序章
コレは私が生まれる少し前の出来事、わが国アースグランド王国の王様には二人の高貴なる姉妹を妻にと召し上げられました。それは仲睦ましく、姉であられるマーサ正妃様は三人の姫様を産みました。
妹のネルシオラ様には残念ながら御子が孕む事はなかったのですが、それはコレといった問題ではありませんでした。
子を孕むまでは……
わが国アースグランドは別名『人の国』と呼ばれるほど、人に溢れており活発で温厚な国でしたが、魔法使いの集う『魔の国』と呼ばれる、ウェザーミステル王国とは犬猿の仲で……国の長い歴史の中でも頻繁に戦争をしていました。
それは置いといて、少し戻ってネルシオラ様が身篭った御子は元気な男の子。無事産まれ、私の家でもあるアースグランドの貴族の中で一番権力を持つ、ジェンド大公に養子として差し出されました。
なぜ王族で、しかもやっと男のお子様を誕生したというのに王様がわが父に養子として下げ渡したかというと……
ウェザーミステル国王エリオルという王様が、いつの間にがわが国に不法侵入して、あろうことかネルシオラ様に手を出したらしいのです。それから身篭ったという事は……
あらまー……思いきった王様ですこと
まぁ、そういうことで義兄様は私とは違う扱いを受け、実の親の代わりに私の親の愛情を私よりも受けて育ちました、教育だって私と違いスペシャルなものを用意されて……ええ、私は生まれた頃から孤独だった。
気がついたら私は、『影姫』と呼ばれるようになった。私は別にそれでも良かった。
そう、アナタさえ居てくれるなら。
私は他に何も望まないし、いらなかった……それで、良かったのに……