第十二章
「インファと将軍は仲良しなの?」
「えぇ、昔に少々戦術を教えました」
「っていうかースパルタ師匠だよねーおかげでわたしゃココまで生きてますよー、なはは」
「あら、私が貴女の師匠ならまだまだ貴女は及第点に到達できていないけれど?」
「え?」
アーロズが汗を流しながら固まった。
「そもそも、貴女がきちんとしていれば『聖女隊』の教官として私がココにくる必要がないでしょうに」
「ぐうの音も出ませんな、なっはっはっは」
逃げるように笑いながらアーロズは歩いていった。そして後からやってきたハレル君がアーロズの後ろをついていくようにはしっていった。
「ケリー様・・将軍家のお姫様、貴女の家系はよく知っていますよ。武術で厳しい家ですよね」
「そうじゃ、自分は他の者とは違うのじゃ!」
「えぇ、その通り、貴女は他の人とは違う・・だからこそ『聖女隊』にはいるのは諦めませんか」
「なんじゃと!!」
ケリーが今にもインファに飛びつきそうな勢いで叫んだ。しかしインファはいたってマイペースに続けた。
「他の方々は軍人ではありません、ほとんどが素人です。ですから軍がもし敗退したときには逃げるでしょう」
「自分は逃げるなどど臆病なことはせぬ!」
「ですから」
インファの目が厳しいものになる。
「ですから貴女は軍に向きません。本当によい兵というものは引き際を弁えているのもですよ」
ケリーは口を閉じた。
「アーロズも・・前回死んでしまったエルシオンも・・愚かです」
「エルシオン様のことを馬鹿にするな!」
マリが止めるまもなくケリーはインファに殴りかかった。・・が
「な」
ケリーの身体が横に流れた。
インファが受け流したのだ、マリは素直に驚いた。・・インファ・・強かったんだ
「えっと・・インファ、強かったのね」
「お嬢様、女性とは秘めたるものを奥に隠し、か弱く見せるのも技の一つですよ」
うん、ためにならないアドバイスありがとう・・。
「あぁ、そうそうお嬢様これ・・プレゼントですよ」
「・・?」
渡されたものは石でできたブレスレットだった。淡い色で優しい輝きを放っていた。
「綺麗」
「ふふ」
いい笑顔でインファは微笑んだ。
「えっと・・」
「しっしょー!はじめるよー」
「ふふ、師匠って呼ばないで下さいよ将軍!貴女を弟子と認めた覚えないですよ」
インファは笑顔で歩いていった。
・・綺麗な石・・
「おのれ」
床に倒れたままだったケリーが起き上がった。
「許さぬ、負けぬ、自分は・・あの女を越えてみせる!!」
ゴォォォッと燃えている。
「頑張ってね」
「言っておくが!」
ビシッと指をされた。
「オヌシも例外ではないぞ!」
「なんで?」
「・・・・・・・・・・・知らぬ!」
顔を真っ赤にすると歩いていってしまった。
・・なんで?
「ケリー待ってー」
「知らぬ知らぬ黙れ!!」
待ってーしか言ってないのにー
皆集められたが、そこにはどうやら将軍達が集まっておりコレから何かが始まるらしい
「なにするつもりなんだろう」
「さぁ」
インファが笑顔でみんなの前でお辞儀した。
「さて今回皆様には何処まで魔法帯が見えるか、チェックしますね。靄が見えなくなったら横に移動してください・・では行きますね」
インファの瞳が真っ赤色から紫色に変わった。そしてその身体から圧倒的な紫色の靄・・というより炎が見えた。
「あれが・・魔法帯?」
「そうじゃ、・・あれほどの魔力を殺気なく放出できるのか・・」
だんだん薄くなっていった。しかし動くものは誰もいない・・。そして最終的には見えなくなった。
・・私だけ。
「見えない」
「もう見えぬのか?自分には先ほどと全く変わったようには見えぬぞ」
「・・一人だけ移動してくる」
とことこと移動していると、影が不思議な形をしていたからなんとなく見上げた。
「え?」
雲が広がる晴天の中に、鳥が見えた。
ただのとりではない、綺麗な虹色の鳥が飛んでいた。
「・・魔法使い」
「え?」
「魔法使いだ!!」
上空に飛ぶ一匹の鳥は一気に下降すると、人の姿にかわった。
「己!魔法使いめ」
将軍クラスが剣を抜く、それをインファが片手で制した。
「身代わりの魔法・・実体はここにはいないわ」
紫のマントを羽織った魔法使いはニヤリと笑った。
「ご名答、今回は喧嘩を売りに来たわけじゃないのですよ、今回は交渉しに来たってわけっすよ」
(若い)
インファは笑顔で魔法で実現化させた剣を、若い魔法使いに突きつけた。
「名は?」
「インファ殿!名を聞くまでもない殺してしまおう!!」
「テセヴル将軍落ち着いてください」
「おー!インファって、噂の混血種か!じゃあ俺らの仲間だね」
「は?」
インファがスッゴイ笑顔で否定した。
「殺して差し上げてもよろしいんですのよ?あまり余計なことを言わないでください。名は?用件は?」
「そんなに怒らなくてもいいのに」
剣を全員で突きつけられ両手を挙げた。
「ウィルシア・シアーズ」
マントが風に流され、フードがずれ顔がはっきりと見えた。中世的な整った顔
(綺麗な藍色の青年・・)
青年と眼が合うと、ジーッとこちたを見つめた後にっこりと微笑んだ。
「?」
「王の伝言をばお伝えに上がった所存でございます」
「それは信用できますか」
「できるできる、俺王様の奥さんの甥っ子だもん」
・・だもん
「信用できない」
ルジオが言うことはごもっともだったが
「ま、聞くだけ聞いてよ」
あまり強く否定しても向こうに戦争の理由として突きつけられるだけなので、聞くだけのことはするという結論に将軍達は至った。
「来なさい、案内します」
厳しい眼差しのまま口元だけ笑顔でインファは歩き出した。
「・・」
去って行ったインファたちの背中を見守りながら、私とケリーはお互い顔を見合わせていた。
そして同時に頷いた。
・・盗み聞きしに行こう!!