第三十八章
「あーそれぇ~?知ってる知ってる」
テルーカ・エニシンはよく分からない機械を弄りながら相槌ついでに返事を返した。
「たぶんアースグランドに身を置いてるシュシュだと思うよぉー、精霊属エルフの中でもずば抜けた変態だよぉ」
「テルちん以上に?」
「あっはっはーテルちんはふっつーじゃーん」
ってことは予想以上に変人なんだね。
「シュシュは同属の頭の中覘けるからねー、覘かれたポイ?」
「それでなんで、私なんでしょうか」
「考えたらわかるっしょー」
ウィルがマリの頭を撫でながらにかっと笑った。
「アースグランドのやつらが狙ってたのは后様だろってことわ人質でもとるつもりだったんでしょ?・・ん?でもなんでアースグランドが?」
自分で言っていてその違和感に気がついたらしい、首をかしげてクエスチョンマークを浮かべた。
「そりゃぁアースグランドに併合している小国アスランダのほうだもんなぁ」
先に行ってください。
「革命軍たるものができてるってわっけねー・・イスラの国も役に立つじゃない」
ウィルは楽しそうにそういうとまるで玩具を見つけた獰猛な獣のようにニヤリと笑った。
マリはなんとなくやろうとしていることがわかった。
「話持ちかけてみよーかな」
「だ、駄目」
マリは止めてからふと思い返した。
(あ・・私止める必要あるのかしら・・でも母国だもの、私は正しいのよね・・?)
どうして分からないの?
「母国は君を捨てたのに、君は母国を愛してるのぉ?うわぁー心広いねぇー」
捨てた。その言葉が胸に酷く突き刺さる。
「まだ、捨てられたわけじゃないわ、すっかり忘れてたけど・・私人質なのでしょう」
「いや?家族だけど?」
ウィルは当たり前だというように言い切った。
「・・止めて」
分からなくなる。駄目なのに、駄目なの・・分からない
欲しい者は手に入る、けれど本当に欲しい者は手に入らない・・
(ふふ・・駄目ね、まだ引きずってたんだ)
忘れれば、嫌いになれば良かったのに・・まだ、好きだなんて。
「・・・・」
「?」
テルーカは静かになった後ろの二人を気にして振り返った。
「!」
そして急いで前を向いた。
「何も見てないよぉ何にも!ちゅぅーしてるとこなんて見てないよ!」
マリの考えていることが分かったウィルは嫉妬し、マリの唇を奪った。
手に入らないものは攻略が難しいからこそ面白い、そう思っていたウィルであったが、本当にほしいものがもらえないのはじれったくて・・苦しかった。
「んん!や、嫌!」
ぱぁん!いい音が響いた。
「・・ウィルの・・馬鹿!!!」
そう叫ぶとマリは泣きながら走っていった。
「・・だってさぁ」
「聞こえてるよ」
マリは部屋に勢いよく入ると、涙を拭いてフッと息を吐いた。・・影姫誰かがそう嘲り言ったものはこの国には居ない、なのに私はたった一人の人のために居心地のいい場所を否定している。
馬鹿らしい、いやいっそ哀れだと思う
「う・・うぅ・・うぶ、ふぅううぅ・・ひっく」
涙が頬を伝う。
どうして、割り切れないんだろう・・。
「・・っ」
涙を袖で拭う。このままではいけない。私・・決めなければ
「自分の気持、整理しなきゃ・・」
久振りに恋愛要素はいったかな?・・入ってないか