第十五章
攫われて、気を失っていた。気がついたらベットで寝ていた。
「・・え」
隣を見れば鼻の長い犬がいた。
「・・ばふ」
「・・ばふ?」
「あー起きた?」
ウィルシアがお盆を持って現れた。
「ばふ!ばふばふ」
犬がほえながらウィルシアのほうに転げながら移動していった。
「歩けよ!」
「あの」
乱れた髪の毛を直しながらマリは頬を赤らめた。
「櫛・・と鏡くれない?」
「?」
「・・身だしなみ・・整えたいの」
・・。
部屋を出るとメイドが立っていた、メイドは何も言わず歩き出し案内を始めた。ついた先は居間で食事の用意ができていた。
「ほう、彼女があちらの国の貴族の娘か」
「マリアンジェラちゃん、こちらシーア公爵夫人兼母、ララージニアちゃん」
「ちゃん付けするな氷付けにするぞ」
ひゅぉぉ、白い光が舞う。
ガチャッ・・扉が開き、人が入ってきた。ソレを見るや否や奥様は魔法でその人のところに移動をした。
「レイモンドぉー!ウィルの馬鹿が馬鹿なんですけどー!!馬鹿すぎて困るんですけどー!」
「お父様ー!ララーちゃんが何か酷いこといってるんですけどー!」
「二人とも客人の前でよさんか」
・・なんだろう、羨ましくて悔しいんだけど・・。
「ジェンド公爵の娘だな」
レンモンド殿はどうやらまともらしい。良かった、全員が全員ウィルシアみたいな性格だったら、きっと耐えれなかったと思う。
「はい」
「・・うちの息子がソナタをミケーレの代りに攫ったと聞いた。すまないな」
「いえ」
「もし、できてしまったら責任を持って我家に迎えるぞ」
「はい?」
今、なんていいました?
「父上、父上・・俺の部屋で貸してあげただけで、俺は昨日テルカ・マサラのところにいたんですけど」
「む・・そうなのか」
「そうです!!!」
駄目だヤッパリこの国の人駄目だ!
「ワタシは軍のほうに顔を出してくる、五時までには帰ってくる」
(早っ!?)
「あらそう、私は王宮に遊びに行ってくるわね」
(馴れ馴れしいにもほどがあるよね!?)
頭が痛くなってきたので頭を押さえていると、ウィルシアがマリをお姫様抱っこした。
「きゃ?!」
「俺の友達紹介してあげーよーか」
指の先が光輝くと、ソレをクルクルと回し、手のひらを広げた瞬間、目の前の風景が変わった。
・・まだ何も言ってない
「おんやぁ、ウィル君じゃなーいかぁ」
「彼女はテルーカ・エニシン・・魔法技術開発部門専任」
「・・初めまして・・」
彼女は奇天烈な姿をしていた。まともな服と呼べるのは白衣だけで、白衣の中は未発達の身体がはっきりとライン出ているが、裸ではない、不思議な模様のような、薄い服を着ていた。その髪も不思議、物凄くロングで床に普通に届いてしまっているし、少し目を離して再び見ると、髪の色が変わっている。
「・・不思議そォな顔してるなぁ~どうも、テルーカ・エニシンちゅう、精霊属エルフだぁよ」
「精霊!魔法使いと精霊は繋がっているって聞いたことあるけど、本当だったんだ」
「繋がってるっちゅーかぁ・・インスピレーションがあったんねぇ」
「それに俺たち基本フレンドリーだもんねー」
「・・おぉ?」
機械が音を鳴らした、今気がついたがこの部屋・・画面やらキーボードやら不思議なコードやらいっぱいあり、どれがどれやら分からなかった。
「?」
不思議な文字が空中に一気に現れた。
「パンドラの扉の解析不可・・あっちゃー今回もしっぱいかぁ」
「・・パンドラの扉?」
「うん?コレのこと」
ヴゥンっと画面が目の前に現れた。一見すると大きな石膏で作られた美しい模様のついたマンホールに見えるが・・。
「やっぱり、ミタマが無いと駄目かなー」
「ミケーレはぁ~?彼がいないと実験しようが無いじゃないかぁ」
・・今、なんていった?
「え?」
「昔この世界が乱れに乱れた時代に、邪悪なものが世界を破壊しつくそうとしていた・・そんなときに現れたのが、我々の祖先、ウェザーミステルと、そっちの祖先アースグランドが、邪悪なものを倒そうとしたんだって」
「邪悪なもの?」
「そー気になるよねー?ソレをが扉の向こうに封印されているんだってさー」
「・・義兄様と何の関係が」
「でぇー二つの国の王の血をひいてるミケーレ君にちょっと生贄になってもらおうと」
魔法使いが恐れられている理由、それは・・あまりにも子ども過ぎた悪戯心を実行することにある。 マリは二人の頭をおもいっきり殴った。
「ふざけないで!ミケーレを王様にするっていってたじゃない」
「だって、『生贄にするから下さい』なんっていってくれんの?」
「ふ・ざ・け・な・い・でぇええええええええ」
感情を制御することもなく、平手で二人の頭を向後に叩く。
「いたい!いたいよぉ、かなわんわぁーウィル君、彼女のひもをキチンと握っとかなきゃァ」
「彼女じゃないわ!私には・・っ」
シーヴァーが・・
「・・私はこの国の者じゃないもの・・」
「ふーん、じゃぁ竜族?」
「アースグランドの人間よ・・っていうか、竜族ってはじめて聞いたわ」
「えー、なんか言いたくないなぁ」
「何々?何の話?聞きたいな」
ウィルシアも興味津々といった感じで椅子に座った。
「エぇーウィル君も知ってる話だよぉ」
「?」
「題して『竜族と魔法使い』」