「・・そうか、失敗か」

「ごめーんねぇー」

 シュシュは心にもこもってない謝罪を述べた。

「ウィルシア・シーアがまさか出てこようとはねー皆仕事をしないって情報あったのに、裏切られたよ」

「怪我はなーい?あと、変なものもつけてないよね?」

「大丈夫だよキャリアナ」

 幼女の頭を撫でながらシュシュは楽しそうに笑った。

(まさかテルーカ・エニシンが脳内の情報を操ることができるなんてね・・ボク以上の特殊異能保持者だったか・・)

 それだけでも中々面白い収穫であった。相手を出し抜くという行為は何よりも勝る悦びだ。ぎりぎりのゲームはこれだから止められない。

「マリアンジェラ嬢が思いのほかウェザーミステリに馴染んでいるな・・むしろ彼女だけでも良かったのではないか?それに彼女はアースグランドの有力者の娘だろう?」

 アキレスの隣で頬杖ついていた青年、セオドラ・シュリューカは自分の緑の髪の毛をかきあげ、立ち上がった。

「てか、まどろっこしーんだよなァ!もう捨て身覚悟で王宮侵入して王を殺そうぜ?」

「賛成、今なら王様も油断バリバリだよ!」

「短気は損気だぞ。セオ、キャリアナ」

 アキレスにそういわれ二人は詰まらなさそうに頬を膨らませた。

「でも、打つ手がないわアキレス。どうするの?」

 ルイツの疑問にアキレスは答えることができず、黙り込む。

 沈黙がその場を支配する。

「あー・・そういえばさー」

 シュシュは楽しそうに言った。

「ウェザーミステリの国に『パンドラの扉』たるものがあるらしいよ。それを開けたら両国を制するのは簡単なことになるぐらいの、すっごい大きな力を秘めているらしいけど?」

「お前が言うと怪しいな」

 皆が頷いた。

「なんでぇだぁよぉー」

「大事な部分かくしているのではないの?」

 ルイツが疑わしげな顔で言うとシュシュは目を潤ませた。

「ボクが頑張って手に入れた情報を、皆は信じてくれないんだぁー」

 シュシュは泣きまねをするとセオはうっとおしそうな顔をした。

「わかったわかった」

 にや

「そのパンドラとやらはなんだ?」

「あのねー」


・・・・。


 アースグランド『東宮殿』の西側にある森の中

「ミケーレ様・・ミケーレ様!!」

「っは!な、何かなシーヴァー?」

 シーヴァーは溜息をついた。ココ最近ミケーレの行動がおかしいのだ。

「そのように毎日花を沢山摘まれていかがなさるのですか」

 もうミケーレの部屋に花を飾る場所はない。そして今も尚彼の手には大量のいろどりの花束が持たれていた。あっちっこっちの森に行っては花を摘んでいた。

 男なのに女と見紛うばかりのその可憐さが逆に違和感を醸し出す。

「もう戻りましょう」

「あ、うん・・そうだね」

 ミケーレは頬を染めて馬に乗った。二人は東宮殿に戻り始める。

「・・ねぇシーヴァー」

「なんでしょう」

「シーヴァーはインファのこと好き?」

「は?」

 シーヴァーは馬を止めて主を見た、ミケーレは同じように馬を止めると、頬を染めたまま下を向いた。

「何故、インファなのですか」

「え?だっていつも一緒に居るじゃないか!仲も良さそうだし」

「はぁ・・まぁそうですが、好きというのはどういった意味でしょうか」

「決まってるじゃない!愛しているかってことだよ」

 自分で言っていて恥かしかったのかカァァーと耳まで顔が真っ赤になった。シーヴァーは主にばれないようにそっと溜息をついた。

「アレのことは確かに嫌いではありませんが、愛するという感情とは違います。そうですね・・どちらかといいますと、妹のような感じです」

 向こうは人のことをお父さんのように思っているなどど、ふざけたことを言っていたが。

「そうなんだ」

「はい。それが急になんですか?」

「え?い、いいや!別に!」

 明らか何かありますというように頬を染められも・・黙って見つめているとミケーレは話し出した。

「ケリーって居るじゃないか」

「聖女隊の・・ですか?」

「うん・・」

 もじもじ・・もじもじ

「・・・・」

「・・・・」

 もじもじ・・

「好きなんですね」

「う!・・うん・・そうなんだ・・」

 照れ照れとはずかしかっている。シーヴァーは安心した。女装癖のあるミケーレがいつか女性ではなく、男性を好きになってしまうのではないかと懸念していたのだ。いやぁ安心した。

「好きになるのはいいことですが・・でも、いけませんね」

「え?」

「聖女隊は特攻軍、戦争で命を落とす可能性が高い。残念ながら次期王であるミケーレ様の伴侶になることはできません。彼女が聖女隊を辞めるなら話は別ですが」

「わ、分かってるよ」

 ミケーレは弱弱しく言った。

「無理だってことぐらい・・」

 ミケーレは自分の仕事に誇りを持っている、恐らく本人の中では天職だとさえ思っているだろう。まず、止めることは考えられない。

「たとえ、受け入れられなくとも・・せめて言いたいんだ『好き』だって」

「・・言うだけですか」

「言うだけでもスゴイ勇気がいると思うよ!・・だってボク会話すらできないし」

 しょぼーんと落ち込む。


『言わせてもくれないのか』


 マリアンジェラの言葉が耳に蘇る。

「言って何になるというんですか」

「え?」

「『好き』だと『愛している』といったところで触れ合えない、傷つけることしか出来ないのならば、いっそ言わなければいい。言わなければ、まだ耐えられるのではないでしょうか」

「シーヴァー・・?」

「結ばれることがないのに、想いだけ伝え合うなんて、酷なこと私にはできません」

「シーヴァー・・誰か好きな人が居るの?」

 シーヴァーはハッとした。しまったミケーレの前で言うことではなかった。

 黙りこむと、ミケーレは優しく微笑んだ。

「それでも、好きだから『好き』って言ってほしんだと思うよ。大丈夫『好き』と言って誰も傷ついたりしないから・・」

 『好き』だと、いえないほうが辛い・・本当にそうなのだろうか、言ってしまった方が・・残酷な気がする。

 どんなに愛していても、ドラゴンである自分は・・人と結ばれない。

「・・考えてみます」

 それでも、充たされるなら・・いいのかもしれない

アスランダを出す必要なかったような気もしなくもありません。が、物語のキーワードに・・なるはず?

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