第十一章
「マリアンジェラ殿」
「え?」
振り返るとルジオ将軍がいた。
剣を持って素振りをしていたときだったから、持ち手が甘かったのかと思えば、違った。
「私のこと、覚えていますか」
「ルジオ将軍をでしょうか?・・どこかでお会いを・・あ」
「お、お前ぇ!」
ケリーに首を絞められ小声で囁かれた。
「ルジオ様のお知り合いだったのか!?」
「く、くるしい」
ルジオが険しい顔を緩めた。
「思い出されたか」
「はい、私の社交界デビューのときにお世話になりました」
「しゃ、社交界・・だと」
アレは私の初めての社交界パーティのときだった。
確かあの時も親や周りの人は王族の血をひくミケーレにしか興味を持っていなかった。さすがにインファやシーヴァーを連れて行くわけにも行かず、何も教えられなかった私は一人隅っこのほうでドレスについた服の装飾を弄っていた。
そのときに
「・・」
「姫お一人ですか」
「!」
「失礼、よろしければ・・踊っていただけますかな」
「・・は・・い」
その時踊ってくれたのが確かにルジオ将軍だった。思えばあの時エルシオン様も見た気がする。遠目だったからよく覚えていないけれど・・。
「踊っただとー」
ケリーになんだか殺されそうだ。
「えーと、その節はどうもありがとうございました」
「いや・・あのときの貴女は本当にか弱くて儚くて・・麗しい乙女でしたよ」
手をそっと掴まれると、手の甲にキスを落とされた。
赤面するよりも、隣の少女から発せられる殺気に真っ青になる。
「戦場では、我々聖女補佐軍があなた方を全力をもってしてお守りしましょう」
「ありがとうございます、共に戦いましょう」
ルジオは野生的な笑みを浮かべるとマントをひるがえし歩き出していった。さて、こちらのお嬢さんを一体どうしたものか・・。
「ルジオ君が笑ってるとこ初めてみたー」
「・・アーロズ隊長」
「呼び捨てでいいよ、身分的にはそっちのが上だし~?」
「そういうわけには行きませんよ。貴女が隊長で私は平ですし」
「無表情でいわれてもなー」
「すみません」
笑えないんです。将軍は苦笑いを浮かべるとにっこりとかわりに笑った。
「ルジオ君のお姉さんエルシオンって言ってね・・そりゃーもう立派な人だったよ」
「お前がエルシオン様の何が分かるというのじゃ!」
ケリーが剣をアーロズに向けて威嚇した。
「敵味方も区別もつかぬ愚か者のクセに!」
「・・信じてくれとは言わないけれど、あの戦い・・聖女隊が到着する前には既に我軍は私以外すべて滅んでいたよ」
「!!」
圧倒的な戦力の差・・さすがの聖女隊もなす術はなかった。
アーロズの絶対的な破壊力を使う以外は・・
「まるでその言い方、聖女隊がそうさせたかのようではないか!」
「そうなんだよ、わたしゃ軍人として死を覚悟したんだけどね、エルシオンちゃんが無念を晴らしてくれって、身を挺して時間を稼いでくれたってわけ」
「信じる分けなかろう!」
「ケリー!」
剣を振り上げた。
「おや、おいたはいけませんねー」
「な、なんだと!?」
「インファ!?」
素手で剣を受け止めた、しかも剣が折れるだけでその生肌が傷つくことは全くない。
「な、んで?うそじゃ!人間ではないのか!貴様」
「そうよ」
インファはなんでもないように微笑んだ。
「私は魔法使いの血が半分流れた・・混血種」
「!」
「でも安心して、私達はウェザーミステルの奴らが大嫌い・・だからココにいるのよ」
「・・」
ぼう・・インファの腕が淡い炎の色に包まれる。
「私はインファ・・今回『聖女隊』の『魔法』を専門に教えていくわね」
焔が燃え上がった。
「よろしくね」
インファの目もチラチラと真っ赤に光っていた・・。