第二十一章
「ステラ、どうしていってしまうんだね」
彼女の家の前で、村の仲間達が次々と声をかけてきていたが、ステラはどの問いにも答えずにただ黙々と荷物をまとめていた。
「もう帰ってこないのか?」
「ステラ!」
とりわけ若い女性の声がした。
「・・ケリー」
ステラの姉だ。
「アンタ王様に喧嘩売って二度この国に入れないって本当かい!?」
「うん」
「『うん』じゃねーさ!!アンタ何考えてんだい!」
ステラの手が止まった。
昔からケリーは気が強く怒ると誰にも止められないぐらい捲くし立てる。ステラは心の中でうんざりしつつ荷物をまとめる手を止めた。
「どうせアンタ一時の感情だけでそうなったんだろ?謝れば許してくれるかもしれない!ホラ」
「ケリー!平気だってば!いいんだ、もう」
ステラは荷物のヒモをキツクくくり、ソレを抱えて家をでた。
家族が窓から不安そうな顔で眺めてきた。うん、親孝行できなかった馬鹿娘でごめんな
「ケリー・・姉ちゃん、母さん・・今までありがとうな」
それだけ言うと彼女は歩き出した。
今までずっと住んできた村を離れるのはつらいが、後戻りはできないのだから今更後悔などはしない。敵国に言ったら殺されてしまうかもしれない・・それでも、いくしかないと彼女は思った。
たとえ、一時の感情で言ってしまったことだとしても。
(アタシの馬鹿)
歩いていくと、馬に乗った立派な服を着た女性がいた。
「・・誰だお前」
もしかして、王の命令で暗殺・・とかか?身構えていると女性は馬から下りた。
長い綺麗な髪がふわっと揺れた。自分の髪の毛短いから少し・・うっとおしいと思ったので、思い切って相手の髪の毛を切ってやりたくなった。勿論しないけど
「ふん、自分はケリー・ボールドウィン・・『聖女隊』の一員だ」
「ってことは平か」
「平言うな!!」
歩いてくると目の前で止まり、スッと何かを差し出した。
「巻物?」
ソレをおもむろに目の前で広げられると、なにか書かれていた。なになに
「『勅命 敵国に速やかに進入し、弱点を密告せよ』・・卑怯だなおい!!」
「卑怯言うな!これも戦略の一つなのじゃ!」
ステラは目の前の長身の女性を見た。
ケリーっつったよな~?あたしの姉と同じ名前じゃん。しかも同じぐらい気が強いなぁ・・よし、もし自分の周りに女の子を産んだやついたら忠告してやろう!『ケリー』は駄目だと
「なんか失礼なこと考えておらんか」
「別に・・てかアタシ流刑じゃないの?」
「流刑ついでだ、向こうは何を余裕ぶっているのか知らんが、我国から出でいくものをあっさり回収するからな、お前なら口が固いだろうという判断でのことじゃ」
成程、まぁ否定はできないな。
「分かった、受けてやるよ」
「上からじゃなお前」
「あ、でも条件ある」
「なんじゃ!」
ステラは指さした。
「馬おくれよ」
徒歩は無理だろ徒歩は。ずっと悩んでいたところだったんだよなー、村で馬飼ってる人がちょうど商いに出ていたところだったんだよ
ラッキー
「・・やるか!」
「えぇー」
この平はえらそうなわりにはケチだった。