第二十二章
とある森の場所で、広大な空を眺めるインファとシーヴァーの前に舞い降りたのは、一匹の白く雄々しい竜だった。
二人は頭を下げると竜は咆哮した。
「長、ココは人間の国・・お静かに願います」
≪おぉ、それはスマンな、しかし、ついぞ久しぶりに会ったわが子らを見れば喜ばぬ親など居るはずも無かろうて、おっと親というよりは爺かな≫
二人はお互い見合って苦笑いを浮かべた。
「皆は元気ですか?」
≪あぁ、クルーとヘリンクが契りを交わし、マハーモが元気な子を二匹産みおった。これで竜の子は全部で13になった・・まだまだ少ない・・我らが再建するときはまだまだ遠いようだ≫
「長!」
インファは声を荒げた。止めないと永遠はなし続けるのだ。
「長、もうすぐ人間達は魔法使いどもと戦争をするようです」
「我々も加勢する様にと王は仰せです」
≪それはできん、我々は魔法使いどもの大殺戮のせいで我らはいま絶滅の危機にあるのだぞ≫
ゆえに竜族は魔法使いを心から憎み、人間の側についた。
「ですよねー」
インファは溜息をついた。
≪・・しかし、断れば我らの居場所がなくなるのだろうて・・致し方あるまいに≫
「ご安心を、王には私どもだけで事足りるように話をつけます」
≪お前達だけを犠牲にするわけにはいかん!≫
「いいえ、どうぞお気になさらず」
シーヴァーは頭を垂れた。
「私は魔法使いによって人の姿に変えられましたが、竜の力はかわりありません」
≪しかし・・≫
「ご安心なさってください、このインファ、育てていただいたご恩、お返しいたしますわ」
≪二人とも、気をつけろよ≫
竜の長は翼を広げた。
≪おぉ、そういえば・・とある筋から聞いた噂なんじゃがのう≫
「なんでしょう」
長は首を下げてシーヴァーによった。
≪お前は中々人間の女にモテテいるとか・・いやはやもてる男はつらいのぉ~ワシもお前のような人間の姿に変わってしまっていたら、もてていただろうのう、はっはっは≫
「長」
≪おぉ、おぉ・・そうじゃった早くいなねばな、だが忘れるなよシーヴァー≫
「?」
≪人間の娘とは契るなよ、インファの母のような悲しい想いは、しとうないからの・・≫
「分かっております」
≪でわ≫
翼を広げ飛びだった、咆哮が遠くまでに響き渡り、二人は姿が見えなくなるまで長の後姿を見守った。
「噂源はお前だろうインファ」
「あら、失礼ね!違うわよ」
「そうか・・なぁインファ」
「ん?」
シーヴァーは歩きながら続けた。
「俺はお嬢様を助ける」
「え?」
「戦争になれば敵国に真っ先に特攻する。そして、助け出す」
「命令に加わって無くても?」
「あぁ」
インファは微笑んだ。
「じゃあフォローするわ」
「ありがとう」
しばらく二人は森を歩いた。するとミケーレとケリー嬢がいた。なにやらもめていた。
「何をもめているんですか?」
「酷いんだインファ、ケリーさんが新しくボクの護衛に付いたって言うんだ」
「嫌なんですか?」
「嫌だよ!」
「なんじゃと!?」
「ひぃ!」
一喝されて身を小さくさせた。
最近戦争の準備を始めたためテゼヴル将軍は新兵の指導に勤しんでおり、ミケーレの傍につくことはできなくなったのだ。もちろんインファも聖女隊の指導を行う。
そこで聖女隊の中でも成績優秀なケリーがお勤めをすることになったのだったが、相性が合わないらしい。
「インファ、私は偵察にいってくる」
「えぇ、気をつけて・・」
シーヴァーと別れた。ソレを見ていたミケーレは首をかしげた。
「やっぱり・・もしかしなくとも?」
「さ、帰りましょう」
ミケーレは勘違いしたままであった。