第三十六章
同じく中小国の一つ、アスランダ国でも独立しようという話が出ていた。
最もここを支配しているのは、アースグランドであるがイスラと同じような心持ちだった。強制併合・・。
何故自分たちの国を自由にしてはいけない?何故他国に金を払わなければならない。併合という名の侵略を許してはならない。
アスランダの指導者『フレイ・アキレス』は地図を仲間と眺め、策を練っていた。イスラと同じ心持ちでもこちらの敵は今絶頂期にあるアースグランド大国だ。簡単に事は運べないだろう。
「アースグランドといえば跡継ぎが女しか居ないらしいな」
「人質にしてみるか?」
「いや駄目だ」
話し合いの中でアキレスの隣にいた男は却下した。アキレスもそれに同意する。
「噂によると双子姫は常に妃と一緒にいるらしい、もしくは若い将軍にべったりだとか」
城に入れたとしても、恐らく攫うのは難しい。
仲間の一人が鼻で笑った
「じゃー長女はぁ」
「女だてらに強いらしい」
「へぇー。それってルイツぐらい?」
話し合いをしている会議室にノックの音が響くと、厳しい顔つきの女が入ってきた。
「シュシュ、私の名を呼んだかしら」
「えへぇ、呼んでない呼んでない」
シュシュは愛想笑いを浮かべた。
「そう。あらキャリアナどうかした?」
「ん?なんだい」
キャリアナはアキレスの手をひいて笑顔をつくった。
「やはりアースグランドがウェザーミステル国を攻めるときに、味方するふりをして王を殺しましょう?王がいない軍ならウェザーミステルが潰してくれる…そうしたら私達の勝ちだよ」
キャリアナまだ11歳、考え方があまりにも姑息だった……。
「駄目よ」
ルイツははっきりと否定した。
「キャリアナ、私達のお父様はこの国の英雄として亡くなったわ、知っているでしょう?」
「うん」
「お父様の名を汚さないために、そして私達が革命の英雄として誇りを持つために正々堂々と闘うのよ!!」
おおーと仲間は感嘆して拍手を贈った。キャリアナも納得したらしくウンウンと頷いた。
「じゃー周りの国に要請して蜂起興してもらって、トドメをアスランダが刺すの」
分かってなかった……。
「キャリアナ!!!」
「うー!?」
アキレスは微笑みながら地図をみた。
「確かにウェザーミステルに力を貸して貰えれば戦力を削ぐのは容易かもしれないが」
魔術を使う彼らは姑息な技で敵を崩落させる。しかし今は圧されている。協力するという手もあるが如何せん、彼らは信用するには足らない。
「契約は勿論、ギブアンドテイクも期待出来ないな」
「でもでもー、アースグランドの戦力を削ぎたいんだろうー」
「まあ、俺たちが同等に闘えるぐらいは……何か策があるのか?シュシュ」
シュシュはにこーと笑った
「ウェザーミステルの王様は、妃にゾッコン何だってさ」
やはり、誰かが必要となるわけだ。アキレスは深い溜め息をついた。致し方あるまい
「しかし、向こうには最強な盾が居るんだろう?どうする気だ」
シュシュは笑顔のまま懐から一枚の写真を見せた。
「……何だかこの世の悟りを開いたみたいに無表情だね、この人!」
「お黙りキャリアナ!シュシュ、誰なの?この方」
「アースグランドのアナスタジア大公の娘、『マリアンジェラ』ちゃんだよぉん!」
シュシュは楽しそうに手を叩いた。
「なぜ最強な盾と関係あるんだ?」
アキレスの質問に、シュシュは写真を懐に仕舞いながら人差し指を立てた。
「僕はね~特別な力を持っていてね『同属』の記憶に鑑賞できるんだぁ」
そう言っては、楽しそうに笑いキャリアナの頭を撫でた。
「勝手に見ておこられないの?」
「同属はきっと許してくれるよーなんてったって、愉しいことが大好きだからね!」
「シュシュみたいね!」
「僕達は同じものから生まれたからね!一緒さ!」
きゃっきゃっと戯れ始めた二人を無視して革命軍は準備を始めた。
アキレスは地図を丸め、指示を出した。
「では手始めに、マリアンジェラ嬢を」
皆は頷いた。
「誘拐する」
広がる波紋、巻き込まれるマリアンジェラ、恋路はどうなる?→未定